知ってると楽しい『通】学! ■相続(贈与)対策
fc2ブログ

 

贈与税の配偶者控除とは? 大きな節税効果があるって本当? あてはまる要件は?

贈与税の配偶者控除とは

贈与税の配偶者控除とは、夫婦間での居住用財産の贈与に関する優遇措置です。具体的には、配偶者から居住用の不動産、または居住用不動産取得用の金銭の贈与を受けた場合、110万円の基礎控除とは別枠で、最高2000万円まで控除できる特例です。

この制度の背景には、夫婦間の財産の形成は双方の協力によってなされたものであるという一般的な考え方、また配偶者の老後の生活を保障するという目的があります。

一般的な贈与には、金額が大きくなればなるほど税率も高くなる超過累進税率が適用されていますので、配偶者控除を受けることで大きな節税効果が期待できます。

贈与税の配偶者控除の適用要件

贈与税の配偶者控除は、すべての夫婦が対象になるわけではありません。

贈与された財産が、居住用不動産、またはその取得資金であることのほか、特例には次のような適用要件が設けられています。

●婚姻期間が20年以上の夫婦間の贈与であること

婚姻期間が20年未満の夫婦間で行われる贈与には、特例は認められません。

●配偶者から贈与された財産が、 居住用不動産、または居住用不動産取得のための金銭であること。

●居住用不動産への居住が前提であること

贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与された、あるいは贈与された金銭で取得した居住用不動産に実際に住んでおり、かつその後も引き続き住む見込みであることが前提です。また、この特例に該当する居住用不動産とは、居住のための土地やそれに関する権利、家屋で、国内にあるものを指します。

●過去に同じ配偶者から贈与税の配偶者控除の特例を受けていないこと

贈与税の配偶者控除は、同じ配偶者からは一生に一度しか適用を受けることができません。

この特例を受けるためには、上記の要件を満たしたうえで、確定申告の手続きも行う必要があります。

贈与税の申告書のほか、贈与を受けた日から10日後以降に作成された戸籍謄本や戸籍の附票の写し、居住用不動産の登記事項証明書など、複数の書類を添付したうえで、所轄の税務署に提出しなくてはなりません。

生前贈与加算との関係性

生前贈与加算との関係も押さえておきましょう。生前贈与加算とは、相続開始前3年以内に被相続人から生前に贈与された財産が、相続税の課税価格に加算される制度です。

しかし、贈与税の配偶者控除に相当する金額については、この期間内の贈与であっても加算する必要はありません。すなわち、婚姻期間が20年以上の夫婦であれば、この特例を活用しておくことで、将来の相続税の負担を軽減できる可能性があります。

結婚生活が20年以上の夫婦は贈与税の配偶者控除の対象

夫婦間では、財産のやり取りが贈与にあたるという意識は一般的に希薄かもしれません。しかし、婚姻期間が短い場合などでは、贈与の対象になり得ることを知っておきましょう。

ただし、婚姻期間が20年以上を過ぎると、贈与税の配偶者控除の適用要件を満たします。

控除額が大きく、うまく活用することで将来の税金対策になりますので、自分たちにとってメリットがありそうか検討しておきましょう。

出典

国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)

国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除

国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)より No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

相続税・贈与税申告の時効成立は何年? 悪質な場合はどうなる?

相続税・贈与税の時効は原則5年

相続税の申告・納税期限は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10ヶ月以内と定められています。一方、贈与税の申告・納税は原則として、贈与があった翌年の2月1日~3月15日となっています。この期間内に申告しなかった場合、加算税の課税などの処分が行われます。

しかし、申告期限から一定期間が経過して時効が成立すると、税務署は徴税や処分を行う権利(徴収権)を失います。相続税や贈与税などの国税の時効は、「国税通則法」という法律で法定申告期限の翌日から原則として5年と定められています。

ただし、次のような場合は時効の成立が猶予されたり時効が更新されたりすることになり、5年が経過しても時効は成立しません。

__・催告書や差押予告通知書の送付などによる納付の催告が行われた

・滞納処分による差し押さえが行われた

・差し押さえのための捜索が行われた

・期限後申告、納税の猶予や延納の申請など納税義務者に納付義務を認識していると認められる行為があった

・税金の一部納付__

つまり、申告期限の翌日から5年間、税務署側から徴税に関する働きかけが一切なく、納税義務者側からも相談や納税などのアクションを起こさなかった場合のみ、時効が成立することになります。

悪質な税金逃れとみなされた場合の時効は7年

相続税・贈与税申告の時効は、猶予や更新に該当する事項がなければ原則5年で成立しますが、悪質な脱税行為であるとみなされた場合は例外です。

国税通則法では「偽りその他不正の行為」によって税額を逃れた場合、法定納期限から2年間は時効が進行しないことが定められています。つまり、多額の相続財産を意図的に隠して申告しない場合などは、本来の5年+時効が進行しない2年間=7年に時効が延びる可能性があるのです。

相続税・贈与税を申告・納付しなかった場合のペナルティー

相続税や贈与税を申告しなかったことが判明し、あとから申告・納税する場合、ペナルティーとして本来の納税額に加えて延滞税や無申告加算税が課税されます。

延滞税の税率は、次のとおりです。

__・納期限(期限後に申告した場合は申告書提出日)の翌日から2ヶ月経過まで:原則年7\.3%

・納期限の翌日から2ヶ月経過以後:原則年14.6%__

また、確定申告をしなかった場合の無申告加算税の税率は、本来の税額に対して50万円までは15%、50万円を超える部分は20%です。

また、意図的に財産を隠した、申告・納税義務を知りながら申告を怠ったなどとみなされ悪質と判断されると、無申告加算税の代わりに重加算税が課せられることもあります。重加算税は税率40%と大変重いペナルティーです。

5年または7年の時効が成立すれば、相続税・贈与税の申告・納税の義務はなくなりますが、税務署は独自の資料に基づいて税務調査を行っており、何年もアクションがないことはあまり考えられません。無申告が判明した際のペナルティーは決して軽くなく、納税の負担が増大する可能性が高いでしょう。

たとえうっかり申告期限を過ぎてしまった場合でも、時効の成立を狙って意図的に無申告を続けるようなことは、避けるのが懸命です。

相続税・贈与税の時効は5年または7年だが成立は難しい

相続税・贈与税は申告期限の翌日から5年、または7年が経過すれば時効が成立し、申告・納税の義務がなくなります。しかし、税務署から催告などの働きかけがあれば時効の猶予や更新が行われること、細やかな税務調査が実施されていることを考えると、時効はそう簡単には成立しないでしょう。

意図的な無申告は脱税行為であるうえ、無申告が判明すると重いペナルティーが課せられるリスクがあります。時効の成立を狙ったりすることなく、相続税・贈与税は正しく申告しましょう。

出典

国税庁 No.4205 相続税の申告と納税

国税庁 No.4429 贈与税の申告と納税

e-Gov法令検索 国税通則法

国税庁 第72条関係 国税の徴収権の消滅時効

国税庁 No.9205 延滞税について

国税庁 相続税及び贈与税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)

国税庁 No.2024 確定申告を忘れたとき

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

「暦年贈与」が大きく見直しへ!? 生前贈与はどう進めればいい?

多額の相続税より小まめに払う贈与税

誰かが亡くなり相続が発生すると、遺産相続額が多い場合には、相続人に相続税が課税されます。控除額もありますが、遺産が多いほど相続税も高額になります。

そのため相続が発生する前に、子どもや孫に財産を「生前贈与」する方がいらっしゃいます。

現在の税制では、贈与税は、年間110万円を超えた額に対してかかります。贈与金額が多いと相続税より税率は高いのですが、贈与税を支払ってでも贈与を行うという方もいらっしゃるでしょう。

生前贈与の方法として、子どもや孫に対し、何年かかけて行う「暦年贈与」がこれまで多く利用されてきました。

また、暦年贈与と並行して、例えば教育資金や住宅資金の特例贈与が、非課税で行える制度も活用されてきました。

しかしこの枠組みに対しては、富裕層に対する優遇策ではないかとの批判もあり、暦年贈与を中心に見直しが現実化しつつあります。

最も一般的な贈与の方法は、年間110万円まで非課税で行える暦年贈与です。非課税額が110万円となっているため、財産額の多い方は、長期間かけて早めの準備が必要になります。

ただ、制度の改正が準備されており、現行制度での贈与は制約されそうです。

贈与税を制限し相続税中心の体系に

現在、政府・与党では、相続税と贈与税を一体化させる議論が進んでいます。早ければ2023年の税制大綱から、暦年贈与に対する見直しが行われる公算大です。

現在の法体系でも、暦年贈与を実施中に相続が発生すると、相続前3年間分の贈与額はいったん戻した上で、本来の相続額と合算して再計算され、相続税として課税されます。

この考えの延長上で、贈与額全体を相続時に合算して相続税として支払う「相続時精算課税」制度(非課税枠は2500万円)が、今後は軸となると思われます。

これまでは暦年贈与と並行して、「相続時精算課税」制度もあり、贈与に際してはどちらも選択できました。

110万円までは非課税の暦年贈与の仕組みは、非課税枠を超えても贈与税を支払えば財産移転が可能で、しかも誰にでも贈与できるメリットがあり、多くの方に利用されてきましたが、今後は使いづらくなりそうです。

政府・与党で議論されている改正案は、下記のとおりです。

__(1)暦年贈与制度自体は残すが、相続税との合算期間を、相続前3年から変更し5年以上に延長、かつ非課税枠も縮小する

(2)暦年贈与の仕組み自体を廃止し、相続時精算課税制度の非課税枠を拡大して一本化する__

現在では、暦年贈与が相続時精算課税より広く定着しているため、(2)案を採用して一気に暦年贈与を廃止すると、抵抗感が強くなる可能性があるため、制限を加え数年間は存続させる(1)案の採用が有力かと思われます。

暦年贈与と相続時精算課税の相違点

贈与税から相続税中心の税体系に変更される方向で進んでいますが、暦年課税と相続時精算課税の違いを確認しておきましょう。

まず贈与を受ける人(受贈者)の対象はどうでしょうか。

暦年贈与の受贈者は、血縁者だけでなく、誰でもいつでも贈与が受けられます。これに対して相続時精算課税では、受贈者は18歳以上の直系卑属(子や孫)、贈与者は60歳以上の直系尊属に限られます。

