上司の「人事権」がハラスメントの温床に? 生産性を「見える化」すれば余計な権力が要らなくなる

世の中には、上司に対する悪口や批判的な言説であふれかえっています。私も小さいながら会社を経営しており、嫌われ上司の一人かもしれません。これだけ頑張っても部下にやいのやいの言われてしまうとは、上司とはいかに辛い仕事かと実感します。

もちろん上司の側にも問題があるために、このような状況になっているところもあります。最も不思議なのが、部下に対する各種ハラスメントに関するもの。これだけコンプライアンス重視の世の中になっているのに、なぜバカなパワハラ・セクハラ上司はいなくならないのでしょうか。(文:人材研究所代表・曽和利光)

「直言されない上司」がダメになるのは当然

どんな上司であっても、会社内では何らかの権力、権限を持っています。最も大きなもののひとつが「人事権」や「評価権」です。この権限は部下にとって、自分の人生を大きく左右させられる可能性すらある絶大な力とも言えます。

昇進できなかったり望まない異動を命ぜられたりするのは、部下にとってとても怖いこと。上司を恐れて直言を躊躇するようになることは、ある意味自然なことと言えるでしょう。

しかし、このことは上司の「成長」にとって大変なマイナスになりうるのです。ハラスメントのみならず、様々なダメ上司の言動は「フィードバックのない環境」で生み出されます。人は他者からフィードバックを受けることによって、様々なことを改善し、成長していきますが、その大きなきっかけを失ってしまうからです。

しかも『異文化理解力(THE CULTURE MAP)』(邦訳:英治出版刊)の著者であるエリン・メイヤーによれば、日本はタイと並んで、極めてハイコンテクストで間接的なネガティブフィードバック(批判の指摘)を好む文化であるとされています。そもそもお互いに空気を読み合い、直言しにくい国民性と言えるかもしれません。

上司は部下を「権力」でなく「権威」で動かすべき

フィードバックを受けなくなる上司は、対人関係における気づきのモデルである「ジョ=ハリの窓」で言うところの「ブラインド・セルフ(自分では気づいていないが、他人にはバレている自分)」に意識の光を当てることができなくなります。

自分のことのはずなのに、自分で気づいていない自分とは、大概の場合「認めたくない自分」です。それは社会的望ましさの低い自分であり、一般的・社会的な場面において良いと思われない言動をする自分の姿です。

しかし余計な権力をもってしまった人は、社会的望ましさの低い姿をさらしても「それをやったらダメですよ」と諭す人がいなくなり、抑制が弱まってきます。それがハラスメントの温床となっているのではないでしょうか。

誤解を恐れずに極論を申し上げますと、私は上司という立場の人から、様々な権力をある程度取り上げるべきだと思います。上司たるもの、与えられた権力によってではなく、仕事での能力や人柄などによって、自然と部下に影響を及ぼすべきです。

部下は上司が偉いから言うことを聞くのではなく、その能力や人柄を信頼して上司の言うことを聞く。そういう関係が理想だと思います。経理の決裁権などは組織運営上必要なので、特に取り上げる必要はないかもしれませんが、特に「人事権」などは上司から取り上げるべき最たるものだと思います。

「説明責任」を持たせて余計な権力行使を抑える

ただし、ここで言う「取り上げる」というのは、「何も触れさせない」という意味ではありません。人事評価などは、日常的に部下の仕事ぶりを観察している上司にしかできないというのも事実ですから、もちろん人事評価は上司がすべきなのです。

しかし、完全に任せきってブラックボックスにはしてはいけない。そうしてしまうと、変な権力の温床となってしまうということです。なお、この場合の「権威」とは信頼の力で心理的に周りの人を従わせることができる力を指し、「権力」とは何らかの強制力を背景に物理的に周りの人を従わせる力として使っています。

例えば人事権において、人事評価や昇進や異動についての意見は、上司がもちろんすべきですが、そこにおいては必ず「なぜ、そうしたのか」についての説明責任を同時に持たせなければなりません。

彼はなぜこのような低い点がついているのか、なぜ彼女を異動させることにしたのか、なぜ彼を降格させるのか。人事について精緻な説明を求めることで、上司の「余計な権力行使」に一定のプレッシャーを与えることができます。

データを使えば「生産性の高いチームの組み合わせ」も分かる

ただ、これだけではまだ甘いかもしれません。組織や人のことは大変曖昧で目に見えないために、口のうまい上司たちは気に食わない部下たちを、なんやかんや理由をつけて放逐してしまうかもしれません。

