幸せ呼ぶ猫神の呟き 管理職になると、残業代は出ないって本当?【名ばかり管理職問題】

管理職になると、残業代は出ないって本当?【名ばかり管理職問題】

夫は「名ばかり管理職」で残業代が出ず、上司の暴言も悩み…

私の夫はいわゆる「名ばかり管理職」です。大したお給料ももらっていないのに残業代もなく、1日14時間ぐらい会社に拘束されています。また、上司の暴言にも悩まされています。訴えるより、人事に相談して異動させてほしいのですが、万が一を考えて証拠もそろえておきたいと思っています。一般の社員と、管理職では何が違うのか教えてください。(40代・女性)

「管理職になると残業代が出ない」にだまされないで

島田さくら弁護士の回答
4月は、異動で仕事の内容が変わったり、昇進して管理職の仲間入りをしたりする方も多いでしょう。

お給料が増える分、責任も重くなりますが、新しい自分や違った角度からの仕事のやり甲斐が見えてくるかもしれませんね。

期待に胸を膨らませる時期ですが、一方で、ご相談者さんのように「うちは課長以上になると管理職扱いで、残業代はつかないから」「店長になると残業代は出ないよ」といった話を耳にしたことはないでしょうか。

実際に長時間働いているのに、残業代が出ないなんていうことが許されるのでしょうか?

「管理監督者」かどうかは、肩書きではなく実態で判断される

一般の社員の場合、所定の労働時間を超えて働かせた場合は、会社は残業代を支払わなければなりません。一方、労働基準法第41条2号には、「監督若しくは管理の地位にある者」については、労働時間、休憩、休日に関する規定を適用しない、すなわち、管理監督者には残業代を支払わなくてよいと記載されています。

ただし、どの役職が「残業代を支払わなくてもよい管理監督者」にあたるかを会社が決めたら、それが絶対的基準になるというものではありません。

そもそも管理監督者は、社内での十分な権限を持っていて、いわゆる“社長出勤”のように自由な出勤も許されているし、残業代がないことを考えても十分高い給料をもらっており、ほぼ経営者と考えてよい人だから、残業代は払わなくていいですよというものです。

ですから、管理監督者にあたるかどうかは、肩書きにとらわれることなく、職務権限、勤怠状況、賃金等の待遇によって判断されます。会社が「店長は管理職とする」「課長以上は管理職だから残業代は支払わないと就業規則に書いた」というだけで、管理監督者にあたるというわけではありません。

相談者さんの夫の場合も、ほかの従業員の人事に関する権限や金銭の管理に関する権限があったか、会社全体の経営に関する会議に参加していたか、定時出勤やシフトによる出勤か、同業他社や一般社員と比べて賃金は高額かというような事情を考慮して、経営者と一体といえるか、管理監督者にあたるかが判断されることになります。

会社が管理監督者の範囲を広く見積もっていることも多いので、実際に相談を受けてみたら、とうてい「管理監督者」とは言えない…ということは頻繁にあります。

残業代の請求やパワハラの証拠をそろえるためには?

残業代を請求するためには、何時から何時まで働いたかという証拠が大事になります。タイムカードや、入退室の記録、パソコンのログイン・ログオフの記録などを確保しましょう。

「管理職には残業代を出さなくてよいので、タイムカードは押さなくていい」と言って、タイムカードを押させない会社もありますが、会社には社員の労働時間を管理して健康を害さないよう気を付ける義務がありますし、管理監督者であっても深夜割増分の残業代は払わなければならないので、タイムカードは打刻させなければなりません。

上司の暴言については、のちのち「言った、言わない」という争いになるのを防ぐため、会話を録音することをおすすめします。今は、スマホでも録音できますし、上司や話している相手の許可をとる必要はありません。

また、上司からされたこと、言われたことについては、メモを残しておくのもよいでしょう。その際は、「暴言を受けた」「パワハラを受けた」というざっくりした内容ではなく、「何月何日、何時頃、ほかの課員5名の前で、○○さんから『役立たず。給料泥棒』と言われた」など、具体的に書くようにします。

勤めている会社に残業代を請求したり、何かを要求したりするのは勇気のいる行為ですし、家族のことや生活のことを考えて、なかなか会社に物申すことができないという状況もありますよね。

毎日長時間の労働を強いられていると、労働者はへとへとになって、思考力を奪われていくこともあります。ご家族の方も、働き方について一緒に考え、サポートしていってください。

今回のポイント
・「管理監督者」にあたるかどうかは、肩書きではなく、職務権限、勤怠状況、賃金等の待遇によって判断される
・残業代を請求するためには、何時から何時まで働いたかがわかる証拠を集めること
・上司のパワハラの証拠は、録音や具体的なメモを残しておこう

島田さくら(しまだ・さくら)弁護士
大阪大学大学院高等司法研究科卒業。司法修習第65期。弁護士法人アディーレ法律事務所所属。東京弁護士会所属。元カレからのDVや、妊娠が発覚した翌日にカレから別れを告げられるなど、過去の男運のなさからくる波乱万丈な人生経験をもとに、悩める女性の強い味方として男女トラブル、債務整理、労働問題などの身近な法律問題を得意分野として扱う。離婚等の豊富な知識を有する夫婦カウンセラー(JADP認定)、2級知的財産管理技能士の資格も。家庭では1児の母として子育てに奮闘するシングルマザー。報道・情報番組「キャスト」(ABC朝日放送)にレギュラーコメンテーターとして出演中。その他、さまざまなメディアで活躍中。アディーレ法律事務所 http://www.adire.jp/

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