次に非課税枠については、暦年贈与は、年間110万円まで非課税で、何年に渡っても実施可能です。これに対して相続時精算課税は、合算して相続時点だけで、2500万円まで非課税です。

さらに税率は、暦年贈与では、贈与の度に10~55%の累進税率の贈与税がかかります。贈与額が多いと税率も高くなります。相続時精算課税では、非課税枠を超えた分に、一律20%の相続税がかかります。

現在では暦年贈与に関して、相続時点から3年間はさかのぼって贈与した額自体を相続財産として再計算されます。

この3年という期間が、2023年以降の改正で、5年以上に延長され、さらに非課税枠も、現在の110万円から50~60万円に縮小される案の採用が有力です。

相続が近いことを感じて行う、急な暦年贈与に対して制約がかかる見通しで、相続人以外の親族(例えば孫)に贈与するなども1つの対応策になります。

暦年贈与の申告者数に比べ、相続時精算課税の申告者の数は多くありません。相続のことを考えると、早い時点から着手できる暦年贈与は非常に使い勝手がよく、相続時より3年以上前の贈与に関しては、相続税の対象にはならないからです。

しかし制度の改変が実施されると、仕方なく相続時精算課税を選択する方が増えることが推察できます。

多額の贈与ができる非課税特例も見直し

現在、非課税で子どもや孫に贈与できる別の特例もあります。「住宅資金贈与」「教育資金贈与」「結婚・子育て資金贈与」の3つの非課税特例です。

専用口座の開設など、資金移動の透明化が不可欠な条件がありますが、住宅資金贈与は最高1000万円まで、教育資金贈与は最高1500万円まで、子育て・結婚資金贈与は最高1000万円まで、非課税枠があります。大きな金額を、子どもや孫へ移転可能な仕組みとなっています。

住宅資金贈与は、2022年から減額されましたが、今後も微調整されて継続の予定です。教育資金、結婚・子育て資金の贈与に関しては、2023年3月末までの継続が確定しています。

しかし運用条件が厳しくなっており、一定年齢を過ぎて使い残した金額に対して、相続税が通常の2割の増額になりました。

2023年以降に、見直しがあるかもしれません。特に結婚・子育て資金の非課税特例は、利用がかなり少ないため廃止の可能性があります。

こうした非課税制度は、本来の相続税自体の減収にもつながるため、継続的に見直しの対象になります。

子どもなどへの贈与を検討している方は、条件を満たしているかを確認し、早めに進めることをお勧めします。

執筆者:黒木達也

経済ジャーナリスト

監修:中嶋正廣

行政書士、社会保険労務士、宅地建物取引士、資格保有者。

2400万円の自宅を「共有で相続」した三人兄弟を襲う、驚くべき「重大なリスク」 問題を先送りしているだけだ

1年前に父親を癌で亡くした山内進さん(55歳)と弟の浩二さん(52歳)、妹の幸子さん(49歳)の三人兄弟。母親もすでに亡くなっていたため、3人で2520万円の遺産(自宅不動産が2400万円、現預金が120万円)を分割することになりました。

父の遺言状には「全財産を長男に相続させる」と書かれていたため、てっきりその通りになると思い込んでいた進さん。しかしほかの兄弟にも遺留分が認められているため権利を主張できることは、【前編】『「2500万円の遺産、すべて俺がもらえる」余裕の長男に訪れた「予期せぬ事態」』で説明した通りです。

仕方がなく、自宅の一部の共有持分を兄弟2人に渡した進さんでしたが、そのような遺産分配には、思わぬリスクが潜んでいるのです。

山内家を襲うかもしれない「2つのリスク」

それでは一体どのようなリスクがあるのでしょうか。まず1つめは、将来もしこの家を売却しようとしたときなどに、権利を保有している3人が合意しないと処分できないというリスクです。

たとえば自宅を取り壊して賃貸物件に建て替えたい、あるいは更地にして売却したいと進さんが思ったとしても、妹の幸子さんが「思い出がある家だから取り壊したり売却したりするのは嫌だ」と納得しなければ、建て替えも売却もできません。共有者全員の合意が得られなければ、いつまで経ってもこの不動産を処分することはできないのです。

さらに2つめのリスクとして、次の世代の相続において権利関係がより複雑になる可能性があります。

現在この不動産は進さん、浩二さん、幸子さんの3人の共有となっていますが、3人のうち誰かが亡くなると、その共有持分が相続されることになります。

たとえば浩二さんには妻と子ども2人がいますが、実は過去に離婚歴があり、前妻との間にも1人の子どもがいました。この場合、浩二さんの法定相続人は妻、子2人、前妻との子1人の合計4人になります。つまり、浩二さんの共有持分である自宅の3分の1がさらに4人に分割される可能性があるのです。

こうして相続が重なると共有持分が分散して権利関係が複雑になり、ついにはお互いの連絡先すら分からず不動産の処分に苦労することがあります。

相続において、不動産を共有するというのは、一見公平で円満な解決策のように見えるのですが、実は後々、場合によっては自分の子や孫の代になってから、問題を引き起こすリスクも秘めているのです。

三人兄弟が揉めてしまった「最大の要因」

山内家が相続で揉めた最大の理由は、遺留分を無視した遺言にありました。前述のとおり、遺留分とは、一定の相続人に最低限保障された相続分です。

長男の進さんはそれを知らずに遺言に従って自分が全財産を相続できると思っていましたが、おそらく遺言を書いた父親自身も同じく遺留分について知らなかったと思われます。もし知っていれば、もっと遺留分に配慮した手立てを考えることもできたはずだからです。

たとえば遺留分対策の一つの方法として、生命保険の活用が考えられます。山内家のケースで考えると、もし父親が生前に840万円の生命保険に加入して受取人を進さんに指定していれば、進さんは父親の死後に受け取った保険金から浩二さんと幸子さんに遺留分相当の現金を渡すことができました。

生命保険の保険金は受取人固有の財産とされ、原則として遺産分割の対象にはなりません。したがって進さんが保険金を受け取っても遺留分には影響せず、その保険金を弟妹に渡すことによって不動産の共有を避けることもできたのです。

また相続で揉める理由として心情的な不満が大きな要素になるケースも少なくありません。遺言には付言事項といって法的な効力を目的としないメッセージを書くこともできます。

父親はもし進さんに全財産を相続させたい特別な理由があるのであれば、付言事項にその理由を書くとともに、浩二さんと幸子さんに対しても感謝や愛情が伝わるメッセージを残しておくべきでした。そうしていれば、もしかしたら2人も不満を持つことはなく、納得して円満に相続が行われたかもしれません。

自筆ではなく「公正証書遺言」を作成する

なお、進さんの父は「自筆証書遺言」という自分で作成した遺言を残していました。自筆証書遺言は誰にも知られずに作成することができ、費用も掛からないというメリットがあります。

しかし第三者に相談せずに作成すると、今回のように遺留分への配慮が欠ける場合があります。さらに日付、氏名、押印などが欠けていて遺言が無効になったり、訂正した箇所が正式な方法に則っていなくて無効になったりするケースもあります。

せっかく遺した遺言で家族が揉めたりしないためにも、なるべく弁護士など専門家に相談するか、公証人が関与する「公正証書遺言」を作成する方が確実です。

今回、進さんが浩二さんと幸子さんの遺留分を現金で渡すことができないため、相続した実家不動産を共有にしましたが、もし誰かがその家に住むわけでないのであれば、その不動産は早めに売却して、そこで得た現金を分割するのも一つの選択肢です。

思い出のある家はすぐに売却しづらいかもしれませんが、上述のとおり共有状態のままだと次の世代の相続でさらに権利関係が複雑になり、ますます処分が困難になりかねません。早めに売却して現金化すれば分割も容易なので、冷静に考える必要があります。

最後にあまり知られていませんが、2019年7月に遺留分にかかわる法改正が施行されました。改正前は遺留分を侵害した相続が行われた場合、侵害された相続人は「遺留分減殺請求」をすることで、現物返還を受けることができました。

つまり不動産であれば他の相続人が取得したとしても、裁判所によって遺留分が認められればその不動産の共有持分を取得できたのです。

しかし改正後は遺留分減殺請求が「遺留分侵害額請求」という名称に変わり、現物ではなく金銭による返還のみとなりました。侵害を受けた側は不動産の共有持分を求めることはできず、逆に侵害した側は金銭によって遺留分を支払う必要があります。

もし金銭による返還ができなければ、結果的に資産を売却して現金を用意する必要が生じると思われますので、いずれにしても相続においては遺留分に細心の注意を払ったほうがよいでしょう。

相続税の納税資金が足りない時に選択肢となる「延納・物納制度」とは

相続税を支払うために、相続した不動産を手放したなどの話を聞いたことがあるかもしれません。

相続税は取得した財産に応じて支払うことになるため、納税資金が足りなければ相続財産を処分することも選択肢です。

ただ売却するのが難しい相続財産もありますので、今回は相続税が支払えない時に活用できる納税方法を紹介します。

相続税は期限までに現金一括納付が原則

相続税の納税期限は申告期限と同日であり、現金で一括納付するのが原則です。

相続財産が多い相続人ほど相続税を多く支払うことになりますが、相続した財産に現金・預金がほとんどない場合、納税資金の確保が大変です。

上場株式などの現金化しやすい財産があれば、納付期限前に売却して納税資金を確保できますが、不動産はすぐに売れるとは限りません

そのため納付期限までに一括納付が難しいときは、次にご紹介する「延納制度」・「物納制度」の活用もご検討ください

相続税を分割納付する「延納制度」

延納制度は、相続税を分割して納税することができる制度で、次の要件を満たした場合に利用できます。

【延納制度の適用要件】

・ 相続税の納税額が10万円超

・ 金銭納付が困難で、延納する金額が納付困難な金額の範囲内

・ 担保提供

(延納税額が100万円以下で、延納期間が3年以下の場合は不要)

・ 相続税の納付期限までに延納申請書および、担保提供関係書類を提出

相続財産の種類や不動産等の割合によって異なりますが、延納できる期間は最長20年です。

延納期間中は利子税を納付することになりますが、通常納付が遅れた際に納める延滞税よりも利率は低いです。

延納制度には審査があり、税務署は延納申請期限から3か月以内に延納の許可または却下の判断をします。(延納担保などの状況によって、最長6か月まで判断が延長する場合もあります。)