加えて行うべきことは「見える化」です。最近は様々なデータを用いて人事を行う「データベーストHR」などが進化していますが、例えば適性検査などを全社的に導入し、どういう人がどういう仕事で高いパフォーマンスを上げているのか、どういう組み合わせのチームの生産性が高いのかなどについて、きちんと「見える化」することが可能になりつつあります。

そんな中、もしも上司がその結果に反したことをしようものなら、ここにも大きな説明責任が発生するはずです。組織の状態の「見える化」に反対する人がいたならば、それは性悪説に過ぎるかもしれませんが、組織を恣意的に自分の権力のほしいままにしておきたいと考えている可能性があります。

このような努力を行って、上司たちから無用な権力を取り上げて、権威によって人を動かさなくてはならないようにすれば、ハラスメントのようなことをしている上司は見向きもされなくなり、人を動かすことができなくなるために、自然と消滅していくのではないでしょうか。

何も話せない!? 恋愛トークは「ラブハラスメント」か

AKB48の大家志津香がTwitterでつぶやいた、「ラブハラスメント」という言葉が話題になっている。これは、大家が2月6日に、

「友達同士で『彼氏いないの?』とか『結婚しないの?』という会話で相手に不快な思いをさせた場合【ラブハラスメント】というハラスメントに当たるらしい。もうなにも話せない」
「『呼吸してる?』くらいしか言えない」

などとツイートしたことが発端。「はてなキーワード」によれば、「ラブハラスメント」とは、「恋愛及び性に関する話題を公共の場及び他者の面前で持ち出すことにより、他者に精神的苦痛を与えること、またその行為全般を指す」とされている。

また、Twitterをみてみると、数年前から「ラブハラスメント」「ラブハラ」といったワードを使った投稿がされていることがわかる。

今回の大家のつぶやきに対しては、

「しーちゃんのおっしゃるとおりですがな。世知辛い世の中になっていくね。(ToT)」
「うーむ。何でもハラスメントっていやいいと思ってるフシは否めない。もちろん今まで泣き寝入りしてたモノが顕在化したとも言えるけど」
「全くだ。ハラスメントハラスメントになりそうだ」
「馬鹿馬鹿しい!会話の一つやん。何度もひつこく聞くならもんだいあるけど。
すぐ『ハラスメント』言うやつは、頼むから引きこもっててくれ」

と、“何も言えなくなる”というツイートがある一方で、

「確かに、話したくない時に恋愛について、人前で聞かれるとハラスメントかもしれない
ラブハラスメントとか...まあ確かに自慢されたら殴りたくなるけど...」

と、「ラブハラスメント」を感じるときがあるという意見も投稿されている。

恋愛トークは、多くの人にとって世間話の定番ともいえるが、その分不快に感じるケースも多いということだろうか。あなたは「ラブハラスメント」について、どう思う?



マタハラ防止策 1月から企業に義務化

具体例で啓発・話し合い

妊娠や出産を理由にした従業員への嫌がらせ「マタニティー・ハラスメント(マタハラ)」の防止策が、1月から企業に義務付けられた。各社は問題となる上司の言動を示すなど啓発に力を入れるが、マタハラは同僚からも起こりうる。皆が働きやすい職場づくりに課題は多い。

 2015年秋、東京スター銀行に転職した女性行員(41)は、面接で「子育てしながら一緒に働きましょう」と言われ、驚いた。以前の勤務先では、第2子出産後に職場復帰する際、「前と同じポジションは用意できない」と、補助的な業務に替えられたからだ。妊娠や出産を理由に不利益な配置変更をすることは、男女雇用機会均等法などで規定するマタハラにあたる可能性がある。

 東京スター銀行の育休取得者は毎年10人を超え、子育てと両立して働く行員も増えている。それに伴い、マタハラ防止にも取り組んできた。社内セミナーで、マタハラを違法とした14年の最高裁判決を例に周知を徹底。ママ・パパ行員と管理職向けのコミュニケーションガイドも作成し、「こんな忙しい時に休職なんて困ったなあ」など問題になる言動を例示した。

