お酒の強さで分かる!? 体質と健康リスク

◆飲酒と骨折リスクの相関関係……飲めない人は骨折しやすい?

これまで、お酒を飲む女性は男性よりもお酒に対する健康管理に注意が必要だと言われていましたが、飲めない女性についてはさほど大きなリスクがあるとは言われていませんでした。そのため、飲めない女性は友達と居酒屋へ行って少し居心地が悪い思いをしながらも、お酒と健康についてはあまり気にしてこなかったように思います。

ところが、先日「お酒が飲めない人は骨粗しょう症と骨折のリスクが高くなるので注意をしたほうがよい(※1)」という論文がニュースに取り上げられ、話題になりました。実は、この話は以前から知られていて、日本人女性を対象とした研究でも同様のデータは出ていましたが、なぜか、今まであまり大きな話題として取り上げられることはありませんでした。

お酒が飲めない女性にとっては、お酒が飲めないというだけでもコミュニケーションがとりづらいのに、さらに骨粗しょう症のリスクまで高いなんて……と、ガッカリした人も多かったのではないかと思います。 骨粗しょう症は年齢を重ねた女性にとっては大問題。骨がもろくなり、大腿骨骨折などをすれば寝たきりになってしまうリスクも上がります。これはどう対策をすればよいのでしょうか?
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◆アルデヒド脱水素酵素2(ALDH2)が教える骨折リスク

前述の論文に書かれていることを箇条書きにしてみます。

1.アルデヒド脱水素酵素2(ALDH2)と呼ばれる酵素があること
2.この酵素はアルコールを分解する際に出る有害物質であるアセトアルデヒドを酢酸に分解するはたらきを持つ
3.この酵素の働きが弱かったり、酵素を作り出すことのできない人はアルコールに弱い。
4.この酵素が弱かったり、作り出せない人はモンゴロイド(日本人を含む)の約半数。
5.こういった人たちは骨粗しょう症や骨折のリスクが2倍高い。致命的に飲めない人だけでなく、お酒を飲むと顔が赤くなると感じている人も要注意。

この論文だけを読むと、お酒が飲めない人の中には「骨粗しょう症はイヤだから、ムリしてでもお酒を飲んだ方がよいということ?」と思った人もいるかもしれません。しかし、「女性はたくさんお酒を飲まないほうがよい」というのが定説になっています。なぜでしょうか?

◆飲酒と女性の健康……お酒が飲める人は乳がんリスクが高い?

一般的に「女性はたくさんお酒を飲まないほうがよい」とされるのは、女性は体内の水分量が男性に比べて少ないため、同じ体重の男女が同じ量のお酒を飲んでも女性のほうが血中アルコール濃度が高くなるためとされています。「健康日本21」でも生活習慣病のリスクが高まる飲酒量は男性で40g以上、女性で20g以上とされています。また、世界的な統計学データで「お酒をたくさん飲む女性は乳がんになりやすい」との結果もあり、女性の飲酒はよくないと考えられているのです。

お酒と乳がんに関連性があるとされている世界的な統計データには、白人や黒人などいろいろな人種のデータが混在しています。モンゴロイド以外の人種が混ざっているため、日本人に特化したデータではありません。そこで、10年前、日本人の女性における乳がんリスクが上がるかどうかを調べましたが、データ不十分として結論が出ませんでした(※2)。

とは言うものの、日本乳癌学会 患者さんのための乳癌健診ガイドライン Q&Aのなかに「飲む量が増えるほど乳がん発症リスクが高まるのは確実です。」との記載があり、注意した方がよいのは間違いないようです。
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◆大切なのは個々人の体質に合わせた健康管理

先の論文でアセトアルデヒドを分解する酵素を持つ人と持たない人の判定は、ALDH2の遺伝子多型(SNP)を使って行っています。これは「太っているのは遺伝だった!? 肥満遺伝子ダイエット」記事でもご紹介した遺伝子による診断です。 遺伝子は父親から1本、母親から1本を受け継いだ自分自身を作るための「設計図」です。一生変わることがありません。遺伝子は映画のフィルムのようにたくさんのコマ(塩基)がつながったものと思っていただければよいのですが、SNPはそのうちの1コマを判定します。

もちろん、その1カ所のSNPだけで体質のすべてが決まるわけではありません。例えば、肥満に関係するSNPも50カ所以上が知られていて、これらが複合してその人の「特徴」を作り出します。このように、1カ所のSNPだけで体質のすべてが分かるわけではありません。しかし、遺伝子には自分の特徴がすべて書き込まれていますから、罹患しやすい病気のヒントも書かれています。さらには、親兄弟・親戚等は遺伝子が似ているので、罹患しやすい病気も似ています。

遺伝子は生まれ持ったもので変えることはできませんが、病気になりやすい遺伝子を持っていると分かったら、その病気に対する予防を人一倍しっかり行うことで罹患率を下げることができます。 実際に「自分の父親が胃がんだったから」と胃がんの健診に熱心に足を運ぶ人や、「母親が糖尿病だったから」と糖尿病になる前から糖尿病についてしっかり学んでいる人などがいますが、理にかなった行為です。

お酒が飲める、飲めないも同様。SNPなど分からなくても、顔が赤くなるかならないかで大まかな体質が分かります。お酒が飲めない人は乳がんよりも骨折のリスクが高いわけですから乳がんと骨折予防であれば、骨折予防により力を入れるほうが体質に合った健康管理と言えますし、お酒が飲める人は、骨折予防よりも乳がん予防に力を入れたほうが体質に合っている可能性が高いということになります(とはいえもちろん、お酒が飲めない人は乳がんにはならない、お酒が飲めない人は骨折しないという意味ではありません。一般的な予防は心がけるようにして下さい)。

健康になるためにはどんなことにも注意を払ったほうがよいのかもしれません。しかし、人間は万能ではありません。何よりも、私たちは忙しいのです。健康管理もポイントを絞って自分に合った方法を取り入れることで効率化を図るのがよいと思います。ぜひ、それぞれの「体質」を知って上手に健康リスクを管理しましょう。

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