延納制度の要件を満たしていない場合など、申請しても延納は認められないケースもありますので、延納制度を利用する際は事前に要件をご確認ください

現金の代わりに相続財産で支払う「物納制度」

物納制度とは、相続財産により納付することができる制度です。

相続税を納付期限まで金銭納付するのが困難な場合、納付を困難とする金額を限度として物納が認められており、利用する際は申請書および物納手続関係書類の提出が必須です。

物納に充てることのできる財産には優先順位がありますので、相続人が物納したい財産を選択できるとは限りません

また物納による相続税の納税は最終手段と位置付けられているため適用要件は厳しく、納付期限までに一括納付できる場合や、延納制度を利用して納付できる状況下で物納申請が認められる可能性は低いです。

申請時の手続きや提出書類は多いため、物納制度を利用する際は税務署の担当職員と事前に協議する必要があります

相続税対策は生前から行わないと間に合わない

相続税の申告・納付期限は相続開始日の翌日から10か月以内と、相続が発生した後に行う相続手続きを考えると、対策する時間は限られています。

遺産分割において預金を取得できなかった相続人は、自己資金により相続税を支払うことになりますので、相続税の納税額がどの程度になるか、事前に把握しておくことも大切です。

延納制度・物納制度は申請手続きが必須ですので、利用する際は相続税の申告書を提出する税務署に1度相談することをオススメします。(執筆者:元税務署職員 平井 拓)

相続が“争族”の火種になる前に…今から始める「リモート終活」41の心得

「リモート終活」CHECK&DO リスト41。リストの編集協力:三井住友信託銀行(AERA2月28日号から)© AERA dot. 提供 「リモート終活」CHECK&DO リスト41。リストの編集協力:三井住友信託銀行(AERA2月28日号から)

 丸2年が経つコロナ禍で、人との接点が減ることに慣れてしまった。それは自分の親も例外ではないかもしれない。親が亡くなると、相続や死後事務などの手続きは膨大だ。AERA2022年2月28日号では、リモート終活について取材した。

*  *  *

 親の他界は予想だにしない事態を引き起こすこともある。だからこそ、親の終活を一緒に支援しておきたい。

 じつは離れた場所で暮らしていても、親の終活を遠隔でサポートすることは可能だ。名付けて「リモート終活」。親と子どもで協力しながら、遠隔でも今すぐ始めたい、確認しておきたいことを41のリストにしてまとめた。

 どれも「遺言書作成」や「生前贈与」など本格的な作業に入る前段階の内容だ。これらをはっきりさせておくだけで、あなたの将来の負担は軽くなる。コロナ禍で会えないが、リモート環境下でもチェックしておきたい項目となっている。

「さすがにこれはやってくれているでしょ」と過信しないことが大切だ。あなたの親が几帳面でも、実はたいした終活はしていないと思ったほうがいい。

■「出生地」がわからない

 こんなケースもあった。

「夫の母が異物を喉に詰まらせて他界し、相続の手続きのために戸籍謄本が必要になりました。ところが、義母は過去に本籍を何度か移していたうえ、その詳細を義父も把握しておらず、出生地が不明だったのです。東北のどこか……というだけ。役所に問い合わせてもなかなか辿り着けず、費用を払って司法書士に調べてもらいました」

 神奈川県在住の48歳女性が突然の義母の死を、そう振り返る。

 最低限、親の正確な出生地は存命中にきちんと確認しておきたい。ちなみに、この女性の場合、戸籍がすべて揃ったところで驚愕の事実が発覚した。

「義母は離婚歴があったことを隠して義父と結婚したうえ、年齢を八つサバ読みしていたのです。そのことを今さら知った義父は激怒していました」

 両親ともに健在なら、終活の際に「二次相続」のことも念頭に置くべきだ。どちらかが先立てば、やがてもう一人もその後を追い、二度の相続を経験することになる。東京都在住の50歳男性は、わずか1年のうちに父母を相次いで亡くした。

「四苦八苦して父が遺した株式の名義を母に書き換えたところで母が亡くなりました。今度は母から自分への、同じ書き換え手続き……。こんなことなら、最初から私の名義に変更すればよかったと後悔しました」

■財産相続と死後事務

 父から母への名義変更を自力でやって疲れたため、今度は司法書士に頼むと、数十万円の費用がかかった。「司法書士費用は、ようやく自分のものになった株券の含み益を上回る出費だった」そうで、まさに骨折り損のくたびれ儲けである。

 「リモート終活」チェックリストの作成に協力してくれた、三井住友信託銀行個人企画部主任調査役の田村直史さんは、こう説明する。

「まず親御様の没後には2種類の手続きが発生します。『財産の相続』と『死後事務手続き』です」(田村さん)

 チェックリストでいえば親の「資産編」に挙げたものが財産の相続に関連する。法律上、相続財産の処分または引き継ぎは、法定相続人全員で遺産分割協議を行うのが原則だ。

「マイカーの相続でも車検証、実印、印鑑証明とともに、遺産分割協議書を提出する必要があります。廃車にする場合も、いったん誰かが相続したうえでの手続きになります」(同)

 銀行の現金や株式などの有価証券、不動産など金融資産のリスト化もお願いしておきたい。それが無理なら「どの銀行や証券会社を使っているか」をあなたが把握するだけでもOK。既に使っていない、でも数千円だけ入っているような金融機関を持っていたら、今のうちに閉じてもらう。

 なお、国は証券会社などにある金融資産をマイナンバー(個人番号)でヒモ付けしている。

■貴金属・骨董品も火種

 親の所有財産について、根掘り葉掘り聞き出すことに抵抗を感じる人も多いはず。そのような場合は「実は同僚の○○さんの父親が亡くなって……」などと身近な話に置き換えつつ、先に取り上げたような苦労話を聞かせてみる。そういった話もしづらいようなら終活の記事が載った雑誌を見てもらうことや、終活に関するオンラインセミナーに参加してもらうことも意外に効果的だという。

「相続の対象となる資産の中でも、素人が価値評価をしづらい貴金属や骨董品は“争族”の火種となりがちです」(同)

 値がつくようなモノがある家庭は、親にそれらのリスト化もお願いする。価値のわかる人に渡ればと生前整理をする人もいるが、そこまでしないなら、鑑定に出してもらえば安心だ。

 財産の相続以外の「死後事務手続き」は多岐にわたる。まず、クレジットカードは必要最低限に。携帯電話会社や水道光熱費の明細、年金・保険関連の書類は「あのタンスの2段目の引き出しね!」というように、1カ所にまとめてもらう。

 パソコンやSNSなど現代ならではのチェックポイントも忘れずに。親が登録で使ったメールアドレスを知っておくだけでも、役立つことはある。

 田村さんは、大切な「お見送り」について、こうも言う。

「葬儀の内容や参列者、埋葬の方法は、存命中にご本人の意向を明確にしておかないと、遺族が悩むことになります」

 コロナ禍で会いにくいからこそ、今からでもリモートで、時間をかけて徐々に親の意向を聞き出そう。(金融ジャーナリスト・大西洋平、編集部・中島晶子)

※AERA 2022年2月28日号より抜粋

老後にかかる3つの大きな出費とは?見直して節約!

老後の「3大かかるお金」とは? 節約方法は?

老後の生活と聞くと、「子育ても仕事も終わって悠々自適の生活ができる……」と余裕のある生活をイメージしてしまいがちです。

しかし、余裕があるように見える老後の生活にも、実はうっかり見逃しがちなお金の落とし穴があるのです。

筆者はシニア誌の編集にも関わっているため、読者取材や読者アンケートで実際に年金生活をしている家庭の家計を多く拝見してきましたが、それらの多くのケースから浮かび上がってきたのが、

(1)光熱・水道費

(2)携帯電話代

(3)生命保険料

という、老後の「3大かかるお金」の見直しの大切さです。

ついつい放置しているこれらの項目を見直すことで、月額数千~数万円の出費削減が期待できますから、是非一度チェックしてみましょう。

その1:光熱・水道費

まず意外なのが、電気代やガス代などの光熱費。子育て中の大人数用の生活スタイルを変えないなど、様々な要因で高い料金を支払ってしまっていることが多いのです。

例えば見逃しがちなのが、「壊れていないから」と10年以上も古い家電を使い続けているケース。同じ家電でも最近の家電は節約効果が高くなっており、買い換えるだけで年間1万円ほどの節約になることもあります。

また、子が独立したのに、電気の契約アンペアを大人数用に合わせたままにしていないかも、チェックしたいポイントです。契約アンペアを下げれば基本料金が安くなるので、心当たりのある人は契約アンペアと適正量を調べてみましょう。

とはいえ、電気・水道・ガスを使いっぱなしにしてしまっていれば、こうした努力も水の泡。日々の生活の中で電気・水道・ガスを使いっぱなしにしていないか気をつけるところから、節約を始めたいものです。

まずは光熱・水道費の見直しから!© All About, Inc. まずは光熱・水道費の見直しから!