 女性は現在、育児との両立のため午後6時半までの勤務だが、複数の顧客を抱える責任ある仕事を任されている。「上司が理解を示してくれ、子育て中の同僚もいて働きやすい」と話す。多くの企業は、法改正前からマタハラ対策に力を入れてきた。SOMPOホールディングスは16年、損害保険ジャパン日本興亜などグループ企業全社員対象の「人間尊重ポリシー」を改定し、妊娠を理由とした差別行為は一切行わないと明記した。

 また、産休・育休取得者に対する上司向けマニュアルを作成。「産休前の部下に『復帰後は時短だよね?』と言うのは、本人がフルタイムで働く意欲があるかもしれないので『BAD』」などと事例を示した。出産を理由にした事業主による解雇、降格などは改正前から違法だったが、今回新たに上司や同僚のマタハラも禁じられ、企業に防止策が義務づけられた。

 NPO法人マタハラNetの前代表理事、小酒部(おさかべ)さやかさんは「企業のマタハラへの理解がさらに進むだろう」と話す。一方で、「育休取得者や時短勤務者が抜ける分を、周囲が長時間労働で補わなければならない職場もある。そうした人が疲弊すれば不満がたまり、マタハラを誘発する恐れがある」と懸念する。

 厚生労働省の15年の調査でも、マタハラの加害者は上司や男性だけでなく、同僚や部下、女性も多かった。セクハラやパワハラとの違いが浮き彫りになった。働きやすく、マタハラの起きない職場づくりを模索する企業も出てきた。損保ジャパン日本興亜では、育休取得者の復帰前に職場のメンバー全員が集まり、生産性をあげ、誰も残業せずに済む働き方を話し合う。

 役員と社員合わせて4人のコンサルティング会社、旅館総合研究所では、社長の重松正弥さん(44)以外は全て既婚女性。個々の事情に応じた働き方ができるようにと、午後5時半以降の残業を禁止し、保育園に入れなかった子がいる社員は在宅勤務にした。取締役で子育て中の岩沢優花さん(34)は、「日頃からメールやインターネット電話での連絡を密にし、お互いさまの気持ちで業務を補い合っています」と話す。

 職場のコミュニケーションに詳しい第一生命経済研究所主席研究員の宮木由貴子さんは、「親の介護や自分の病気などで制限のある働き方をする人が、今後増えていく。マタハラが起こるような職場はもたなくなる。長時間労働の是正や、感謝を言葉で伝えるなど丁寧な意思疎通にも取り組むべきだ」と指摘する。(福士由佳子)

■マタハラの防止策 改正男女雇用機会均等法と改正育児・介護休業法が2017年1月に施行されたことで、企業に義務づけられた。政府の指針では、具体策として〈1〉マタハラの行為者に厳正に対処すると、就業規則などで規定して周知徹底〈2〉相談窓口の設置――などを行うべきだとしている。

マタハラにあたる言動の例

▽妊娠した部下に上司が

・「産休や育休は認めない」

・「(派遣・契約社員に)更新しない」

・「(正社員に)パートになれ」

▽妊娠で重労働を免除された人に同僚が

・「あなたばかりずるい」と仲間はずれにする

▽職場復帰後

・普通ありえないような配置転換

・減給

▽時短勤務者に同僚が

・何度も「あなたが早く帰るせいで周りは迷惑している」

(厚生労働省の資料から)

■マタハラの防止策:改正男女雇用機会均等法と改正育児・介護休業法が2017年1月に施行されたことで、企業に義務づけられた。政府の指針では、具体策として〈1〉マタハラの行為者に厳正に対処すると、就業規則などで規定して周知徹底〈2〉相談窓口の設置――などを行うべきだとしている。

マタハラ防止強化の法改正 職場が「恐怖症」に陥る懸念も

妊娠や出産を理由に、職場の上司や同僚から嫌がらせを受けるマタニティー・ハラスメント、いわゆるマタハラ被害が社会問題になっているが、今年1月よりマタハラ防止を強化する法改正が施行された。

「改正育児・介護休業法」と「改正男女雇用機会均等法」がそれだ。まず企業(事業主)には、妊娠や出産、育児・介護休業の取得に伴う嫌がらせの防止対策が義務付けられた。そのうえ、派遣労働者についても派遣先企業を事業主と見なし、対策義務の周知徹底を掲げている。

 また、改正育児・介護休業法では非正規労働者が育児休業(育休)を取りやすくしたのもポイントだ。

 これまでは、(1)勤続1年以上(2)子が1歳になった後も雇用継続の見込みがある(3)2歳になるまでに契約が更新されないことが明確でない──の3条件を満たす必要があったが、改正後は(2)と(3)が廃止され、子が1歳半になるまでに更新されないことが明確でない限り育休を認めることが新たに加わった。

