日本人が「アルコール依存症」になりやすいのには理由があった

日本人はアルコールに寛容だとよく言われる。確かにアルコールによる失態は筆者の経験則でも、ある程度許される傾向にあると思う。しかし、それが、アルコール中毒を増やす要因にもなっている。まずは、アルコール中毒に過去なっていたAさんの経験談から話を始めようと思う。

「常にアルコールを飲んでいないとイライラした」

「僕は大学生時代にアルコール依存に陥って、大学生活を棒に振りました。大学生になると、一気に自由な時間が増えるじゃないですか。何の縛りもなくて一日、何をしてもいい。授業をサボっても何も言われないので、ずっと家で寝ていてもいいし。そんな環境のなかで、朝からお酒を飲むようになったのがすべての始まりでした。

そうするとやっぱり昼にも飲みたくなってきて。近所にある昼から開いている居酒屋に入り浸るようになりました。もう手が震えてくるんですよ。アルコールが抜けると。イライラもしてきて。それを治すにはアルコールをからだに入れるのが一番なんです。入れた瞬間から絶好調になる。そのまま夜に突入して、その頃にはもう記憶が曖昧になっています」

「クラブに行ってめちゃくちゃ暴れて、気づいたらどこだかわからないところで目を覚まして、怪我をしているとかしょっちゅうでした。いいことは何もありませんでしたね。お酒もルーティンで飲んでいるので、もはや味わうというより、機械的に飲んでいるといったほうが正しいくらいでしたから。そうすると大学に行っている目的も失って。留年したりして、なんとか5年かかって卒業しました。

まっとうな社会人にはなれないと思って、今はフリーのカメラマンをしていますが、ある程度治った今でも、会社員には到底ムリな体です」 Aさんは病院に行って、薬でなんとかアルコール中毒を治した。それでもまだ完治したとは言えない状態だという。でも、働いているのだからまだマシだ。Aさんのようなアルコール中毒が生まれる原因には、日本の社会システムもひとつの要因と述べるのは、前回にも出演いただいた、精神科医の和田秀樹さんだ。

「前回も述べましたけど、日本の場合は、依存症が病気と見られていない。だから、治療施設もないし啓蒙が進んでないという大きな問題と、もう1つは依存症が病気と思われてないからなのかもしれないけど、私から言わせてもらうと、アルコールなどは“依存症ビジネス”です。 景気が悪くても、どんなに金がなくても、それに依存している人は金を使う。生活保護でもらった金の9割くらいをパチンコに使ってしまう人がいるのと同じで、どんなに金がなくも依存症の人はそれにお金を使ってくれるから、不景気なときでも依存症ビジネスは儲かる。もちろんメーカー側に悪気はないんだけど、広告効果は高いんです。WHOは、お酒を飲んでいる広告は規制するようにと言ってるんです」

もちろん、日本のアルコール業界も依存症に対して何もしていないわけではない。

日本酒造組合中央会、ビール酒造組合など、酒類業中央団体連絡協議会9団体は、「不適切な飲酒を防止し、適正な飲酒環境を醸成するなどの社会的責任を果たしていく」として、自主基準を設けている。広告・宣伝に関しても「25 歳未満の者を広告のモデルに使用しない」「スポーツ時や入浴時の飲酒を推奨誘発する表現はしない」「喉元を通る『ゴクゴク』等の効果音は使用しない」「お酒を飲むシーンについて喉元アップの描写はしない」といった規制を細かく定めて対応している。こうした基準は絶えず見直しをしていくとしている。

アルコール依存症を増やさないため、自主規制以外に今後、何をしていくべきだろうか。

「結局、日本では依存症が病気だと思われてないし、よっぽど気をつけてないと怖いと思いますよ。だから僕、ほんとは、子供の保健体育の時間に、ちゃんと教えるべきだと思ってるんです。どこの国でも依存症が国を滅ぼすと思うから。アヘンをイギリス人が売ったときに、圧倒的にイギリスの方が強いのに、中国は戦争に挑んでまでやめさせようとした。やっぱり依存症は国を滅ぼしかねない。

例えば、飲酒運転だって、みんな極悪非道のように言うけど、捕まるのが分かっていて飲酒運転するということは、もう実は依存症になっているんです。結局アルコール依存の人たちはどうしてるかというと、昼間に酒を買いに行くのに、お酒が入ったまま運転しているけど、夜しか検問やらないから、ということが起こっている。運が悪いと昼間に聞かれる。それで発覚するという状況が起こっている。

まず依存症の治療をしないことには、いくら罪を重くしたところで、飲酒運転は減らないんですよ。一定までは減りますよ。つまり依存症になってない人は酒をやめられるから。あるいは金に余裕がある人は、代行を頼んだりするから」
.
自分がアルコール中毒かを見極めるために絶好な小説

2004年に惜しまれつつ亡くなった作家の中島らもの小説に『今夜すべてのバーで』という名作がある。

「なぜそんなに飲むのだ」
「忘れるためさ」
「なにを忘れたいのだ」
「・・・。忘れたよ、そんなことは」
 (古代エジプトの小話)

という、粋なアフォリズムで始まるこの物語は、ほとんど実話の「アル中」小説だ。中島らももアルコール依存症で、入院した経緯から退院するまでのすべてと心の葛藤が描かれている。これを読めば、自分がどのくらいの依存度か、だいたい見極められる。なので、もしかして、自分はアルコール依存症なのではないかと疑っている人はぜひ読んでみてもらいたい。

関連記事
最新記事