その2:携帯電話代

次に落とし穴になるのは、携帯電話代。「何年も前に契約してから、一度も契約を見直したことがない……」と思い当たる人は少なくないでしょう。

普段口座引き落としやクレジットカード払いで料金を支払っていると、自分がいくら支払っているのか分からないままになってしまいがちです。まずは料金明細をチェックして、自分が何にいくら支払っているのかを確実に把握しましょう。

ガラケーかスマホか見極めも大事© All About, Inc. ガラケーかスマホか見極めも大事

よくあるムダな出費は、定額で音楽をダウンロードできるサービスなど、普段全く使っていないオプションサービスの月額利用料を支払い続けていたというケースです。

月額で数百円の出費でも、そうしたオプションサービスに複数加入したまま何年も経てば、無視できない金額になってしまいます。

また、夫と妻で使っているキャリアが違う場合も要注意。家族でキャリアを揃えれば、家族割引などで出費を大幅に抑えることができるので、ほったらかしにせず再考してみると良いでしょう。

他には、「スマホはお金がかかる」と決めつけてガラケーにこだわるのも考えものです。

例えば通話時間が長い人であれば、スマホのほうが通話料金を安く抑えることができて、携帯電話代を削減できる場合もあります。格安SIMや格安スマホの利用も検討しましょう。

その3:生命保険料

さて、最後の3つ目の落とし穴は生命保険料です。そもそも生命保険は、もしものときに備えて必要な保障を確保しておくためのものです。

必要な保障内容はライフステージが変化してゆくにしたがって変わるものですから、生命保険の契約内容も自分のライフステージに合わせて柔軟に検討し直すことが必要です。

子が独立した家庭であれば、すぐにでも医療保障と死亡保障を見直す必要があります。

医療保障については、保障の種類が終身保障になっているかをチェック。死亡保障を特約の形で契約し、終身保障となっていないなどの場合は、80歳までなどで満期となってしまい、それ以後の保障がなくなってしまいます。

そうした場合は、特約を解約して終身保障の医療保険に加入し直すなど、一生涯保障を受けられるようにします。その際、不要な特約があったり、入院日額が高いと感じられる場合は、加入先に相談して契約を変更することで、保険料を安く抑えることができます。

また死亡保障については、子が独立すれば高額な死亡保障は必要なくなります。不要な特約を解約するなどして、最低限葬儀代数百万円をカバーできる程度の契約内容に変更して、ムダな出費を抑えましょう。

とはいえ、出費を抑えようとするあまり、見境なく契約内容を解約・減額してしまうのは禁物。家族や加入先と相談し、必要な保障内容を確認した上で契約を見直すよう心がけましょう。

子どもが独立したら見直し!© All About, Inc. 子どもが独立したら見直し!

コツコツ積み重ねて老後の生活のコストダウンを

こうしてみると、いずれのケースも、料金明細や契約内容をチェックすることで改善できるものばかりです。

節約は諦めずにコツコツ積み重ねることが近道ですから、「面倒だ」と思わずに一度料金明細をチェックしたり、家族や加入先に相談することを検討して、老後の生活のコストダウンを目指しましょう。

文:酒井 富士子(マネーガイド)

贈与税の節税方法 損をしないための「3つのポイント」

贈与税は財産を無償でもらった際に課される税金であり、子どもであっても納税者として申告・納税手続きが必要になるケースもあります。

一方で、贈与税には非課税控除や特例制度が多く存在するため、同じ贈与財産をもらった場合でも、贈与方法を工夫するだけで節税が可能です。

そこで本記事では、贈与税を節税したい方が知っておくべき3つのポイントをご紹介します。

ポイント1:贈与財産の金額は110万円を超えるのか

贈与税の節税を考える上で、欠かすことができないのが基礎控除額の存在です。

贈与税には110万円の基礎控除額がありますので、

贈与財産が110万円以内であれば贈与税は無税

です。

110万円の基礎控除額の適用要件はありませんし、財産をもらった人(受贈者)ごとに控除額を利用できます。

贈与税の対象期間は1月1日から12月31日までの1年間で計算するため、1年で複数回贈与を受けた場合は、合計金額で基礎控除額の判定を行ってください。

また110万円控除は受贈者単位であり、贈与者単位ではありません

両親からそれぞれ現金100万円の贈与があった場合、受贈者は合計200万円の贈与を受けたことになり、110万円を差し引いた90万円に対して贈与税が課されます。

ポイント2:贈与する時期をコントロールすることは可能なのか

贈与税の基礎控除額110万円は毎年利用できるため、一括でまとめて贈与を受けるよりも、年をまたいで贈与を受けた方が基礎控除額を効果的に活用できます。

現金1,000万円の贈与を一括で受ける場合、110万円差し引いた890万円が贈与税の課税対象です。

しかし1,000万円を毎年100万円、10年に分けて受け取った場合、1年間での贈与金額は100万円なので基礎控除以内に収まり、贈与税の課税対象金額はゼロになります。

ただし、最初から1,000万円をもらうことが決まっている場合、定期贈与の対象になる可能性がある点にはご注意ください

また贈与税の特例制度は、期間限定の制度が多数存在します。

たとえば「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税制度」は、平成25年4月1日から令和5年3月31日までの期間中の贈与が、最大1,500万円まで非課税になる制度です。

特例の適用期間が延長されることもありますが、延長がなければ制度は利用できなくなるため、教育資金の非課税制度を活用したい場合は、特例が存在する時期に贈与する必要があります。

ポイント3:贈与財産の種類・目的は決まっているのか

贈与税の特例制度には、「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税制度」のように、贈与財産の種類や目的が要件となっているものもあり、贈与税の配偶者控除(通称:おしどり贈与)は、住んでいる自宅(不動産)または自宅を購入するための資金(現金・預貯金)を対象とした制度です。

自宅の名義を配偶者に変更することを検討している方は、配偶者控除の適用も選択肢になります。

一方で、賃貸物件として利用している不動産を贈与する場合、配偶者控除は適用できませんので、別の制度や贈与以外の方法で名義変更することを考えなければいけません。

贈与税の節税だけを意識すると損するケースもある

贈与税の節税手段はいくつも存在しますので、贈与する目的や用途に応じて最適な手段を用いることが重要です。

ただ贈与税を意識するあまり、手続きの作業量が増加したり他の税金の負担が多くなれば、節税するためのコスパは悪くなります。

贈与税の節税は相続税の節税のために行うケースもありますが、相続財産が相続税の基礎控除額以内に収まるのであれば、生前に無理して財産を移動させる必要性は低いです。

そのため節税目的で贈与する際は、「いま贈与する必要があるのか?」との問いを自身に投げかけてから実施することをおすすめします。(執筆者:元税務署職員 平井 拓)

節税効果の高い「現金以外」の贈与財産2つ 110万以上でも結果的に無税となるケースも

贈与税は贈与財産が110万円までなら、非課税で子や孫に財産を渡すことが可能です。

贈与財産で最初に思いつくのはお金ですが、お金以外の財産で渡した方が、より高い節税効果を得られるケースもあります。

本記事では、節税効果が期待できる贈与財産と、贈与する際の注意点をご紹介します。

節税効果の高い「現金以外」の贈与財産2つ© マネーの達人 提供 節税効果の高い「現金以外」の贈与財産2つ

贈与財産は現金・預金がベターな選択

贈与税が非課税でも、使い道がない財産ならもらっても意味がありません

そのためオーソドックスですが、贈与財産として損をしないのは現金・預金の贈与です。

贈与税は渡した時点の財産価値を贈与税評価額として計算しますので、現金100万円を渡せば贈与税の課税対象金額は100万円です。

無税で贈与したい場合は、贈与金額を110万円以内のお金を渡せば良いのでわかりやすいですし、現金は受贈者(もらった人)の判断でいろいろな用途に利用できる汎用性も大きなメリットです。

今後価値が上がりそうな株式・金地金の贈与は高い節税効果を見込める

将来的に資産価値が上がる見込みの財産を前もって贈与すれば、現金・預金以上の節税効果を見込めます。

現金は時間が経過しても価値が変わることはありませんが、株式などは時間が経過することで価値は変動しますので、

贈与時点で評価額の「低い」財産を渡す

のがポイントです。

たとえば、

(1) 株価が上がることを期待できる株式を100万円分贈与し、

(2) 5年後に贈与した株価が3倍になれば、

(3) 300万円相当の贈与を無税で行えたことになります。

また金地金は世界情勢が不安定になると高騰する傾向にあり、2000年時点で1g1,000円程度だった金の価格は、2021年10月には1g7,000円と7倍に上昇しています。

今後さらに金地金の価値が高騰すると予想する場合、今のうちに贈与することで額面以上の財産を無税で贈与することも可能です。

不動産の贈与は他の税金にも注意すること

相場が高くなりそうな場所にある土地を贈与することも、賢い節税方法の1つです。

ただ不動産贈与の注意点として、不動産の名義変更する際は法務局に登録免許税、都道府県税として不動産取得税を支払うことになります。

贈与税が無税になる金額に調整しても、登録免許税や不動産取得税など他の税金が発生する可能性もありますので、贈与税以外の税金や贈与手続き時のコストも考慮する必要があります。

地価の上がりそうな土地を贈与しておく© マネーの達人 提供 地価の上がりそうな土地を贈与しておく

贈与者が一方的に財産を渡すことはできない

相続税対策として生前贈与する際は、贈与者と受贈者の同意のもとで贈与を行ってください。

贈与は、贈与者と受贈者が財産を渡す・もらうことについて、同意した場合に成立します。

贈与者が勝手に子や孫の名義で預金口座を作成してお金を振り込んだとしても、受贈者が口座の存在を知らなかったり、口座内のお金を自由に使用することができない場合、贈与はなかったものとして扱われる可能性もあります。

贈与行為が否認されると、その財産は相続財産に加えて相続税の計算をすることになるため、贈与者が勝手に名義変更をするのではなく、お互いが納得・理解した上で贈与してください。(執筆者:元税務署職員 平井 拓)

ペットも遺産を相続できる!? 負担付遺贈を検討!

大切な人を亡くした後、残された家族には膨大な量の手続が待っています。しかし手続を放置すると、過料(金銭を徴収する制裁)が生じるケースもあり、要注意です。

また国税庁によれば、2019年7月~2020年6月において、税務調査を受けた家庭の85.3%が修正となり、1件当たりの平均追徴課税(申告ミス等により追加で課税される税金)は、なんと641万円でした。税務署は「不慣れだったため、計算を間違えてしまった」という人でも容赦しません。

本連載では「身近な人が亡くなった後の全手続」を、実務の流れ・必要書類・税務面での注意点など含め、あますところなく解説します。著者は、相続専門税理士の橘慶太氏。税理士法人の代表でもあり、相続の相談実績は5000人を超えます。この度『ぶっちゃけ相続「手続大全」 相続専門YouTuber税理士が「亡くなった後の全手続」をとことん詳しく教えます!』を出版し(12月8日発売)、葬儀、年金、保険、名義変更、不動産、遺言書、認知症対策と、あらゆる観点から、相続手続のカンドコロを伝えています(イラスト:伊藤ハムスター)

ペットは遺産を相続できる?
 故人がペットを飼育していた場合、相続後に誰がそのペットのお世話をするのかを決める必要があります。他の財産と異なり、ペットには水もご飯も与え続け、トイレや散歩などのお世話も必要です。

 故人が1人暮らしをしていた場合には、親族が引き取る必要がありますが、ペット飼育が禁止されているマンションに住んでいる場合や、ペットアレルギーにより引き取ることができない場合も往々にしてあります。

「ペットに遺産を相続させてあげることはできないか?」とご相談を受けることがあります。残念ながら、法律上、ペットは「物」と扱われてしまうため、遺産を相続させることはできません。

 しかし、私も妻が父から相続した犬(ミニチュアダックス)と一緒に暮らしていますので、「ペットは家族」という気持ちはとてもよくわかります。

負担付遺贈とは?
 ペットに遺産を相続させることはできませんが、「ペットのお世話をし続けることを条件に、遺産を相続させる」と、条件つきの遺言書を作成し、相続人に世話を義務付けることは可能です。

 このような拘束力を持たせる遺言を、「負担付遺贈」といいます。しかし、遺言書だけでは、この約束がきちんと守られる保証がありません。どうすればいいのでしょうか?