 もちろん、派遣社員やパートなどを含めた有期労働契約者の育休取得条件のハードルが下がったことは喜ばしいことだが、実際には育休の取りやすさはあまり変わらないと指摘する声もある。

 社会保険労務士の稲毛由佳さんがいう。

「会社と有期労働契約を結んで働いている人の中で圧倒的に多いのは、契約更新の有無を明確に示されず、『更新する場合もある』とグレーにしているケースです。この場合は法改正にかかわらず、育休は取れることが多い。

 妊娠が分かった途端に会社から『更新しない』と言われたら取得できないと思うかもしれませんが、いまは妊娠や出産、育児を理由とした不利益取り扱いは禁止されているので、会社もあからさまに雇い止めをすることはできません」

 それでも出産を機に、泣く泣く会社を辞める女性が後を絶たないと稲毛さんはいう。一体なぜなのか。

中林美和も被害に!?「モラハラは関係修復が難しい」と語る弁護士が指南する対処法

MCやDJとして活動しているZeebraさんが、妻でモデルの中林美和さんにモラハラをしているのではないかとの報道が話題になっています。「モラハラ」の実際の概念は実ははっきりとはしませんが、一言でいえば、「言葉や態度で人の心を傷つける精神的暴力」と考えていただければよいのではないでしょうか。近年は、肉体的暴力(DV)の被害もさることながら、モラハラによる被害を理由に離婚を望む人も少なくありません。そこで、今回はモラハラと離婚の関係について考えていきたいと思います。

■モラハラと認定されるのはどのような行為か

先ほども書いた通り、何をモラハラというかは実はあいまいです。それは、人の感じ方によるところが大きいからです。しかし、例えば、「役立たず」、「こんなこともできないのか」、「生きてる価値がない」など、相手を侮辱したりこき下ろしたりするような言葉を日常的に吐いていれば、モラハラということができるでしょう。また、「相手が話しかけているのに無視をする」、「食事を作らせておいて手を付けない」という態度も、反復継続したりすれば、精神的な暴力、すなわちモラハラと認定されることになると考えられます。

■「モラハラ夫婦」の関係修復は可能か?

夫婦の一方のモラハラが他方にとって限界を超えるものであった場合、関係を修復することはかなり難しいものです。そもそも、モラハラをしている側は、自分がしていることがモラハラだとは気づかない、あるいは気づいていても認めないことが多々ありますので、そのような場合には関係修復は不可能と考えるべきでしょう。

仮に関係修復が可能だとすれば、モラハラをしていた側が心からそれを反省し、謝罪をすることが最低限必要な条件です。しかし、相手が限界を超えてしまっている場合、「謝ってもその場限りで、またすぐに元通りになる」と考え、すっかり信頼を失っていることが多いので、簡単に修復できるわけではありません。実際、その場では謝っても「元の木阿弥」になる人は非常に多いように思います。

■モラハラされた側の対抗策は「証拠を残す」こと

モラハラをされた側としては、我慢の限界を超えたら離婚を検討することになるでしょう。自分が苦しんできたことについて、慰謝料を請求したいと思うのも当然です。しかし、そのためには、モラハラ被害の証拠が手元に残っていなければなりません。

モラハラをする人間は小賢しいことが多く、往々にして、証拠を残さない形で嫌がらせをします。例えば、メールやチャットで嫌がらせをすることはあまりありませんし、また、嫌がらせをする前に録音されないようにスマホを取り上げたりすることもあります。ですので、モラハラ被害というのは実は証拠が残りにくいのです。

もちろん、メールやチャットで嫌がらせの言動があれば、そのデータは消えないように保存しておかねばなりません。また、できるだけ近い時期にされたことをメモとして残しておく(日付も入れておく)、恥ずかしいかもしれませんが、友人にメールなどの形が残るもので相談しておくことは次善の策と言えます。

モラハラというと何か軽い感じがしますが、実際にはDVと同じくらいに人を苦しめるものです。泣き寝入りすることがないよう、できるだけ証拠を残しておくことをお勧めします。

*著者:弁護士 寺林智栄(ともえ法律事務所。法テラス、琥珀法律事務所を経て、2014年10月22日、ともえ法律事務所を開業。安心できる日常生活を守るお手伝いをすべく、頑張ります。)

忘年会での「PPAP」強要「ピコハラ」に警戒の声…パワハラではないのか?

