我が子が「テストでカンニング」。怒るな、原因は親かもしれない

まぐまぐの新サービス「mine」で無料公開中の、花まる学習会代表・高濱正伸さんの記事にて、花まるグループの進学塾スクールFCの松島伸浩さんの著書『中学受験 親のかかわり方大全』に載せきれなかった未掲載原稿が公開されています。今回はその中から「子どもが宿題の答えを写している」という、どこの家庭にも起こり得る問題に対し、プロ目線の対処法をご紹介します。

「中学受験のイロハ」 塾の先生から「宿題の答えを写しています」と言われたら

スクールFCの松島伸浩です。先月、拙著「中学受験 親のかかわり方大全」を実務教育出版から上梓いたしました。今回はその本の未掲載原稿です。

新学期に起こる問題とは?

4月下旬、塾の先生から電話。

先生:「〇〇さん、家での宿題の様子はいかがでしょうか」

母:「いつも終わるのが夜遅くにはなっていますが、なんとかやっているようです」

先生:「そうですか。ちょっと気になったのでお電話をしたのですが、どうも〇〇さん、宿題の答えを写している可能性があるんです」

母:「ええ-!」

親としては青天の霹靂(へきれき)。「まさかうちの子に限ってそんなことはしないだろう」と信じたいのが親心です。

しかし現実としては宿題の答えのまる写しやテストのカンニングなど、中学受験の世界では起こりがちなことです。

「勉強がわからない、宿題が終わらない、面白くない、どうせやってもできない」など、塾のレベルやスピードについていけないことが理由であることも少なくないのですが、親からのプレッシャーが原因になっていることもあります。「宿題が終わらないとご飯を食べさせないからね」「今度のテストで偏差値〇〇超えないと塾やめさせるわよ」。

親は本気ではないにしても、子どもにとってはそれを冗談には受け取れず、追い詰められていきます。

素直でまじめな子ほど危ないのです。また成績が振るわない子ばかりではなく、成績が良い子でもやらされている勉強が続くとついつい魔がさして、ごまかしてしまうことがあります。

普通に考えればそんなことをしても何の得にもならないのですが、悪気もなく親に認められたい一心からやってしまうのです。

特に新学期はこれまでとは違い、宿題の量も増え、内容も難しくなることから、しばらくすると宿題のやり方が怪しくなってくる子が出てきます。

たとえば、宿題のノートを見ると、宿題の範囲の前半部分は自分の力でやっていた様子がわかるのですが、後半部分になると式も筆算もなく答えだけが書いてあって丸をつけているだけだったりします。これは時間がなくてできなかったか、わからない問題はあるけどとにかく終わらせる形にしたか、のどちらかです。

その週に何か学校行事や家の事情があったとか、風邪をひいて寝込んでいたとか、一過性のことでできなかったならいいのですが、次の週も同じようなノートになっていたら黄色信号です。これを放置してしまうと、答えを写してくる範囲が広がっていきます。さらに答えの丸写しだとばれてしまうので、解説に書いてある途中式を写してきたり、わざと間違えたりと手が込んだ方法をとってくる子も出てきます。

私はこういうノートを見ると本当に子どもに対して申し訳ない気持ちになります。お母さんやお父さんに「宿題終わったの?」と聞かれて「終わっていない」とは言えず、やりたくはないけど写してしまったのでしょう。うしろめたさをどこかに抱えながらやっているに違いありません。プロの講師として私たちは適正な量と質の宿題を出さなくてはいけません。ごまかさないとできないような学習をさせてはいけないのです。

このままでは授業もどんどんわからなくなり、負のサイクルが加速していきます。勉強の楽しさを経験できないまま、時間とお金を浪費することになってしまいます。

では、こうした状況になっていることがわかった場合、親はどのような対応をとればいいのでしょうか。

ここで大事なことは子どもを絶対に責めない、叱らないことです。そして、終わらなくてもわからなくてもいいから、答えを写すことは絶対にしないように約束させることです。

次に塾の先生に、宿題が終わらない、できない原因に心当たりはないかを聞いてみましょう。たまに塾での友達とのいざこざで精神的に不安定になっていることが原因で勉強に手がつかなくなっている子もいます。