「約束を守らせる」方法
 相続後に、約束が守られるかどうかを監督する係として、遺言執行者に弁護士などの法律家を就任させておくことをオススメします。

 遺言執行者は、もしも、相続した人がペットのお世話を放棄していると判断した場合には、裁判所に負担付遺贈の撤回を宣言し、執行者が指定した別の人に遺産を相続させることが可能です。

 このような遺言書を作成する場合は、弁護士や司法書士などの専門家に相談されることをオススメします。

 もし、遺言書等がなかった場合には、相続人の話し合いで引き受け先を決めることになりますが、ペットを引き継がない相続人は、引き継ぐ相続人に対して、これから発生する飼育代分の金銭を多めに相続させてあげましょう。

 ペットの飼育には多額のお金がかかります。特にペットが年齢を重ねると、獣医にお世話になる機会も増えます。ペットに社会保険は使えませんので、全額自己負担となります。故人が大事に育てたペットです。相続人みんなで大事に見守っていきましょう。

 また、現在ペットを飼われている方は、自分自身に万が一のことがあったときに、お世話を引き継いでくれる人を、必ずきちんと決めておきましょう。

 他の財産はどうとでもなりますが、ペットだけは引き継ぐ人がいないと、最悪の場合、殺処分されてしまうかもしれません。最優先課題として、取り組むようにしましょう。

(本原稿は、橘慶太著『ぶっちゃけ相続「手続大全」ーー相続専門YouTuber税理士が「亡くなった後の全手続」をとことん詳しく教えます!』を編集・抜粋したものです)

実家の相続、「預金いくらあるの?」とは聞けない。どうする?

実家の相続、「預金いくらあるの?」とは聞けない。どうする?© ダイヤモンド・オンライン 提供 実家の相続、「預金いくらあるの?」とは聞けない。どうする?

「相続争いは、金持ちだけの話ではありません。『普通の家庭』が一番危険です」。知られざる相続のリアルに踏み込み、相続本としては異例のヒット作となった『ぶっちゃけ相続』。著者は、相談実績5000人超を誇る相続専門税理士の橘慶太氏。「タンス預金は税務署にバレる!」「贈与税がかからない4つの特例」「専業主婦のヘソクリは税務調査で大問題!?」「1億6000万円の節税ノウハウ」など、相続にまつわる法律や税金の基礎知識から、相続争いの裁判例や税務調査の勘所まで学ぶことができる。(相続手続に特化した新刊『ぶっちゃけ相続「手続大全」』は12月8日発売)。

今、「相続の最前線」で何が起きているのか。連載最終回となる本日は、「実家の相続」に焦点を当てる。(取材・構成/前田浩弥、撮影/疋田千里)

「相続の話」は、早ければ早いほうがいい

――「実家の相続」というテーマでお話を伺います。橘先生はもう、親御さんと相続のお話はしていますか?

橘:はい。私には兄がいるのですが、「もしも相続が起きたときには、私はあまり相続しなくていいから、兄に全部相続してくれ」と伝えています。

――それは書面で残しているのですか? それとも口頭ですか?

橘:口頭で、私から親に意向を伝えています。

――相続について話し合う適切なタイミングはあるのでしょうか。「あまり早すぎるのも、なんだかなぁ」と感じてしまうのですが。

橘:いや、早ければ早いに越したことはないですよ。早めに一度でも話題に出しておくと、「相続の話」に対する耐性ができるじゃないですか。状況はコロコロ変わるにしても、「変わったらまた、そのときに話せばいい」と思える。大事な話ですから、早めに慣れておいたほうがいいと思うんです。

初めての仕事での体験談

橘:私が税理士として、初めて上司のサポートなく「ひとり」で担当したお客さまのことは忘れられません。お父さまが亡くなり、お母さまと子ども3人が相続人となったのですが、お子さんのうち2人が、お父さまと非常に仲が悪かったらしいんですね。

――どうなったんですか?

橘:そこでお母さまと子ども1人が財産を相続し、子ども2人は相続を放棄するという手続きをとって、一次相続・二次相続の計算をする。これが私にとって、税理士として独り立ちした最初の仕事でした。

――うまくいきましたか?

橘:まだ知識も経験も浅かった私が、この仕事をスムーズに終えることができたのは、このご家族が早くから相続についてのコンセンサスをとってくれていたからです。早めに相続について話すことが、結果的には相続トラブルを防ぐことにもつながるんですよ。

――なるほど。ただ、子どもとしてはやはり切り出しづらいのが本音です……。

「預金いくらあるの?」とは聞きにくい。どうする?

橘:きっと世の中の大多数の人がそうだと思います。子どものほうから親に対して「相続対策をしてくれ」「財産いくら持ってるの?」「預金いくらあるの?」とはなかなか聞きづらい。だからできれば、親御さんのほうから切り出してくれるのが理想ですね。

――それが一番助かります、、、。

橘:実は私の元にも、お子さん世代の方から「相続対策をするよう、橘先生から私の親に勧めてください!」なんて相談がよくあるんですよ。ただ、それはできないんですね。だからそんなときは、「最近こんな本が売れているらしいんだけど」と、『ぶっちゃけ相続』をそっと手渡してもらうのがいいですかね(笑)

――他に何かコツがあればぜひ、、、!

橘:初めからいきなり、ガチガチに話し合おうとしないのもコツでしょうか。たとえば、「万が一のことが両親に起こったときには、兄弟で平等に、均等に分けてほしい」「配分はお父さんお母さんに任せるよ」など、子どもとしての意向を伝えるだけでも最初は十分だと思いますよ。

――なるほど! やってみます!

橘:では最後に、円満相続の秘訣を3つお話しします。

秘訣① 家族会議

橘:1つ目は「家族会議で相続後の方針を明確にする」です。

――やっぱり話し合ったほうがいいんですね。

橘:相続の準備をきっちり行っていた方に対して家族は、「最後の最後まで、本当にしっかりした人でした」と尊敬の念を持たれます。しかし、相続の準備をまったく行わず、トラブルが発生してしまったら、「生前に対策はできたはずなのに……」と、後悔の念を持たれてしまうかもしれません。

――確かにそうですね。

橘:円満な相続を実現させるために行う家族会議は、決して縁起の悪いものではありません。子どもから親に相続の話を切り出すのは、とても勇気がいることです。だからできれば、親の立場から相続の話を切り出し、家族会議をリードしてあげてください。

――なるほど! 2つ目のコツは何でしょうか?

秘訣② 現状分析

橘:次は「専門家に現状分析を依頼し、問題点を把握する」です。自分が死んだ後、「①遺産をどのように分けるのか、②相続税はどれくらい発生するのか、③当面の生活に困らないだけの資金は確保できるか」といった課題を予め把握する作業を指します。相続対策の人間ドックだと考えてください。

――なるほど。「この財産には要注意」などのポイントはありますか?

橘:預金や投資信託などは金額を把握することは難しくありませんが、不動産の評価額を算出するのは、少しハードルが高いかもしれません。多少なりとも費用が発生しても、現状分析と問題点の把握については、各専門家に依頼することをオススメします。円満相続実現の大きな一歩につながります。

――なるほど!

秘訣③ 秘密を作らない

橘:最後は「③相続人の間での秘密は極力避ける」です。よくあるケースとして「あなたに生前贈与をするけど、他の兄弟に言うと喧嘩になるから秘密にしておきなさい」と、他の相続人には秘密で生前贈与をする方がいます。他にも、特定の相続人を生命保険の受取人に指定し、そのことを他の相続人に秘密にしていることもあります。

――「言わなきゃバレない」と思っている人が多そうですね。

橘:後々になって発覚することがよくあります。特に、相続税の申告が必要になる方の場合、発覚する可能性は格段にあがります。相続税の申告書には、相続が発生する前3年以内に行われた生前贈与や、生命保険金の受取人とその金額をすべて記載しなければいけません。こういったことを知らずに、相続人間で生前贈与や生命保険の存在を秘密にしておくと、実際に相続が発生してから発覚してしまうのです。

――これは隠せませんね、、、。

橘:もし、特定の相続人に生前贈与などをするのであれば、先に紹介した家族会議の場で伝えておくことをオススメします。もしも、そのことに異を唱える家族が現れたとしても、相続が発生する前に問題が表面化できたことをプラスと捉えるべきです。

――それはなぜですか?

橘:相続発生後に問題が表面化するよりも、相続発生前のほうが、親の考えをしっかりと共有できる分、解決は容易だからです。いずれにしても、相続人間の秘密は極力避け、透明性の高い相続対策を目指していくことが理想ですね。

――ありがとうございました!