今年、世界的に大ヒットしたシンガーソングライター・ピコ太郎さんの楽曲「ペンパイナッポーアッポーペン(PPAP)」。インターネット上では、忘年会などでPPAPのモノマネを強要されそうだと怯える人から「ピコハラだ」という声が上がっている。

インパクトのある曲調から、忘年会の余興にはぴったりのように思えるPPAP。しかし、ツイッターでは「忘年会ピコ太郎やる的な流れになって全力で拒否してる」「職場の飲み会で4回もペンパイナップル歌わさせられた。PPAPハラスメントだ」といったつぶやきが見られ、PPAP強要を苦痛に感じている人は少なくないようだ。

忘年会でのPPAPなどの一発芸強要は、パワハラにあたるのだろうか。田村ゆかり弁護士に聞いた。

●一発芸強要はパワハラ?

「忘年会での上司からの部下に対する一発芸強要が、違法なパワハラ、つまり不法行為(民法709条)として損害賠償責任を負うのかどうか、考えてみましょう。

まず、職場でのいわゆるパワハラと言われる行為の中で、仕事と関係がない単なるいじめ・嫌がらせの場合は、部下が受けた被害の種類・程度と、上司の行為との相関関係によって、社会通念上許される限度を超えた場合に違法となります。

これに対して、上司が持っている権限と関連している、たとえば『部下のミスを指摘して改善させる』といった行為はどうでしょう。部下の心理的負荷などを過度に蓄積させるような行為は原則として違法ですが、合理的な理由に基づいて、一般的に妥当な方法と程度で行われた場合は正当な職務行為と言え、違法とはなりません」

田村弁護士はこのように述べる。

「また、一口にパワハラと言っても、その態様は様々です。暴行したり傷害を負わせるなどの身体的な攻撃はもちろん、無視や仲間はずれもパワハラに含まれます。言辞(言葉や態度)による攻撃の場合は、それが上司の職務権限の範囲内なのか、権限の濫用となるのかが問題となります」

忘年会での一発芸強要は、「権限の濫用」と考えられるのだろうか。

「たとえば、これまでの忘年会で一発芸が慣例として行われてこなかったにも関わらず、上司が執拗に特定の部下に対して一発芸を強要するような場合は、違法なパワハラとされることもあるでしょう。

これに対して、毎年その年度の新入社員が一発芸を披露することが恒例となっている忘年会で、新入社員に対して『PPAPをやってはどうか』と提案したにすぎないような場合は、違法なパワハラとは言えないでしょう」

【取材協力弁護士】
田村 ゆかり(たむら・ゆかり)弁護士
経営革新等支援機関。2016年度沖縄弁護士会破産・民事再生等に関する特別委員会委員。

事務所名:でいご法律事務所
事務所URL:http://www.deigo-law.com/

あなた大丈夫?ヌーハラ以外にも…知らずにやってる「〇〇ハラ」まとめ

最近ニュースなどで話題の“ヌーハラ”。“ヌードルハラスメント”の略で、日本を訪れる外国人に、日本人が蕎麦などの麺類をすするときの音が苦痛を与えているということ。

報道番組『ユアタイム~あなたの時間~』(フジテレビ系)キャスター市川紗椰は「私は絶対すする」と宣言するなど、タレントのみならずネットでも熱い議論が勃発している。このヌーハラのみならず、スメハラ、マタハラなどさまざまなものに“ハラスメント”がつくこの時代。そこで今回は保険ショップの『保険クリニック』が行った、「30種類超の“ハラスメント”を対象にしたアンケート調査」から最新の“〇〇ハラ”事情を紹介したいと思います。

■認知度の高い「〇〇ハラ」TOP10でも知らない言葉がいっぱい!?
全国に住む20歳~60歳の男女800人に対し、33種類のハラスメントを提示し「あなたが聞いたことのあるハラスメントは?」と質問したところ、TOP10は以下のような結果になりました。

1位・・・パワハラ(男性281人)(女性273人)

2位・・・セクハラ(男性277人)(女性277人)

3位・・・マタハラ(男性203人)(女性267人)

4位・・・モラハラ(男性186人)(女性264人)

5位・・・スメハラ(男性85人)(女性131人)

