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大人になりきれない男ゴコロに潜む「永遠の少年」の謎

◆ビッグになりたいのに何もしない男子の矛盾

「いつかビッグになってやる!」と広言するものの、一向に行動を起こさず、ゴロゴロしてばかりいる彼氏。「いまのオレは“仮の姿”なの!」といいながら、まったく“本当の姿”を見せてくれない息子。そんな男の言い訳を聞くたびに、じれったくてイライラしてしまう女性も多いことでしょう。

「大きな夢を語る前に、目の前のことをコツコツこなしたら?」と言いたくなってしまうかもしれませんが、そもそもなぜ、“ビッグマウス”に行動が伴わない男性の矛盾は、あちこちで見られるのでしょう? ここでは、ユング心理学の元型「永遠の少年」をもとに、大人になりきれない男ゴコロの謎を紐解いてみたいと思います。
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◆永遠の少年が「正義のヒーロー」に憧れるわけ

「永遠の少年」とは、無意識の中に存在する未発達で夢見がちな少年の心を表す元型です。たとえば、戦闘アニメを見て「オレも正義のために闘うカッコいい大人になりたい!」と願う男は、永遠の少年の元型に刺激されていると考えられます。

大きな夢を持ち、肯定的な自己イメージを膨らませることはとても良いことです。しかし、空想ばかりが膨らんで、実際の行動が伴わないのは問題です。このように、空想の世界に埋没し、現実世界から後退していくのが、永遠の青年の典型的な行動パターンなのです。

永遠の少年たちは、現実的で地道な仕事を「オレがやるべき仕事ではない」と言って嫌います。その根本には、現実に根ざした物事と格闘し、社会に根を下ろすことから逃げ出したい気持ちがあるからです。そのため、「空飛ぶ戦士」や「宇宙に旅立つ少年」のように、現実から遠く離れて自己実現をするヒーロー像に憧れを抱くのだと考えられます。

◆永遠の少年が抱える「マザーコンプレックス」

こうした「永遠の少年」タイプの男子に共通する心情に、「マザーコンプレックス」があります。つまり、息子を心から愛し慈しむ一方で、愛情の強さゆえに息子を骨抜きにしてしまう母親に対する愛憎の気持ちです。

息子にとって、自分を愛してくれる母は愛着の対象である一方、呑み込まれて破壊される脅威にも感じられます。永遠の少年は、こうした母親を息苦しいと思う一方で、母のような完璧な愛にいつも包まれていたいという両価的な感情を持ちます。

そのため、永遠の少年が恋愛相手に望むのは、母親とは真逆のファンタジーを与えつつ、母性愛で包んでくれる女神のような女性が典型です。しかし、現実にそうした女性はいるはずもないので、生身の女性に幻滅して「二次元の女性」にのめりこむ人も少なくありません。

◆夜中にひっそり戦闘アニメを楽しむお父さんの気持ち

そもそも「永遠の少年」の心は、どの男性の心にも存在する元型です。しかし、多くの男性は永遠の少年を抱えながら、現実社会の中で自分にできる役割を探し、適応的な人生を選択していきます。同時に、母親からも卒業して異性や仲間との関係を築き、外界に開かれた自分の世界を構築していくのです。

このように、現実との折り合いをつけた男性にとって、永遠の少年は、ふと一人になったときに現れる“懐かしい自分の一部分”なのです。少年の頃に夢に描いていたヒーロー像と同化し、空へ宇宙へと羽ばたいていく自己をイメージしながら空想に浸るひとときこそ、永遠の少年になれる至福の時間。そんな時間は、現実世界のストレスから解き放って希望と夢を掘り起こし、明日への活力を与えてくれることでしょう。家族が寝静まった夜に、戦闘もののアニメに没頭する世の父親たちなどは、永遠の少年との回合を楽しむ好例だと思われます。

しかし、永遠の少年に振り回され、現実社会に適応できない人々は、いくつになっても夢のような自己イメージを空想し、ファンタジーと空虚感の間を行ったり来たりして生きていくことになります。そんななか、現実社会から取り残されるあせりは確実に強化され、「いまさらやるなら、もっとビッグなことを!」と取り組むべきハードルを上げながら、適応的な生活からますます遠のいてしまう人もいます。
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◆永遠の少年から卒業し、適応的に生きるには?

では、こうした永遠の少年にとらわれた男性は、どのようにそこから脱皮し、現実社会に適応していけばいいのでしょう。永遠の少年を研究したフォン・フランツは、「何かを最後までやり通すこと」だと言いました。

合わない仕事を無理に押し付けても、現実への拒否反応が強くなるだけで、適応的な生活は遠のくばかりです。そこで、まずは本人がやりたいと思ったことを、どんなことでも最後までやり遂げることです。そして、ゴールから見える景色をじっくり味わうことです。何かを最後までやり通せば、そこから見える世界は、いままでの生活では得られないものです。その地平から自分なりに何かを感じ、考えることが次のステップに進むために必要となります。

小さなことでもかまいません。まずは、何かを最後まで成し遂げ、夢見る少年から本物の大人へと一歩進んでいきませんか?

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