1

お墓が心霊スポットの象徴として考えられるようになったのはいつから?

気が早いかもしれないが、「肝試し」の話をしよう。今では様々なアミューズメントパークにお化け屋敷があり、趣向を凝らした恐怖体験を味わうことができる。しかし、肝試しができるのは何も、人工のお化け屋敷とは限らない。人の口から口へと噂が噂を呼んで、いつの間にかできていた心霊スポットも、肝試しの定番であろう。では、私たちが思い浮かべる心霊スポットにはどのようなものがあるのだろうか。「教えて!goo」にも「心霊スポットに行った経験はありますか?」というような質問が寄せられている。

■心霊スポットとしての根拠は様々

回答者は各々の経験に基づいて、心霊スポットを挙げている。種類やその理由も様々であるが、その一部を紹介しよう。 「別の小学校出身の中学時代の友人の話では自宅前の交差点に出るという話を聞いたことがあるそうです。交通事故が多いだけの普通の交差点です。そこで幽霊を見たことはありません」(miku-chiさん)

「ホラースポットとしてではなく、本来の趣味の廃線跡廻りの一環として、ある鉱山鉄道の廃線跡のトンネルを訪れたとき、トンネルに入った途端にものすごい数の視線を前後から感じました。周囲には当然誰もいないのですが、恐ろしくてシャッターも切れず、早々に退散しました」(ultraCSさん)

「私が卒業した中学校が地元では有名な心霊スポットです。その中学校はもともと墓が点在していた山の斜面で、墓をすぐ近く(中学校の裏側)にある市営墓地に移動して中学校を建設した関係で『幽霊が出る』というので有名。中学校の周囲には移動を免れた墓があるし少し離れた場所には『火葬場跡地』というのもあるので霊感がある人は霊的な浮遊物を見るのが日常茶飯事です」(masa-uさん)

「昔、子供の頃に住んでいた家の前が旧い墓地で夏の夜なんかに表に出るとたまにぼんやり光るものが浮かんでましたね」(narara2008さん) 「10年前の秋頃、家族でドライブ中、知らず知らずに旧いせがみトンネル前に出ました。主人が気が付くと同時に、辺りが暗くなるように雨雲が広がり、トンネル前にカラスが一羽舞い降りてきてひと鳴き……そんなに寒くないはずなのに、寒気がして……慌てて引き返しました」(kattyfuwaさん)

こうして概観すると、人がそこを心霊スポットとする根拠も様々である。単なる薄気味悪い雰囲気だったり、そこで事件が起きたからであったり、また寺社や墓地があったりなど、必ず怨念のようなものが関わっているわけではない。しかし一方で、回答の中でも「墓地」が心霊スポットとして比較的多く挙げられていた。では、墓地=心霊スポットというイメージは、いつごろから定着していたのだろうか。

■お墓の心霊現象の起源は平安時代!?

そこで、墓地が心霊スポットや心霊現象のイメージの一端を担うようになった時期について、葬儀だけでなく、お墓についてもサポートをしているという心に残る家族葬を運営している葬儀アドバイザーに解説していただいた。

「説話集や要人の日記など、中世日本の様々な書物には、他の時代では余り語られない、また実話か作り話なのかも不明な不思議な出来事が、時々記録されています。そうした出来事の中には、葬儀文化的に見ても興味深い事件が、幾つかあります。その1つは、『有名な人物の墓が、地震でないにも関わらずひとりでに音を立て、揺れ動いたこと』というケースです。当時の政権や社会にとっての権威の拠り所であったり、更には『尊いもの』として信仰の対象であったりしたものや場所が、鳴動したと記録されているのです」

心霊現象が「鳴動」として記録に残されている。ということは、この記録をたどっていけば、少なくともその時代の書き手が墓地に心霊イメージを抱いていたという手がかりを得られるのではないだろうか。実際に、いつごろからこうした記録は見られるのだろうか。

「古くは、平安時代の前半に既に、古代の伝説上の皇后『神功皇后』の墓と信じられていた古墳に、鳴動があったとする記録があります。ただこれは、朝廷や社会の危機のお告げではなく、被葬者の取り違えを訴えたものとされています。また平安時代の末には、藤原氏の祖中臣鎌足の墓が鳴動したという記録も出てきます。この頃から、過去の要人の墓の鳴動は、墓の主の子孫がお家存亡の危機に直面していることのお告げだとする考え方が、強まりました。

こうしたお告げ信仰は、武家の台頭や源平合戦など、社会の大幅な変化と関係が強いと考えられています。この種の鳴動が記録されているような墓の主で、最も新しい時代の人物の一人が、豊臣秀吉です。秀吉が亡くなった翌年の1599年、彼の墓が鳴動したという記録が、江戸時代前期の『本朝通鑑』にあります。この鳴動の、更に翌年である1600年には関ヶ原の戦いが起こり、1615年には大坂夏の陣で豊臣政権が滅ぼされました。このことも人々に、秀吉の墓の鳴動は、豊臣政権の危機を告げるものだったと信じさせたことでしょう」

墓地には埋められた故人に由来する心霊現象が起こるという考え方が、実は平安時代前半から見受けられるということがわかってきた。しかし一口に心霊現象と言えども、現代の私たちが恐怖を覚えるものとは必ずしも一致していない。鳴動に関する記録は、一部の時代や人々においてお告げのような民間信仰が広く知れ渡っていたことも示している。心霊現象をただの恐怖で済まさずに、死生に関する信仰へと結びつけていたのは、それだけ生と死が密着し、人々が絶えずそれを意識していたからではないだろうか。

●専門家プロフィール:心に残る家族葬 葬儀アドバイザー

故人の家族と生前に親しかった方だけで行う家族葬こそが、故人との最後の時間を大切に過ごしたいという方に向いていると考え、従来の葬儀とは一線を画した、追加費用のかからない格安な家族葬を全国で執り行っている。

関連記事
最新記事