制度が変わる前に実践したい「相続税を減らせる9つのテクニック」

相続税を減らせる主な制度とそのやり方© マネーポストWEB 提供 相続税を減らせる主な制度とそのやり方

 ルール改正が相次ぐ相続税。そのルールをしっかり把握して、税額を賢く減らしたいところだ。2015年の制度変更で課税強化が進み、相続財産が「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」より多いと相続税が課されるようになった。妻と子2人が相続人なら、相続財産が4800万円を超えると課税対象になる。逆に言えば、資産をそれより圧縮できれば、「相続税はゼロ」で済むのだ。

「年末までに生前贈与をする方法があります」。そう話すのは円満相続税理士法人代表で税理士の橘慶太氏だ。

 年間110万円以下であれば贈与税が非課税となる仕組みを利用して、将来の相続人となる子供らに先に財産を渡して資産を圧縮するのである。

「ただし、来年度の税制改正で110万円の非課税贈与の撤廃が予想されます。新制度のスタートは早くて再来年と考えられますが、残されたチャンスを最大限活かすために、相続税対策が必要な人はこの年末までと来年の2回にわたり、子供や子供の配偶者、孫などに積極的に110万円贈与を行ないたい」(橘氏)

 図の通り、住宅取得等資金の一括贈与や教育資金の一括贈与など贈与税が一定額まで非課税となる特例もあるが、期間限定の制度なので早めに検討したい。110万円以下の非課税贈与なら確定申告は不要だが、一括贈与の特例制度は確定申告などの手続きが必要だ。

「不動産について言えば、自宅の相続には様々な特例があり、なかでも小規模宅地等の特例は減税効果が大きい。同居する親が亡くなった際、自宅の土地(330平米まで)の相続税評価額が8割減になる。相続税の申告の際には、同居していたと証明できる住民票の写しなどを提出します」(橘氏)

 結婚してから20年経過した夫婦間であれば、贈与税の配偶者特例(おしどり贈与)によって年110万円の非課税枠とは別に自宅の権利を2000万円分、非課税で贈与できる制度もある。

「ただし、そもそも夫婦間の相続であれば、配偶者の税額軽減の制度によって、法定相続分(妻と子が相続人なら相続財産の2分の1)ないし1億6000万円までは無税で相続できます。生前に不動産を贈与すると、不動産取得税や登録免許税などがかかり、かえって税金を多く払わなくてはならないこともあるので注意してください」(橘氏)

 別掲の表では相続税を減らせるテクニック9選を紹介した。課税の“網”は様々なところに張り巡らされている。制度を理解することが、「税金ゼロ」を目指す生き方につながる。

※週刊ポスト2021年12月10日号

まさかの追徴課税…相続の落とし穴「名義預金」って何?

大事なことだけれど、どうしても敬遠しがちな“相続”の話。「ウチには継ぐ財産なんてないから大丈夫」と思っていても、意外なところに落とし穴があるようです。

※2021年11月、現行法令を確認し内容を更新しています。

まさかウチが申告漏れを指摘されるなんて

「まさか、自分たちが税務署から相続税の申告漏れを指摘されるとは思いませんでした」

そう話すのは、昨年に父親が亡くなり、相続を経験した山田勇一さん(仮名)。常々「遺産はない」と聞かされていたため、生前ご家族で相続について話すことはなかったそうです。それが相続税の申告漏れとは、どういうことなのでしょうか。

山田さん曰く、父親は「真面目で会社一筋なサラリーマン」だったそうです。65歳の定年まで1社に勤め上げ、退職してからは専業主婦だった母親と2人、退職金と年金で生活していました。山田さんは妹との2人兄妹。2人ともすでに結婚して家を離れていたので、ご両親は夫婦で旅行などに出かけ、リタイア後の生活を楽しんでいました。

生前、父親は「俺たちの資産は当てにするな、全部使い切って死ぬから」と、たびたび話していたそうです。山田さんも、遺産として残るのは自宅マンションくらいだから相続税はないだろうと思っていたとか。

こっそり残してくれていた遺産

相続税とは、資産を相続する際に納めなければならない税金ですが、相続する資産すべてに課税されるわけではありません。「基礎控除額」というものがあり、それを超過した分にのみ課税されます。また、お墓や公益法人へ寄附した財産などの相続税がかからない財産や、葬儀費用や住宅ローン残高などの債務としてマイナスできる財産もあります。

基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人数」で算出されます。山田さんのケースだと、法定相続人は配偶者である母親、山田さん、妹の3人となるので、基礎控除額は4,800万円。よって、課税対象となる資産合計額がこの金額を下回った場合は、相続税は納めなくてよいことになります。

しかし父親が亡くなり、実際に遺産の整理を始めてみると、まったく知らなかった資産が出てきました。山田さんと妹、それぞれの名義で1,000万円ずつの普通預金です。父親が2人に内緒で残していた預金。遺産はないと言いながらも、2人のためにわずかでもと、生前こっそり残されていたものでした。

相続の盲点「名義預金」とは?

ここで、山田さんの父親が残した財産を整理してみましょう。

(以下引用)

(1)現金・預貯金 1,000万円

(2)自宅マンション 3,000万円

(3)死亡保険金 1,000万円

(4)子供名義の預金 2,000万円(1,000万円×2名)

(以上引用)

(3)死亡保険金1,000万円の受取人は配偶者である母親となっていました。生命保険は「法定相続人数×500万円」までが非課税なので、母親が1,000万円全額を受け取ってもその保険金には課税されません。その代わり、母親が葬儀費用として200万円を負担することになりました。

そして(4)子供名義の預金です。山田さんと妹は、この2,000万円についてはすでに2人の名義となっていたため「生前贈与」されたものと考えました。また、この預金口座が作られ現金が預け入れられたのも今から10年前であることがわかり、贈与税の時効も成立していると判断したのです。

以上のことから山田さんは、相続財産は(1)現金・預貯金、(2)自宅マンションの合計4,000万円から葬儀費用200万円を差し引いた3,800万円であるため、基礎控除範囲内として相続税の申告及び納税を行いませんでした。

しかし後日の税務調査で、この2,000万円が「名義預金=父親が子供の名義を借りて預金をしたもの」と判断され、相続発生時に実質的には父親の財産だったとして相続税の対象財産に加算されてしまったのです。

結果、相続財産は5,800万円、基礎控除額を超える1,000万円が課税される遺産総額であると税務署から指摘を受けることになりました。

そして山田さんご家族は、合計100万円の相続税に加え、法定納期限の翌日から納付日までの延滞税と、申告を行っていなかったことへのペナルティとして無申告加算税も納付しなければなりませんでした。

「生前贈与」と認められるためには?

今回のケースについて大和証券自由が丘支店の相続コンサルタント南上沙友理さんに話を聞きました。

(以下引用)

南上さん:今回のケースは、お父様が残された預金口座の存在を、ご遺族の方がご存じなかったことが原因と考えられます。贈与とは民法上の契約にあたるため、贈る方と贈られる方どちらかが知らない場合は成立しません。「名義預金」とみなされないためには、以下のような贈与の証拠を残しておくことが大切です。

__(1)両者の署名と日付入りの贈与契約書を作成する。

(2)受贈者が口座の管理をし、登録印鑑も贈与者と異なるものを使う。

(3)期限内に贈与税の申告をし、贈与税を支払う。__

相続に関する税務調査で、名義預金の申告漏れを指摘されるケースはとても多くなっています。国税庁の統計によると、平成28事務年度に申告漏れと判断された財産3,295億円のうち、約32.5%が現金・預貯金となり、特に名義預金についての指摘が多いとされています。

(以上引用)

「生前にもうちょっと話しておけばよかったですね。そうすれば感謝の言葉も伝えられたかもしれないです」(山田さん)

先祖を祀るお盆の時期、話しにくい話題ですが、ちょっと家族で話しておくと、将来の不安が少しは軽減されるのではないでしょうか。

※2021年11月、現行法令を確認し内容を更新しています。

相続ルール変更を前に「急いで生前贈与」か「普通に相続」どちらが正解?

亡くなる15年前の贈与分まで課税対象になる可能性も© マネーポストWEB 提供 亡くなる15年前の贈与分まで課税対象になる可能性も

 親や配偶者が亡くなって遺産を受け取るとき、または自分が亡くなって配偶者や子供に遺産を残すとき──誰もがいつか必ず直面する相続のルールが、大きく変わろうとしている。

 2020年12月、与党税制調査会の「令和3年度税制改正大綱」にて、「格差固定防止のため、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直す」とされた。これが何を意味するのか。相続実務士で夢相続代表の曽根恵子さんが解説する。

「相続税は亡くなった後に課せられるのに対し、贈与税は生前に贈与した場合にかかる税金です。現在『贈与』とされているものにはさまざまな優遇制度がありますが、それらをすべて『相続』とみなし、贈与税を実質的に廃止または大幅に縮小するということです」

15年前に贈与したものも相続税の対象に?

 現在「教育資金として1500万円まで」「結婚資金として1000万円まで」など、贈与税の非課税枠は多い。なかでも「年間110万円まで」が非課税になる暦年課税制度は相続税対策の基本といわれている。だが、これらもすべて廃止または縮小される見込みだ。

「実は現行の暦年課税でも、亡くなる3年前以内に贈与した分は相続税の対象になります。ところが、その課税対象を10~15年以内にまで広げようとする検討がされているのです」(曽根さん・以下同)

 となると、仮に60才から80才までの20年間、コツコツ生前贈与してきた場合、65才以降の生前贈与はすべて相続とみなされ、課税されるということだ。もはや、子や孫に財産を渡したいなら、相続税を納めなければ許さないと言っているようなものだ。しかも、同大綱には「相続時精算課税制度」は残される見込みだとある。

「これは、60才以上の父母または祖父母から20才以上の子や孫に対して一括贈与する際、2500万円までは非課税になりますが、贈与した父母や祖父母が亡くなると、とたんに“相続した”とみなされ、課税される制度。一見、節税のように見えますが、実際は相続税の先送りなのです」

 こうした制度の目的は格差固定防止、つまり“貧富の格差を解消するため、お金持ちに有利な税制を見直すこと”だとされている。しかし、そのために縮小されようとしている暦年贈与や教育資金、結婚・子育て資金の贈与は、決してお金持ちだけが取り組んできた相続税対策ではないはずだ。そこには、できるだけ多くの国民から税金をかき集めようとする考えが見え隠れする。

「相続税逃れをなるべく阻止したいという国の思惑が透けて見えます。国の税収も厳しいので、あるところから取れるよう課税範囲を拡大しようという考えでしょう」

 この税制改正がいつ施行されるかは、まだ誰にもわからない。だが、近い将来、贈与したつもりのお金に相続税が課せられるようになることは間違いなさそうだ。

「時期未定」だからこそ早めの生前贈与を

 贈与税は廃止または縮小に向かって進んでいる一方、相続税に関する制度が変更される見込みはなさそうだ。

 現在、相続税の非課税枠は「3000万円+600万円×相続人の数」。妻と子供2人なら、4800万円までは相続税はかからない。特に妻は「配偶者の税額軽減」によって、相続財産1億6000万円まで(または法定相続割合以下)は相続税がかからない特例がある。実は、ほとんどの場合、節税メリットは相続の方が大きいのだ。

