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【マンション業界の秘密】「修繕積立金」のマジック 新築時は低く設定し徐々に値上げ

分譲マンションを購入すると、誰もが払わなければならないのが管理費と修繕積立金。管理費は日常の管理業務に対するコストだが、修繕積立金は将来発生する共用部分の修繕工事のための積み立てだ。

 多くの分譲マンションは、十数年に一度の割合で大規模修繕工事を行っている。だいたい1戸当たり100万円くらいの負担になるケースが多い。修繕積立金とは、主にその費用を毎月積み立てていると考えればよい。

 しかし、この修繕積立金のあり方には多くの問題がある。

 まず、そもそも大規模修繕工事が十数年に一度という頻度で必要か、という基本的な問題。多くのマンションでは、大規模修繕工事を管理会社が請け負って下請けに丸投げしている。利益率は推定で2割から4割。分譲マンションの中には40年以上も大規模修繕工事を行っていないのに、さしたる支障をきたしていないケースも多い。

 つまり、多くのマンションは差し迫った必要のない大規模修繕工事を行っている可能性が高い。以前にも指摘した通り、分譲マンションの長期修繕計画は、管理会社の長期収益計画と化している。

 さらに、その費用である修繕積立金は入居後に値上げされるケースが多い。新築時は7000円だったのが15年後には2万円になっている、といったパターンだ。特に50戸未満の小さなマンションの場合は要注意。

 これは、新築物件を売りやすくするための偽装のようなものだ。住宅ローンを使って購入しようとする消費者は、販売価格よりも月々の負担額、ローン返済と管理費等の合計額を重視する傾向にある。

 そのため、販売側は管理費や修繕積立金をできるだけ安く見せたいと考える。ところが、日常のコストである管理費には限界がある。そこで、修繕積立金を本来必要である額よりも低く設定する。不足分は将来の値上げで補うという発想だ。

入居後数年ごとに3割から5割程度値上げしていき、最終的には当初の3倍程度の負担になるような計画が多い。購入者は、そのことを説明されても「まあ、何年も先のことだから」「その頃には給料も増えているだろう」と、安易に受けいれてしまう。そして、実際に値上げの時がやってくるとがくぜんとする。

 管理費や修繕積立金の高い中古マンションは敬遠されるから、資産価値にも影響する。

 新築時の修繕積立金を低く設定するのは、明らかに販売側の都合。購入者にとっては多少買いやすくなるメリットはあっても、将来への負債を増やすというデメリットと相殺される。

 これは、業界にはびこる消費者軽視の悪しき商習慣の一例だ。

 だが、購入者にも対抗手段はある。そもそも管理費や修繕積立金の負担額は、各マンションの管理組合が決めること。不必要な大規模修繕工事を行わずに、管理費を据え置くように組合の総会で決議すればよいのである。

 ■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。1962年、京都府出身。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案の現場に20年以上携わる。不動産会社の注意情報や物件の価格評価の分析に定評がある(www.sakakiatsushi.com)。著書に「年収200万円からのマイホーム戦略」(WAVE出版)など。

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