躁的防衛? ハイテンションな人に潜む心の危機


◆わざと明るく、元気にふるまってしまう躁(そう)的防衛とは

いつも明るく元気でテンションの高い人はいるものです。忙しくてストレスの多いときでも「120%元気な自分」でいたがる人。落ち込んだりへこんだりすることが嫌いで「いつでも笑顔」を保とうと頑張る人……。
こうしたハイテンションな状態の人は、周りからは「ネアカ」で「エネルギッシュでポジティブな人」に見え、心の健康的に何の問題もない人だと思われがちです。しかしカウンセラーとしての立場からは、彼らの心に「危うさ」が潜んでいるのではないか?と考えずにいられません。

臨床心理学には「躁(そう)的防衛」という言葉があります。躁的防衛とは、わざと明るい自分や元気な自分を演じることによって、沈んだ気持ちに打ち克とうとする無意識的な防衛行動です。元々は精神分析の理論において、母親との関係をベースにした葛藤から生じる体験とされていますが、一般的には、集団生活やストレスフルな状況に適応しようとする際によく見られます。

たとえば、ストレスが増えるとやたらとテンションが高くなり、リフレッシュと称して仲間と騒いだり、飲み会を開いて暴飲暴食に走ったりする人。忙しくしていないと不安になり、やたらと仕事や用事を抱え込む人――。こうした人々は、躁的防衛によってハイテンションな状態をつくりだし、ストレスに対処している可能性があります。
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◆躁的防衛のリスク……頼りすぎるとあらゆる面で支障が生じる

躁的防衛は、ストレスを短期的に乗り越えていくには、有効に働きます。たとえば、新学期や新年度などの一時的なストレスの対処に役立つことも多いでしょう。しかし、いつもその方法を用いていると、精神的に消耗してしまいます。たとえば、スケジュールが空くのが怖くていつも忙しくしてしまったり、嫌なことを考えたくないからとアルコールに頼って気分を盛り上げてしまったり、一人で夜を過ごしたくないと無理やり仲間たちと騒ぐ習慣ができてしまっていたり……。

こうした行動を繰り返していると、精神だけでなく、身体や人生設計、生活管理の面などにも支障が生じてしまいます。では、躁的防衛にはまりすぎてしまう自分をコントロールするためには、何が必要なのでしょうか?

◆なぜ躁的防衛を用いてしまうのか……まずは自分を知ろう

躁的防衛にはまりすぎてしまう自分をコントロールするために必要なこと。その一つが、「自己理解」です。「なぜ自分は無理に忙しくしてしまうのだろう?」「なぜ自分はいつもにぎやかでないといられないのだろう?」このように、自分の認知と行動の傾向を振り返ることです。誰でも新しい環境に適応する際には不安が生じますし、孤独を感じたり、自尊心が傷つけられたりしたときには、憂うつになるでしょう。そうしたとき、一時的に躁的防衛を用いるのは自然なことですし、それによって良い効果が生じることはたくさんあります。

しかし、常にテンションを上げて元気をふりまかずにはいられない場合、なぜそうなってしまうのだろうと、振り返ってみることが必要です。ある人は、特定の刺激に反応して、躁的防衛を用いてしまうのかもしれません。またある人は、ストレスに耐える力、対処する力が弱いため、躁的防衛に流れてしまうのかもしれません。
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◆自己理解を活かして、対処方法のレパートリーを広げる

自己理解によってこうした自分の認知と行動の傾向に気づいたら、「どうしたら改善できるか」を考えてみましょう。そして、できるところから改善を試みてみましょう。特定の刺激に反応して躁的防衛に走っている場合、なるべく強い刺激に触れないようにしたり、あるいは刺激と向き合い、折り合いをつけていくことが必要になるでしょう。たとえば、合コンに行くたびにテンションを上げすぎてしまって、結果として異性とまっすぐに語り合えないような場合、まずは「友達づくり」から始めて異性に慣れていくのも一案です。

耐える力が弱いと感じた場合、ストレス発生後すぐに躁的防衛に逃げず、しばらくの間そのストレスと付き合ってみるといいでしょう。つまり、すぐに気晴らしなどで気分を上げようとせず、「ストレスと同居できる力」をつくっていくことです。「対処する力」が弱いと感じた場合、上記のような力を伸ばすとともに、有効だと思われる対処法をあれこれ試してみるといいでしょう。たとえば、不快な気持ちをノートに書き出してみる、交渉術を試みるなどして、対処法のレパートリーを広げてみるといいでしょう。

長い人生の中では、さまざまなストレスに何度も遭遇します。そうしたときには、「躁的防衛」という一つの方略のみに頼るのではなく、その時々の自分に必要な方法を多角的に検討して、適切な対応ができるようにしていきましょう。

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