「だったら、いまから焦って生前贈与するより、相続まで待った方が得」と思うかもしれない。しかし、生前贈与したものを亡くなる何年前までさかのぼって課税するかは、まだ明確には決まっていない。5年前までしかさかのぼらないかもしれないし、そもそも改正税制の施行が2022年に必ず行われるとも限らない。「もう80代に差し掛かるから、急いで贈与してもムダ」などと諦めるのは早計だ。

「不動産など、評価額が高ければ高いほど、課せられる税金の額も大きくなるのは間違いないでしょう。何より、少しずつ生前贈与しておいた方が、相続争いなどもなく、受け取る側のメリットが多い。現行の制度を使って、計画的に評価を下げながら次に渡してほしい。現状できることはしっかりしておけば、必ず成果はあるはずです」

 残したい財産があるなら、いますぐにでも、少しずつでも生前贈与を。そのときに後悔しないよう、準備は怠らないようにしたい。

※女性セブン2021年12月9日号

生前贈与の税制優遇廃止は避けられない 節税目的なら今年中の駆け込み贈与が吉か

 昨年12月、自民・公明両党による税制調査会において「令和3年度税制改正の大綱」が発表された。それは、相続税と贈与税を一体化し、贈与税を実質的に廃止するというものだ。

 贈与税は財産が多く贈与額が大きい人ほど税金も増えるが、「年間110万円までは非課税」「教育資金として1500万円までなら非課税」などの優遇が多いため、相続税対策として贈与するケースは多い。この「贈与」をすべて「相続」とみなし、相続税の対象にするということだ。貧富の格差を解消するべく、お金持ちに有利な税制を見直すためという側面もあるが、「できるだけ多くの国民から税金を巻き上げたい」という考えが見え隠れする。

 教育資金や結婚・子育て資金として子や孫に贈与する人は、単なる節税目的ではなく、“できるだけ多くお金を渡してやりたい”という真心からのはずだ。「格差の是正」を大義名分に、国の税収アップのために、親心さえ踏みにじられなければならなくなるとは。相続実務士で夢相続代表の曽根恵子さんが解説する。

「確かに、もともと裕福な人が非課税枠の中で贈与を進めると、格差はさらに広がるので、格差拡大の歯止めにはなるかもしれません。しかし、生前贈与を利用するのは富裕層に限った話ではなく、すべての国民にかかわります。

 まだ正式な施行時期は決まっていませんが、すでに検討のテーブルには載っている。残念ながら、ここから覆ることはなく、徐々に実現していくでしょう」

 まだまだ終わらないコロナ禍に首相交代、衆議院選挙……表立ったゴタゴタの裏では「金持ち優遇の是正」を掲げて、全国民から税金を巻き上げる算段が動いているのだ。少なくとも、来年1月からの通常国会などで「相続税・贈与税の一体化」が進めば、来年から再来年にかけて、贈与税の廃止は免れないと考えられる。

生前贈与は今年のうちに

 曽根さんもファイナンシャルプランナーの明石久美さんも、なるべく早く手を打っておくしかないと、口をそろえる。

「そもそも、暦年贈与を3年前までさかのぼって課税するということは、“相続税を払いたくないがために、慌てて贈与するのは許さない”ということです。贈与税がどうなるかわからない以上、なるべく早く生前贈与を始めておかないと、せっかく贈与した意味がなくなるかもしれない」

 渡したい財産があるのにまだ生前贈与していないなら、今年のうちに始めておかないと、損することになるかもしれない。というのも、早ければ来年か再来年の年度末にかけて、税制が変わる可能性がささやかれているからだ。

「現在でも、亡くなったら、そこから3年前までに贈与した分は相続税の対象になります。できるだけ早く生前贈与しておくに越したことはありません。この先は、いま以上に国民に相続税を支払わせる制度に変わるはず。年間110万円の枠や教育資金など、現在非課税とされている枠を使って、元気なうちに生前贈与しておくのが得策です」(曽根さん)

 相続税対策の定番が失われかねない中、一日でも早く駆け込むのが吉ということか。

※女性セブン2020年9月30日・10月7日号

「二世帯住宅」「アパート経営」 相続でよくある失敗とリスク回避法

  

相続税対策を失敗しないためには

写真1枚

 相続には様々な“特例”があり、それを活用した相続税対策も多いが、注意が必要だ。たとえば、親と同居する子が自宅を相続する場合、「小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)」が適用され、土地(330平方メートル以内)の相続税評価額が8割減となる。


【図解】死ぬ前10年から死後5年までにやるべきことはこれだけある! 失敗しないための相続準備36

 

その特例を使おうと、父親の土地に二世帯住宅を建て、1階を父親、2階を長男の名義としたが、父親の死後、「同居」とは認められず、特例の適用を受けられなかった──。


 相続専門の税理士法人レディング代表の木下勇人税理士が解説する。


「これはよくある失敗で、二世帯住宅が階ごとの区分所有となっていると、“同じマンションの別室に住んでいる”のと同様に解釈されてしまい、原則として同居とみなされない。


 建物を区分所有登記にするのではなく、親と長男の2分の1ずつの共有名義にすると、特例が適用できる可能性が高まります。ただ、登記変更は土地家屋調査士などに依頼する必要があり、手間もコストもかかるので、それに見合うかは要検討です」


 小規模宅地等の特例は、節税効果が高いので活用したくなるが、かえって損をするリスクもある。

 年老いた母親は、相続税対策でアパートを経営していた。賃貸アパートが建つ「貸付事業用宅地等」は相続の際に小規模宅地等の特例が適用され、200平方メートルまでの敷地の相続税評価額が最大50%削減されるからだ(ただし、特定居住用宅地等には制限あり)。


 ところが、建てて10年後には空き部屋だらけに──。


「とくに地方ではこうした相続税対策の事例が目立ちます。代々受け継いできた土地があって、毎年の固定資産税ばかりがかさむといった場合、業者から勧められるままにアパート経営に手を出してしまうことがある。


ただ、地方では需要が少ないため、築10年を超えたあたりから経営が厳しくなりがちです。自己所有の土地に借金をしてアパートを建てていれば、たしかに相続財産は圧縮されて相続税は安くなります。小規模宅地等の特例を使うなどして、相続税がゼロになることもあるでしょう。


 ただ、空室だらけのアパートは相続人にとってマイナスの資産でしかない。売却しようにも金額を相当下げなければ買い手はなかなか見つかりません」(木下氏)“負の遺産”を残すようでは、対策は失敗である。


「近く住んだ方が安心」我が子に言われて自宅を売ったら“家政婦状態”に

 人生の最大の資産である自宅を巡る判断には、慎重さが求められる。高齢の親に対して子供が実家の処分や近居を提案してきても、「私たち(親)のためを思って言ってくれている」と勘違いしてはいけないケースがある。埼玉県に住む60代男性がこう嘆く。

「『近くに住めば面倒を見やすいから』と言われ、住み慣れた一戸建てを手放し、娘夫婦の家の近くの小さなマンションに引っ越しました。ところが面倒を見てくれるどころか、孫の幼稚園の送り迎えや入浴、おやつや夕食の準備まで私と妻に任せきり。共働きの娘夫婦は、はじめから私たちをアテにしていたようです。

 最初は孫の相手をするのが楽しかったけれど、いまはもうクタクタ。妻は“これじゃ家政婦と一緒”とボヤいています」

 東京都在住の70代男性も、静岡の自宅を処分したことを悔やむ毎日だ。

「ずっと暮らしてきた愛着のある土地で、退職後は広々とした庭で畑仕事をしたり、たまに旧友とお酒を飲んだりして悠々自適な生活を送っていました。でも息子に、『離れて暮らしていたら、いざという時に困る』『もし病気になったら、こっちには大きな病院もない』と説得され、3年前に息子の家からほど近い場所にアパートを借りて引っ越してきました」

 家を売ることに不安もあったが、息子に「残しても、古くなって価値が下がるだけ。残された俺たちが処分に困る」と懇々と説得され、その時は納得し実家を売却した。

 周囲には「息子さんたちの近くにいられるなんて、いいねぇ」と羨ましがられたが、慣れない土地での生活は辛かった。

「とにかく寂しい。知り合いはいないし、電車の乗り換えもわけがわからないから、外出もままならない。『近いからすぐに遊びに行ける』と言っていた息子家族も、週末ごとに来てくれたのは最初の1~2か月だけ。最近では、電話しても『忙しい』と冷たくあしらわれる始末。でも、もう戻れる家はない……」(同前)

 いまでは、鬱陶しさも感じていた地元の親戚付き合いさえ、懐かしいという。ファイナンシャルプランナーの黒田尚子氏は、子供の“呼び寄せ”に応じるかは、慎重に判断したほうがよいと話す。

「子供に『世話をするから』と言われたら、親は断わりにくい。しかし、引っ越しが手配できるくらいの年齢だからまだ元気な状態であることが多く、結局は孫の面倒などを押しつけられてしまう。

 また、生活環境が変わり外出の機会や知人と会話することが減ると、認知症になってしまうリスクもある。子供には子供の生活があるので、近くに住んだからといって頻繁に会えるわけではなく、実際には離れていた時とあまり変わらなかったりする。正直、近居するならお試し期間を設けることをおすすめします」

 その一方、自宅を改修しながら住み続けようとした場合も、子供の意向を聞いていると話が進まなくなる。福岡県在住の70代男性が肩を落とす。

「老後に備えて、300万円かけてバリアフリーにリフォームしました。自分たち夫婦のためだけでなく、“家を売ってお金にして遺すより、家のまま遺すほうが相続税対策になる”と聞いて、子供たちのためにもなると考えていました。ところが、長男は『お父さんたちが死んだら誰も住まないんだから、ムダなことにお金を使わないで』と激怒。親の老後より遺産が減ることが心配なのかと、愕然としましたよ」

 税理士の山本宏氏によればこうしたケースは珍しくないという。

「この男性の言うように、どのみちリフォームが必要な古い自宅なのであれば、親の生前に改修したほうが、現金として残すよりも遺産額を圧縮できるので、相続税対策として有効です。親が熱心に相続税対策セミナーに出席し、子供のためにリフォームする話はよくあります。しかし、相続後に売却することを考えると、リフォームした後でも売却金額はあまり変わらない。だから、実家がいらない子供からすると“余計なことしやがって”ということになってしまう」

