人生の ホールインワン 「産まない」と決めた夫婦にかけられた、無神経で心ない言葉とは?
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「産まない」と決めた夫婦にかけられた、無神経で心ない言葉とは?

「産まない」「子どもはいらない」と意思表明するのって勇気がいる。自分で決めていいことのはずなのに……。夫婦2人で生活することを結婚前から決め、20代、30代を過ごしてきたライターの河辺さや香さん。自身の経験やミレニアル女子へのインタビューを通して、「産まない人生」について考えていきます。telling,の人気シリーズ2回目は、産まない選択をした河辺さんがどんな30代を送ったかをお伝えします。

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 子どもをほしいと思わない自分は少数派だというのはわかっていたけれど、だからと言って誰かに迷惑をかけたり悲しませたりするという認識はなかった。でも、結婚したら出産するのが当たり前、みたいな土地で育ってきたので、産まない選択をアウェイな環境で正当化する勇気はなかった。
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悪気もないけれど、デリカシーもない

 そのプレッシャーは、結婚後まもなくやってきた。自分の実家で親戚の集まりがあると、 「子どもはまだか」と必ず聞かれるようになった。「子どもはまだか」は100%産む前提であり、産めない可能性を1ミリも考えていない発言だ。当然ながら田舎の親戚に悪気なんてない。そして同時にデリカシーもなかった。

 両親には私の意志を伝えていた。母親は理解を示してくれたのだけど、父親は絶望的な顔をして「そうか…」と、寂しそうに言った。その時初めて、ちょっと申し訳ないな、と思った。でもそんな気持ちで産むことを考えるのはおかしいと思い、すぐに自分を取り戻した。
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 叔父は私が将来後悔をしないようにと思ったのか、じわじわと説得にかかってきた。
「おまえ、自分の遺伝子を残したいと思わないのか」
「子どもを産んでこそ、親のありがたみがわかるんだぞ」

 でも、そんな理由で子どもを産みたいと思ったことは、もちろんなかった。

「おかしいよね、私」
と、わざと卑下することで自己防衛をしてきた。心の底ではそんなふうに思っていなかったけど、これが波風立てないように取り繕う精一杯の抵抗だった。ところが、この返事では納得がいかないのである。なぜ欲しくないのかを知りたいのであり、私がおかしいかどうかなんてどうでもいいのだ。どんなに考えてもほしいと思わないから明確な理由を出せないし、仮に

「子どもが嫌い」とか
「お金がかかる」とか、
相手がぐうの音も出ないような嘘を言って逃げたとしても、ますます「あいつはおかしい」とか「人でなしだ」とレッテルを貼られるのは確実だ。そしてそれがとても怖かった。 「子どもがいなくても十分幸せ」と答えても、「そんなのん気なこと言っていられるのは今のうちだ」と将来を悲観された。これもまた悲しかった。
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 祖母は
「子どもを産まないと、死ぬ時一人だよ」と、病床でとんでもない切り札を出してきた。もうここまできたら私も最後のカードで返さねば、と思い、「心配してくれてありがとう。でもね、きっとできにくい身体だから、無理はしないって決めたの」と、妊娠を試みたこともないのに嘘をついた。本当に苦労している方と、恐らく本気で心配してくれた祖母に申し訳ない気持ちでいっぱいだったが、私としてもどうにか放っておいてほしかった。
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プレッシャーは、同世代からもやってきた

 だから、私はこの話題がとても苦手だった。「早く産んだほうがいいよ」と言う人の言葉は
「そうですね(笑)」と右から左に受け流すようにしたけれど、さすがに頻繁に言われると、「やっぱり私はおかしいのだろうか」と思い悩んだりした。そして話が込み入れば込み入るほど、くだんの通り余計な嘘をついて相手を黙らせなければならないから、なるべくこの話題を引き伸ばすのは避けたかった。

友人にはもう少し丁寧に受け答えしたが、 「うっそー、そういう人もいるんだ!信じられない」と言われたことがあったので、この問題では絶対に折り合いはつけられないのだと思い、その後なんとなく距離をおくようになった。プレッシャーは、世代の違う田舎の親戚だけではないことが分かった。割と近い年齢の方たちとの飲みの席で、 「なんで欲しいと思わないの?」と聞かれたので「うーん、なんでだろう。精神年齢が低いのかなあ」と思ってもないことを言って、穏便に話を終わらせようとしたら、 「悪いけど、本当にそうだと思う」と言われて、ムダに傷ついたこともある。こういう時だけは、「早く40代、50代になって、この話題について触れられない域に達したい!」と思った。

 子どもを産まないことで人がここまで心配したり、はたまた干渉されたり批判されたり、夫婦仲を詮索されるとは思っていなかった。平日の昼間にスポーツジムで「あら、いいわねえ、子無しは気軽で」とおばさまに嫌味を浴びせられたこともあったし、ちょっと不調があって婦人科を訪れたときなんぞ何も言ってないうちから「まだ諦めないでください」と断言された。久しぶりに会った先輩には「旦那さんとは上手くいってるの?」と心配され、年賀状には「子どもかわいいよ~!まだ?(笑)」と書かれていたこともある。

「(笑)かあ・・・・・・」と見つめながら、どうしても笑えなかった。そうやって30代は、何かにつけてこの問題と向き合わざるを得なかった。唯一の救いは、母親と姑が何も言わずにいてくれたことと、夫が同じ方を向いていたことだった。 実際40代に差し掛かかり、この話題が少なくなってきてホッとしているのが正直な気持ちだ。だから、前回書いたご婦人のストレートな発言は、最近の私にとってむしろ新鮮すぎて笑いに変えられたほどだった。

次回は、反省点について書こうと思う。
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