一晩寝かせたカレーも危険? ウェルシュ菌食中毒とは

■ウェルシュ菌とは……集団感染も起こす食中毒の原因菌

人に下痢症状を引き起こす、下痢原性毒素を産生する「ウェルシュ菌」。ウェルシュ菌が食べ物と一緒に口から体内に入ると、その毒素により腹痛や下痢などの食中毒症状が起こります。

1995年~2004年の厚生労働省の食中毒統計によると、1回の食中毒事件で発生する患者数が一番多いのがこのウェルシュ菌で、83.7人と言われています。サルモネラで19.1人、病原性大腸菌で25.2人ですから、いかに一度に多数の患者を発生させてしまう菌かがわかると思います。

ウェルシュ菌は空気があるところでは増殖しない性質を持つ、「嫌気性」と呼ばれる菌です。ちょっとイメージしにくいかもしれませんが、空気が「ない」場所でのみ増殖します。これは、空気のあるところでのみ増える一般的な食中毒の菌とは真逆の性質です。そして極端に乾燥した場所や高温の状態などの環境になると、「芽胞」になって身を守ります。例えるならば、ダンゴ虫が敵から身を守ろうと硬く丸まるようなイメージです。

この状態になると、熱に対しても強くなるのが特徴です。この芽胞はとても強く、なんと100度で1時間以上加熱しても死滅しません。むしろ、加熱から身を守ろうとして芽胞になり、さらに菌が増えてしまうという性質があります。加熱後に食品が室温に放置されて50度以下になると、身を守っていたウェルシュ菌がまた増え始めてしまうのです。

家庭で気をつけるべき食品の代表的なものが、大人も子どもも大好きなカレー。カレーを作るときは大体一食分ではなく、多めに作り置きして、加熱してからまた食べることが多いでしょう。毎日加熱して菌を殺しているから大丈夫だと思っていても、室温で放置する時間がある場合、食品中にウェルシュ菌があればどんどん増えていくことになります。

■下痢・腹痛……ウェルシュ菌食中毒の主な症状

ウェルシュ菌食中毒は一般的には軽症で済むことが多いのですが、主に以下のような症状が出ます。

・水のような下痢(水様性下痢)
・お腹が張る腹部膨満感
・腹痛

発熱や嘔吐のような辛い症状は少なく、血便なども見られません。下痢の症状も1~2日程度で回復してきます。しかし、高齢者や乳幼児の場合は注意が必要で、下痢のために脱水を起こす危険もあります。そのため日常に潜むウェルシュ菌についての対策が大切になるのです。

菌が口から入って発症するまでの潜伏期間は6~18時間。この菌は、45℃で最も増殖し、10分ごとにどんどん分裂していきます。食品1g中に菌が10万個以上になったときに症状が出てきます。計算上で言えば、最初は1個の菌しかいなくても、170分(約3時間)で131072個になり、食中毒の症状が出てくる数にまで増殖してしまうわけです。

■ウェルシュ菌食中毒の検査法・診断法
まずは、症状が出てきたときに、どんなものを食べたのかを医療者に伝えることが大切です。同じ給食や仕出し屋の弁当を食べた多くの人が症状を起こした場合、このウェルシュ菌による食中毒が疑われます。

実はこのウェルシュ菌による食中毒は、家庭以上に、集団給食施設、飲食店、仕出し屋などの、大量に調理する所で発生しやすいのです。そのため、別名「給食病」とも呼ばれています。季節性がなく1年中起こりますが、気温の高い夏場は食品も温かくなるので、当然ながらさらに注意が必要ともいえます。

ウェルシュ菌を培養して、同定する検査をすると確実です。菌が検出されると、菌の遺伝子を検査することで、同じ菌によって拡大したかどうかがわかります。さらに、下痢原性毒素を検査することもあります。

■ウェルシュ菌による食中毒の治療法
基本的には重症例が少ないことから、整腸薬を中心とした対症療法を行います。抗菌薬を使用しなくても数日で良くなっていきます。ただし、下痢が激しい場合、乳幼児、高齢者は脱水になる可能性があるので、経口補水液による経口輸液療法や点滴などの治療を要することがあります。

■家庭で行うべきウェルシュ菌の繁殖を防ぐ方法
ウェルシュ菌食中毒を防ぐには、とにかく食品内で菌が増殖しないように抑えることが大事です。

・加熱した食品は、3時間以内に20℃以下に冷やす
・小分けして、できるだけ空気に触れるようにする
・前日調理を避ける
・食べる前によくかき混ぜて、沸騰させるぐらい再加熱する(空気がない状況では加熱で芽胞になってしまうため、加熱の力を過信しない)などが有効です。

1日寝かすとおいしいと言われるカレーですが、寝かし方を間違えると、ウェルシュ菌の温床になり、どんどん増えてしまうリスクがあります。菌の特徴を知って、身近な食中毒を予防しましょう。

関連記事
最新記事