幸せ呼ぶ猫神の呟き PCに溜めた恥ずかしいデータ…自分の死後はどうなる?

PCに溜めた恥ずかしいデータ…自分の死後はどうなる?

今月、世界各国で企業などがランサムウェアと呼ばれるウイルスの被害を受ける事態が相次ぎました。このウイルスは、コンピューターのデータをロックし、解除のために金銭の支払いを要求するタイプ。コンピューター内の大切なデータを人質にするのです。

ところで、誰もがコンピューターに大切な個人情報やデータを保存していると思いますが、これを他人に見られたくないという方はいませんか? 特に性的な趣味に関わるデータなどは家族には見られたくないものです。「俺が死んだら家族に見られる前にパソコンを壊してくれ!」なんてことを友人に言った経験がある方も少なくないのではないでしょうか?これを実行しても問題ないのか、あすみ法律事務所の高野倉勇樹弁護士にお聞きしました。

■「PCを壊して」は委任契約の一種
「もし自分が不慮の事故などで先に死んだら、家族に見つかる前にコンピューターを壊すなどしてデータを消してくれ」と友達と約束していた場合、これを実行しても法的には問題ありませんか?

「問題ありません。

『自分が死んだら、○○して欲しい』という依頼は、委任契約の一種と考えられます。民法上、委任者が死亡した場合、委任契約は終了するとされています(民法653条)。ですが、「委任者が死亡しても委任契約は終了させない」という当事者の意思(合意)があれば、その合意が民法の内容よりも優先します。

なので、この例の友人は、亡くなった方との間の委任契約に基づいて、コンピューターのデータ削除をすることができます」(高野倉弁護士) なるほど、このような約束も、法的には契約として認められるのですね。しかし、亡くなった方の所有物であるデータを勝手に処分することで、何かの罪に問われたり遺族から訴えられたりする可能性はないのでしょうか?

「契約上の権限に基づいてデータを消去するので、民事上も刑事上も違法ではありません。ただし、遺族との間でトラブルになる可能性はあります。データの削除を依頼したかどうか(委任したかどうか)がはっきりしない場合などです」(高野倉弁護士)

■トラブル回避には生前の準備が必要
遺族から責められるなどのトラブルを防ぐために、生前にしておくべきことがあればお教えください。

「トラブル回避のために有効な方法は、以下の3つです。

(1)契約書・委任状の作成
まず、契約書及び委任状の作成は必須です。委任されたこと、データを削除する権限があることを明確にするためです。これがないと、権限がある・ないでトラブルになります。

(2)遺族との事前の協議
契約書及び委任状を作成したら、そのことを遺族に話しておくと、トラブルをよりよく回避できます。「自分が死んだら、Bさんがコンピューターの処分をしてくれるから」と話しておけば、データの削除もスムーズになります。

(3)データの一定期間の保管
また、一定期間は、データを保管しておくべきです。そのことを、契約書にも記載しておくのがよいと思います。相続でもめたときに、「あのとき削除したデータに何かあったかも知れない」という話になると、紛争に巻き込まれる可能性があるからです。

(2)(3)まで行うことは、事実上難しい場合も多いと思います。特に(2)については、家族に『実は、卑猥な画像をため込んでいて……』という話はしづらいと考えられます。とはいえ、ぼやかして『色々と整理してもらう』と曖昧な話をすると、(3)で懸念したような事態になるかも知れません。」(高野倉弁護士)

自分のコンピューターを友に託す、それ自体には法的な問題はありません。しかし、後のトラブルを避けるためには相応の準備が必要なのです。コンピューターにデータを保存する時は常にこのことを頭の片隅に置いて置いたほうがいいかもしれません。

*取材協力弁護士:高野倉勇樹(あすみ法律事務所。民事、刑事幅広く取り扱っているが、中でも高齢者・障害者関連、企業法務を得意分野とする)

*取材・文:フリーライター 岡本まーこ(大学卒業後、様々なアルバイトを経てフリーライターに。裁判傍聴にハマり裁判所に通っていた経験がある。「法廷ライターまーこと裁判所へ行こう!」(エンターブレイン)、「法廷ライターまーこは見た!漫画裁判傍聴記」(かもがわ出版)。)

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