また宿題のやり方を工夫することによって改善できる場合もあります。

私の場合は保護者からの相談あるなしにかかわらず、宿題のやり方に不安がある子には生徒面談をして宿題のやり方を一から教えます。たとえば宿題をやる前に授業ノートを読み返してからとりかかるなど、単純なことから教えていきます。

どの段階でわかっていないかによってもやり方も変わりますが、まずは「自分で答えを出すところまで、あるいは惜しいところまではできるんだ」という自信を持たせることが大切です。意外に多いのが「どうせできないから」と最初からあきらめている子どもです。しかし、そういう子どもでも、考え方のヒントをちょっと与えるだけで、あとはスイスイとできてしまうことも少なくありません。そうした手がかりになるようなことは塾の授業で習っているはずなので、もう一度授業の内容を復習してから取りかかるほうが、定着もしやすいのです。

「適当に宿題やっているんじゃないの?」と不安に思ったら、まずは塾に相談するのが一番です。

改善できない場合は、宿題を減らしてもらうことも一つの方法です。

塾で出される一斉の宿題は、クラスの上位生向けの難易度の高い宿題も含まれているため、全員が全部できるわけではありません。だからと言って、「できる子はやって、できない子はやらなくていい」という指示も講師としては失格です。子どもの判断にゆだねているからです。個別に指示を出すのならいいのですが、親としても「みんなと同じ宿題をやらないと遅れてしまうのではないか」という不安も出てきます。

親のほうから、宿題を調整してほしいと言われれば、塾としても対応してくれると思います。一番大切なことは子どもが前向きに勉強できる状況をつくってあげることです。

塾と親の連携は中学受験には不可欠です。たくさん相談されるご家庭ほど受験はうまくいきます。「うるさい親と思われているのではないか」という心配は無用。親と塾が気遣いなくなんでも言える関係こそが成功に導きます。

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高濱正伸

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1959年熊本県人吉市生まれ。県立熊本高校卒業後、東京大学へ入学。東京大学農学部卒、同大学院農学系研究科修士課程修了。算数オリンピック委員会理事。1993年、「この国は自立できない大人を量産している」という問題意識から、「メシが食える大人に育てる」という理念のもと、「作文」「読書」「思考力」「野外体験」を主軸にすえた学習塾「花まる学習会」を設立。1995年には、小学3年生から中学3年生を対象とした進学塾「スクールFC」を設立。チラシなし、口コミだけで、母親たちが場所探しから会員集めまでしてくれる形で広がり、当初20名だった会員数は、23年目で20000人を超す。また、同会が主催する野外体験企画であるサマースクールや雪国スクールは大変好評で、延べ50000人を引率した実績がある。各地で精力的に行っている、保護者などを対象にした講演会の参加者は年間30000人を超え、毎回キャンセル待ちが出るほど盛況。なかには“追っかけママ”もいるほどの人気ぶり。ロングセラー『伸び続ける子が育つお母さんの習慣』ほか、『小3までに育てたい算数脳』『わが子を「メシが食える大人」に育てる』『算数脳なぞぺー』『中学受験合格パスポート』『中学受験に失敗しない』など、著書多数。「情熱大陸」「カンブリア宮殿」「ソロモン流」など、数多くのメディアに紹介されて大反響。週刊ダイヤモンドの連載を始め、朝日新聞土曜版「be」や雑誌「AERA with Kids」などに多数登場している。2016年7月からニュース共有サービス「NEWS PICKS」のプロピッカー。高濱正伸とスクールFCの達人講師陣による、他メディアには書けない記事にご期待ください。

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