 必ずしも子供の“言い分”を真に受ける必要はないと、山本氏は続ける。

「自分のQOL(クオリティ・オブ・ライフ=生活の質)を下げてまで、子供の要求に応じることはない。子供の生活ではなく、自分たち夫婦の人生を最優先すべきです」

相続で必要な手続きの数々 相続税納付は現金が原則、延滞税に注意

相続税の納付まで…親が死んだ後に必要な手続きの数々


その煩雑な手続きから事前にあまり考えたくないという人も多いのが相続の問題。生前に親と話しておければいいが、切り出し難いテーマでもある。


【表】葬儀社へ連絡、死亡診断書をもらうなど、親が死んだ後に必要な手続き

 では実際の手続きにはどういったものがあるのか。相続の手順でまず必要な遺言書を探す作業を、事前に確認しておきたい。公正証書遺言がある場合は公証役場で遺言書の有無を探してもらえるが、親子の話し合いで自筆証書遺言を作成済みの場合は、保管場所が自宅や貸金庫などか、法務局かでその後の対応が分かれる。


 2020年7月からは自筆証書遺言を法務局に預ける制度が始まっている。これを利用すると家庭裁判所で遺言書の検認をしてもらう手間を省くことができる。実際の相続手続きに入ると、まず相続人の確認を行なうが、続いて欠かせないのが「法定相続情報一覧図」の作成だ。これは2017年5月に導入された法定相続情報証明制度の利用時に使う書類。書式は法務局のホームページで入手できる。


 まず、被相続人(故人)の最後の住所や本籍、生年月日や死亡年月日を記入した「法定相続情報」を作成。相続人全員の氏名や生年月日などを加えて、一覧図にする。この図と被相続人や相続人全員の戸籍謄本などを法務局に提出すると、「法定相続情報一覧図の写し」が交付される。


 これを用意しておけば、金融機関や役所で手続きが必要だった何十通もの戸籍関係の書類を写し1枚で済ませることができる。相続財産の確認が済んだら、親に負債がないかどうか改めて確認したい。生前に財産目録を作る際、親に借金の有無も記載してもらっておく。


借金が多い場合は親の居住地の家庭裁判所から相続放棄申述書の書式を取り寄せ作成・提出する。親の死後3か月を過ぎると相続放棄できず、借金を相続人が肩代わりしなければいけなくなるので注意が必要だ。遺言書がない場合は相続人全員の協議で遺産分割協議書を作成し、相続税の申告・納付を行なう。


相続税は現金での納付が原則で、1日でも期限を過ぎると延滞税が発生するので気を付けたい。親子で話し合う場を設けるタイミングが早いか遅いかで、「いずれ訪れるその時」の明暗が分かれる

※週刊ポスト2021年4月16・23日号

実家を売却して相続 兄弟半分ずつのはずが「弟にだけ相続税」の悲劇

兄弟姉妹が遺産を巡って骨肉の争いを繰り広げる──ドラマや映画の中の話と思う人も多いだろうが、家庭裁判所における遺産分割事件の件数は右肩上がりに増えており、今や身近な問題となりつつある。特に、トラブルの火種となりやすいのが「不動産」を所有していた場合。亡くなった親や夫の自宅に住み続けたい人と、家を売ってお金にしたい人がいれば、どうしても揉めることになるのだ。


【表】法改正で相続税の課税対象者が3年で倍増 相続税の計算方法は?

 京都府に住む野村さん(仮名)は、3人の兄を持つ4人きょうだいの妹。父親が亡くなった後、残された不動産を4人の共有名義にして相続したが、3人の兄たちが亡くなり、親族は妹である野村さんと兄たちの嫁だけになった。相続した家に住んでいた長男の嫁は「ここに住み続けたい」と主張したが、離れて暮らす次男と三男の嫁は「早く売ってお金にして分けてほしい」と揉めているという。


「家と土地を合わせると、評価額は1億円近くにもなるそうです。兄が生きているうちに売ってお金にしてしまえばよかったと税理士から聞き、悔やまれてなりません。兄嫁たちと私はもはや血のつながらない他人。円満に解決できるとは思えず、途方に暮れています」(野村さん)


 都内の高級住宅地として知られる世田谷区では、こんなケースもあった。母親が亡くなって、実家の「路線価」は5000万円とされた。子供は兄と弟の2人きょうだいで、どちらも自分の持ち家があったので「実家は売却して分けよう」という話になった。弟は「5000万円で売れるなら半分の2500万円もらえればいいから、兄さんがやっておいて」とのこと。


 ところが、実際には路線価の2倍の1億円で売れたので、弟は当然「だったら5000万円欲しい」と言い出し、5000万円ずつ相続することになった。円満に思える話だが、そこでは終わらない。『トラブル事例で学ぶ失敗しない相続対策』著者で相続コンサルタントの吉澤諭さんが話す。


「相続税申告書の上では、兄が相続したのはあくまで5000万円の相続税評価額の家だけ。しかし、遺産分割協議は、話し合われたときの時価で決まります。家が1億円で売れて、約束通り弟に5000万円払ったことで、書類の上では兄は“相続した5000万円をまるごと弟に渡した”ことになり、相続税はゼロ。本当は兄も5000万円を手にしているのに、弟にだけ、相続税がかかってしまいました。


売ってから分けるのではなく、はじめから2人の共有の財産として売って、“売れた額の半分ずつ”と決めておけばよかったのです」事前にやっておけばよかったと思っても、もう遅い。相続のトラブルはそんなケースであふれているようだ。

子・孫への贈与が危ない!こんな落とし穴が!教育・結婚・子育て資金…

 総務省の調べによると、日本の家計金融資産の6割強は世帯主年齢が60歳以上の家庭が保有しているという。反面、世帯主の年齢が20代の場合、約17%の家庭が貯蓄100万円未満という調査もある。

 この世代間格差を埋めるために、政府は積極的に「贈与の非課税」制度の拡充を図っている。贈与とは、簡単にいえば「お金をあげます」「もらいます」という行為のことで、お金を持っている世代から所得の低い若者世代に、金融資産を移転してもらおうという狙いだ。

 そのため、通常は多額のお金をもらうと贈与税がかかるが、今は一定の条件を満たせば非課税となる制度が増えている。

 例えば、「祖父母などから教育資金の一括贈与を受けた場合」では1500万円まで、「父母などから結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合」では1000万円まで非課税となる制度が、時限付きで設けられている。

 また、2016年から始まった「ジュニアNISA(未成年者少額投資非課税制度)」では年間80万円、最大400万円まで非課税で投資できる。ジュニアNISAは20歳未満が対象で、親や祖父母が資金を拠出することも可能だ。そもそも、収入のない子供の場合は運用資金を捻出できるわけがないため、これも実質的な非課税の贈与といえるだろう。

 13年に1人当たり1500万円まで非課税になる教育資金の一括贈与制度がスタートした際、筆者は「わざわざ、こんな制度を利用する人がいるのか?」と疑問だったが、実際は1年で6万件の利用があったと聞いて驚いた。「世の中にお金持ちが多い」ということにではなく、「わざわざ金融機関に『大金を持っている』と知らせるような、人の善いお金持ちがたくさんいる」ということに、である。

●口座開設で得をするのは国や金融機関?

 そもそも、この制度を利用するには、信託銀行などの金融機関に専用の口座を開く必要がある。贈与先の相手名で口座がつくられ、そこに入金するのだが、何が「教育資金」となるかについては、細かく規定がある。

 また、子供や孫がお小遣い代わりに好き勝手に引き出せるわけではない。それなら、ランドセルでも学習机でも、塾や留学の費用にしても、祖父母や親が直接支払ったほうが手間がかからず、自由度も高いといえるだろう。

 15年4月から始まった結婚・子育て資金の一括贈与制度は、1000万円(結婚関係は300万円)まで非課税になるものだが、これについても不思議でならない。筆者が知る限り、「親が出してあげた子供の結婚式代に贈与税がかかった」という話は聞いたことがない。

 それなら、わざわざ口座をつくってまで、この制度を利用するメリットがあるのか? おそらく、メリットは本人たちより国や金融機関のほうにあるのだろう。

 金融機関にとってみれば、お金持ちがわざわざ向こうから集まってきてくれるようなもので、ほかの金融サービスを売り込む機会にもなる。

 非課税口座を開いたという情報は税務署に伝わるので、国にとっては「ここに資産家がいますよ」というお知らせも同然だ。これに、将来的にはマイナンバー(個人番号)の紐づけも済めば完璧というところだろう。

●年間110万円までの贈与にも落とし穴

 より気軽に利用できるのが「暦年贈与」だ。「年間110万円までは、贈与しても非課税」という話を聞いたことがある人も多いだろう。

 ある人が贈与でお金をもらった場合、年間に受け取った金額から110万円を差し引き(基礎控除)、残った金額に贈与税がかかる。110万円までの贈与なら非課税となるのは、そのためだ。この枠を利用して、毎年または時々贈与することを、暦年贈与という。

 この場合、贈与の相手は子供や孫などの直系親族でなくてもよく、配偶者や子供の嫁・婿でもかまわない。この範囲内で、学資保険の保険料を拠出するという方法もある。

 ただし、気をつけなくてはいけないのが、「あげた」「もらった」という双方の意思が必要なことだ。よくあるのが、子供名義の口座をつくり、そこに年間110万円ずつ入金しているが、子供本人はそれを知らず、通帳もキャッシュカードも印鑑も親が管理しているというケースだ。

 これは「名義預金」と呼ばれ、税務署から「贈与」と認められないことがある。形式自由の「贈与契約書」を2通つくり、贈与した側とされた側が署名捺印、それを毎年交わすというのが理想だが、通帳などの管理は子供本人が行わなければならない。

 もし、親が「相続対策に、子供や孫の名義で預金しているから大丈夫」と言うことがあったら、必ず「それだけではNGだ」と伝えておきたい。なお、近年はこの暦年贈与を代行する金銭信託商品があるが、前述と同じ理由で利用するメリットは薄いだろう。
おススメサイト
最新記事
QRコード
QR
スポンサーリンク
スポンサーリンク
カテゴリ
ランキング
リンク