1

心臓病治療にPCマウス 遠隔操作、損傷リスク減

パソコンを操作するマウスを使った心臓病治療が、加古川中央市民病院(兵庫県加古川市加古川町本町)で始まっている。磁力を利用し、カテーテル(医療用の細い管)を1ミリ単位で操作できる最新機器を昨年7月に導入。医師が患者のそばで管を押し込む必要がないため、カテーテルはうどんのようにふにゃふにゃ。血管を傷つける危険が低下し、対処の難しかった患者の治療も期待されるという。(山路 進)

 カテーテル治療装置「マグネティック・ナビゲーション・システム(MNS)」。左右一対の装置で、それぞれに直径約1メートルの永久磁石を内蔵する。手術室のベッドを挟むように置き、磁石を傾けたり、回したりして、異なる強さの磁場を発生させ、カテーテルを導く。

 米国の医療ベンチャー「ステレオタキシス」が開発。日本では2013年、不整脈の治療法、心筋の一部を高周波の電気で焼く「心筋焼灼(しょうしゃく)術」で承認された。遠隔操作でき、米国にいる医師がイタリアの病院にいる患者を治療した例もある。

 同中央市民病院は昨夏、加古川市の東・西市民病院を統合して開院。それと同時に国内2基目を導入し、13ある手術室の一つを専用室にした。

 医師は、手術室で患者の太ももの付け根などの血管にカテーテルを差し入れると隣室に移動。モニターの映像を見ながら、マウスを握る。角度を調整し、1ミリ単位で前進後退させながら治療を施す。

 装置で使うカテーテルは柔らかく、先端に小型磁石があり、MNSが発する磁場で導き、患部へと血管内を移動させる。患者の横でカテーテル末端のハンドルを操り、手動で押し進める従来法に比べ、先端にかかる圧力は3割程度に軽減。急カーブする血管内を進むことも可能にした。

 「心臓や血管の壁を傷つけたり、それによる心停止を引き起こしたりするリスクを大きく下げられる」と加古川中央市民病院循環器内科部長の岡嶋克則さん(46)。「細やかに動かせるので、心臓や血管の奇形などで対処に悩んできた患者も治療できる」と強調する。

 医師への負担も軽減できる。治療中にカテーテルなどの位置を確かめるためのエックス線撮影の回数が減り、医師の放射線被ばく量も少なくできる。

 従来法では、被ばくを防ぐ鉛の板が入った重さ3キロほどの防護服を着て、数時間立ち通し。岡嶋さんは「多くの循環器内科医が抱える腰痛もなくせるかもしれない。1日に複数回の治療もでき、よりたくさんの患者を救いたい」と話している。

 【心臓のカテーテル治療】心筋焼灼(しょうしゃく)術や、小さく折りたたんだ風船を入れて狭まった血管を膨らませる方法などがある。従来法は加古川中央市民病院のほか兵庫県内の複数医療機関で行われる。MNSの対象は、心臓の上半分にある心房がけいれんする「心房細動」などで心筋焼灼術を行う患者。昨年7月~今年3月、同病院でのMNSを使った心筋焼灼術は81例、従来法は86例。いずれも大きなトラブルはないという。

関連記事
最新記事