6位・・・アカハラ(男性75人)(女性79人)

7位・・・オワハラ(男性68人)(女性77人)

8位・・・ドクハラ(男性34人)(女性69人)

9位・・・アルハラ(男性50人)(女性44人)

10位・・・ゼクハラ(男性26人)(女性20人)

5位のスメハラ(ニオイによる苦痛)まではわかっても、6位以下は「ちょっとなんのハラスメントだかわからない」という人もいるのでは?意味を簡単に説明すると「アカハラ」とはアカデミック・ハラスメントの略で、大学の教職員が学生などに対して行う嫌がらせ。「オワハラ」は就活終われ・ハラスメントで、企業が学生に内定を与える代わりに、就活を終えるように迫る行動です。「ドクハラ」はドクター・ハラスメントで、医師による患者への嫌がらせ。

「アルハラ」はアルコール・ハラスメントでお酒を強要されるなどの嫌がらせ。「ゼクハラ」は『ゼクシー』などの結婚情報誌を彼の前に置いたり、親が自分の子どもに「結婚はまだ?」と聞いたりとプレッシャーを与える行為。似たような言葉としてランク外に「マリハラ」(マリッジ・ハラスメント)もあります。未婚の人に結婚やお見合いを執拗(しつよう)に迫る行為のことです。

どの言葉も聞き慣れないという人も少なくないのでは?

■認知度ゼロの〇〇ハラは「レイハラ」や「レリハラ」など
ちなみに上述の調査で、なんと1票も入らなかった認知度0の「〇〇ハラ」が以下の3つ。
(1)テクハラ(テクノロジー・ハラスメント)
IT機器の操作に不慣れな人に対する嫌がらせ
(2)レイハラ(レイシャル・ハラスメント)
人種的偏見に基づく嫌がらせ
(3)レリハラ(レリジャス・ハラスメント)
宗教団体やその関係者から受ける精神的・肉体的・経済的な苦痛を伴う嫌がらせ

このほか、年齢を理由とした嫌がらせ「エイハラ」、カラオケを無理に歌わせようとする「カラハラ」、SNSを使った嫌がらせ「ソーハラ」などといったハラスメントもあるようです。知らず知らず、被害者にも加害者にもなりうるハラスメント。自分が誰かを傷つけていないか今一度考えてみてはいかがでしょうか。

以上、世の中にたくさんあるハラスメントを紹介しました。『VenusTap』の過去記事「マタハラ被害者に聞いた!3位雇い止め“実際受けたマタハラ”1位は」のように、被害が深刻な場合は、各都道府県の労働局雇用均等室など専門機関に相談しましょう。

根絶されていない「アルコールハラスメント」の実態

仕事の飲み会の席やプライベートで、お酒を飲む機会がある人は多いのではないだろうか。お酒を飲むときには、マナーやルールを守ることが大切である。

日本法規情報は、運営するウェブサイト『労働問題・労働審判相談サポート』『モラルハラスメント被害相談サポート』『セクハラ・パワハラ相談サポート』『弁護士事務所相談サポート』の運用情報や相談者へのアンケートを元に、「アルコールハラスメントに関するアンケート調査」を実施。その結果を発表した。

「アルコールハラスメント」とは、アルコール飲料に関する嫌がらせ全般を指す言葉で、アルコール類の多量摂取の強要など対人関係の問題や、酩酊状態に陥った者が行なう各種迷惑行為などの社会的なトラブルを指す。今回は、アルコールに関する嫌がらせやトラブルについて調査を行なった。

■「アルコールハラスメントという言葉を知っている、聞いたことがある」と答えた人は6割

質問:アルコールハラスメントという言葉を聞いたことがありますか
調査の結果、「アルコールハラスメントという言葉の意味を知っている」と回答した人が42%、「アルコールハラスメントという言葉を聞いたことがある」と回答した人が17%、「アルコールハラスメントという言葉を知らない」と回答した人が42%でとなった。アルコールハラスメントはメディアでも取り上げられるようになり、6割近い人がアルコールハラスメントという言葉を認知しているという結果になった。

■9割以上が「アルコールハラスメントは、絶対に良くない」と考えている

質問:アルコールハラスメントについてどう思いますか
調査の結果、「絶対によくない」と回答する人が94%、「仕方ないときもあると思う」と回答した人が6%となった。アルコールハラスメントは、どんな状況であれ許されないと考えている人がほとんどであるということがわかった。一昔前は、接待の場や社内の飲み会などでのアルコールを強要するケースがあったが、この結果は近年、アルコールハラスメントという言葉や行為の危険性が社会的に認知されてきた結果だと思われる。

