幸せ呼ぶ猫神の呟き

糖尿病予備軍は「血糖値が低い」と安心するのは間違い

このところ過ごしやすい日が続いて体調がいいという人も多いはず。しかし、糖尿病予備群の人は油断してはいけない。たまたま測った血糖値が春の健康診断よりも良かったとしても、それで安心していると数カ月後に糖尿病を発症しているかもしれない。サラリーマンの病気に詳しい、「弘邦医院」(東京・葛西)の林雅之院長に聞いた。

■秋は低いのが当たり前

「血糖値の季節変動については国内外で複数の研究論文がありますが、いずれも一年中で夏から秋にかけて低く、冬から春にかけては高くなる傾向にあります」

 岐阜県高山市内の総合病院が2012年までの4年間に同院でHbA1cを測定した患者を調べたところ、年によって違いがあるもののHbA1cが最も高かったのは1月と3月で、最低月は8、10、11月だった。HbA1cの平均値が1年間で一番高かった月と低かった月の差は0.35~0.50%。富山、大分、福島などでも同様の報告が行われており、高低差はおおむね0.2%だった。

「こうした傾向の理由のひとつに運動不足が挙げられます。高山市は1、2月の平均気温が氷点下になる場所です。他の報告も同じように気候の厳しいところで行われていることから、夏は体を動かせるのに冬は寒くて運動不足になるのが原因ではないかと考えられているのです」

 冬はクリスマスやお正月などのイベントも多い。その際の過食もその理由のひとつという説もある。

「ならば、その時期に節制すればよいと考える人もいるかもしれません。しかし、HbA1cに対する食事の影響は1カ月前が50%、2カ月前は40%、3カ月前は10%程度に過ぎません。お正月やクリスマスの過食の影響だけが3月のHbA1cの高さの理由にはなりません」

 実はアラスカからフロリダまでを含めた米国の退役軍人を2年間追跡した結果でもHbA1cは冬から春に高く、夏から秋にかけて低いことが分かっている。

「つまり過食や運動不足以外の理由でいまはHbA1cが下がっている可能性があるのです」

■冬にかけて一気に上がる

 問題は、秋のこの時期にHbA1cが要経過観察・生活改善値となる6.0~6.4の人は、冬になると要治療となる6・5を簡単に超えてしまう可能性があること。

「それを知らずに、“オレは過食や運動不足を続けてもいずれ血糖値が元に戻る体質だ”などと思い込んでいる人は、寒くなると合併症予防の目標値の7.0も簡単に超えて、気がついたらインスリン注射のお世話になってしまいかねません」

 糖尿病の境界型の人はいま、どんなことに気をつければよいのか?

「内臓の脂肪の多い人はいまの体重から4~5%減らしましょう。糖尿病の発症率を抑えられるとの報告もあります」

 どうしても体重が減らない人は筋肉をつけることに専念するのも手だ。

「筋肉は糖分の保管場所で血糖値の調整も筋肉で行われます。筋肉量が減ると糖分の居場所がなくなり、血糖値が上昇するのです。加齢とともに太ももやお腹を中心に筋肉は減るので中高年は重点的に鍛えるのがよいでしょう。運動嫌いなら階段を下りる習慣をつけましょう。上りより下りの方が筋肉は鍛えられます」

 そのためにプロテインを朝食前に飲むのもいいかもしれない。

「プロテインは飲んで筋トレをすると筋肉がつきやすくなるだけではありません。牛乳成分からつくられ吸収が早いホエイプロテインを食前に飲むと血糖値を改善するといわれています。血糖値を下げるインスリンの分解を促進するホルモンを抑制する働きがあるからです」

 ただし、プロテインの過剰摂取は健康を損なう恐れがある。食事で取るタンパク質の量との調整をしつつ、腎臓や肝臓の悪い人は医師に相談する必要がある。

「果物は意外に血糖値を上げないといわれます。食物繊維のおかげで血糖値を抑える、腸管での吸収が遅いうえ多くはエネルギーに使われるからです。ただし、食べ過ぎれば血糖値は上がります」

 ちなみに糖尿病患者が1日で取ってよい果物の目安はりんごなら半分、みかんなら2個だ。

「お酒のアルコールは体内でブドウ糖にならないためにそれ自体が血糖値を上げることはありません。しかし、肝臓内のグリコーゲンをブドウ糖に変える働きを促進するため一時的に血糖値を上げます。おつまみの揚げ物は衣に使われている小麦粉が血糖を上げる一因となります。いずれも取り過ぎに注意が必要です」

【あらかると】在宅医療、低栄養に気をつけて

 住み慣れた自宅での療養を支える「在宅医療」が注目を集め、とくに高齢者の場合は栄養管理の重要性が指摘されている。食事の準備が面倒だったり栄養に関する知識がなかったりして、栄養状態が悪化する“低栄養”に陥りやすいためだ。

 在宅医療を主体とする医療法人社団「悠翔会」(東京都港区)理事長で医師の佐々木淳さんは「在宅医療の実態と栄養の重要性」をテーマにこのほど都内で行った講演で、「最期まで自宅で幸せに暮らすには、薬による治療よりも低栄養にならないことのほうが重要。多種類の薬を飲むとかえって健康寿命を損なうこともある」と警鐘を鳴らした。

 さらに「年をとってから血圧を下げるために塩分を控えてもあまり効果は出ない。低塩分食で味気がなくなり逆に食が細くなる恐れがある」と指摘。「高齢者は血糖値や血圧がやや高めでも医師と相談のうえ服用する薬をなるべく減らし、栄養バランスを考えた食事に気をつけることが重要。とくに筋肉が衰えないようにタンパク質を若者以上にとる必要がある」とした。
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