幸せ呼ぶ猫神の呟き 【労働問題の弁護士が教える!】女性や若者に多い「うつ病」。病気を理由にクビになることはある?

【労働問題の弁護士が教える!】女性や若者に多い「うつ病」。病気を理由にクビになることはある?

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★うつ病で休職。復帰の矢先に退職勧奨を受けたら…?

【20代の女性からご相談】
同僚が2カ月前からうつ病にかかり、休職しています。来月から復帰予定ですが、上司が「退職勧奨する」と言っていると噂で聞きました。要するに退職するように同僚に言うということだと思うのですが、せっかく病気と闘って仕事に復帰しようとしている同僚にそんなことをしていいのでしょうか? 同僚が退職を断った場合、クビになったりしてしまうんですか?

■退職勧奨って何?

退職勧奨とは、使用者から労働者に対して、雇用契約終了の申込みをしたり、労働者からの退職の申込みを求めたりする行為のことを言います。使用者が、労働者に対して、退職勧奨すること自体は違法ではありません。使用者が、労働者に対して、退職勧奨をしたとしても、労働者はそれに応じる義務はなく、働き続けることが可能であることからです。

もっとも、退職勧奨は、あくまで労働者の自発的な退職の意思を形成するために働きかけるための説得活動であり、その説得のための手段、方法が相当と認められる範囲を超える場合には、労働者の退職の自由を奪うものとなり、違法となります。例えば、労働者に対して不当な心理的圧力を加えたり、名誉を不当に害するような言動をしたりすることにより、自由な退職の意思形成を妨げるような場合には、退職勧奨は、相当と認められる限度を超えて違法なものとなります。

■退職勧奨を断ることはできる?

退職勧奨は、使用者から労働者に対する雇用契約終了(又は退職の申し出をすること)の「お願い」ですから、労働者は、これを断ることが可能です。なお、使用者が労働者を解雇するためには、解雇するだけの客観的に合理的な理由があり、解雇することが社会通念上相当と認められる必要がありますが(労働契約法16条)、労働者が自由に断ることが認められている退職勧奨を断ったことを理由として解雇することは、客観的に合理性があるとはいえず、社会通念上相当ともいえませんので、そのような解雇は無効となります。

■病気を理由に解雇することはできるの?

まず、労働者が業務上の理由により負傷した場合、又は、病気となった場合、療養のための休業期間と、その後の30日間は、解雇することは認められません(労働基準法19条1項)。労働者が(業務上の理由によるかどうかにかかわらず)負傷した場合、又は、病気となった場合については、使用者には労働者の健康を配慮する義務があるので(労働契約法5条)、会社に傷病休職制度があれば、まずは休職とする(解雇を猶予して労働者の回復を待つ)、休職後復帰する際に、労働者の業務内容が特定されていないとき、復帰前の業務に従事することができる状態ではないが、より負担の軽い業務に従事することができ、労働者もより負担の軽い業務での復職を希望する場合には、使用者は、現実に配置が可能な業務があるかないかを検討するべき義務があり、このような義務を怠り退職扱いや解雇とした場合には、解雇等は無効となります(大阪地裁平成11年10月4日労働判例771号25頁参照。)。

なお、腰に持病を抱えた労働者が復職後に解雇したことを有効とした裁判例もありますが、当該裁判例は、使用者が労働者の腰の持病に配慮し、医師の意見を聴きながら当該労働者の業務内容を腰に負担の少ない業務に変更した等、労働者の病状に一定の配慮をしていたこと、労働者が欠勤、有給休暇等を消化したにもかかわらず、労働者の病状は良くならず、かえって抑うつ状態という新たな症状を発症したことにより、これまで以上に業務をすることが困難となったことなどという事情があったことによります。(東京地裁平成19年6月8日労働経済判例速報1980号20頁参照)。

病気を理由に労働者を解雇する際には、使用者は、労働者が復職できるように配慮する義務があり、この義務を怠り解雇することは、不当解雇となる可能性が高くなります。復職予定の同僚の方は、退職勧奨を断る自由がありますし、復帰直後の解雇は無効と判断される可能性が高いです。執拗な退職勧奨は、不法行為にあたり、労働者が使用者に対し損害賠償をできる可能性もありますし、万が一、復帰直後に解雇されるようなことがあれば、不当解雇である可能性が高いので、ぜひ、労働問題に詳しい弁護士にご相談されることをお勧めします。

◇アディーレ法律事務所
岩沙 好幸(いわさ よしゆき)弁護士
慶應義塾大学経済学部卒業、首都大学東京法科大学院修了。
弁護士法人アディーレ法律事務所。
パワハラ・不当解雇・残業代未払いなどのいわゆる「労働問題」を主に扱う。
動物好きでフクロウを飼育中。
近著に『ブラック企業に倍返しだ! 弁護士が教える正しい闘い方』(ファミマドットコム)。

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