■約半数が「アルコールハラスメントに関わったことがある」と回答

質問:アルコールハラスメントに実際に関わったことがありますか
調査の結果、「強要を見たことがある」と回答した人が25%、「強要されたことがある」と回答した人が25%、「強要したことがある」と回答した人が3%、「関わったことがない」と回答した人が47%となった。約半数以上がアルコールハラスメントを見たり強要されたりした経験があり、良くない行為であることは認識されているが、根絶されていない実情が浮かび上がった。

■「飲めない人への強要がトラブルになりやすい」という回答が最多

質問:アルコールハラスメントとはどのような場合に当てはまると思いますか
調査の結果、「体質的に飲めない人に強要すること」と回答した人が22%、「未成年や運転手など法律的に飲めない人に強要する」と回答した人が19%、その他、「場を盛り上げるためのイッキ行為」、「酔ったうえでの迷惑行為」、「意図的な酔いつぶし」、「飲めないことをバカにする」があげられた。飲めない人への強要が、アルコールに関するトラブルの大きな原因の一つであることがわかった。また意見が分かれている部分から見ても、アルコールハラスメントには、様々な形態があり、単なるお酒の飲むことへの強要には留まらないことがわかった。

■ルールを守った節度ある行動を

飲酒は適度な量で人に迷惑をかけないようにルールを守れば楽しいものだが、限度を超えるとトラブルの大きな原因となる。これまでの調査からわかるように、昔に比べてアルコールによる嫌がらせの認識は大きくなってきている。急性アルコール中毒や飲酒運転の危険性もあり、注意しなくてはならない。アルコールハラスメントは身近なハラスメントの一つである。最近では未成年の飲酒など、限度を超えた行動が大きな問題を起こしてしまい、社会問題となっているのも事実だ。

樟葉法律事務所の三輪貴幸弁護士は、次のように話す。

「軽度・適度の飲酒であれば、気分を楽しくして人々のコミュニケーションを円滑にする効用があることは広く知られていることと思います。とはいえ、現代社会においては人々のコミュニケーションの取り方も多様化し、酒席での歓待が必ずしも万人にとって、心地よいコミュニケーションのあり方ではなく、トラブルの基にもなることも広く認識されるようになってきました。

通常の社会生活で相手方が不快に感じることを強要することが許されないのと同様、酒席だからといって、その『してはいけないこと』のハードルが下がることはないと思います。例えば、職場関係での酒席におけるアルコールハラスメントは、場合によってはパワーハラスメントやセクシャルハラスメントに結び付き、個人間で不法行為責任が問題となることがあるだけではなく、会社自体の責任を問われることにもなりかねません。

また、あまりに悪質な場合、飲酒の強要行為が強要罪となったり、人を酔いつぶさせてしまう行為が過失傷害罪や傷害罪となったりするおそれもあります。一方が嫌な思いや不快な思いをしている対人関係というのは、もはやコミュニケーションが成立している関係ではなく、違法な状態にすらなっている可能性がある、ということを念頭に入れ、ルール・マナーを守った節度ある飲酒を心がける必要があります」

アルコールハラスメントは「良くない行為」と多くの人が考えながらも、知らず知らずのうちに相手を傷つけてしまうこともある。お酒を楽しむためにも、ルールを守った節度ある行動を心がけていくことが重要なポイントだといえる。万が一、アルコールハラスメントに巻き込まれている、もしくはアルコールハラスメントが起こっている、と感じた時には、早い時期から専門家に相談するようにしよう。

派遣社員の女性に多い!? “パワハラ一体型のセクハラ”の実態と対処法

こんにちは。エッセイストでソーシャルヘルス・コラムニストの鈴木かつよしです。

わが国で『セクシャルハラスメント』(以下“セクハラ”と略す)という言葉が一般的に使われるようになったのは1989年の新語・流行語大賞の新語部門でこの言葉が金賞を受賞したころからだったかと記憶しています。

そのころと比べればずいぶんと世間のセクハラに対する目は厳しくなり、女性が理不尽な不快感に苦しむことの少ない社会にはなったように思います。

しかし、筆者が最近気になっているのは“限りなくパワハラと一体化したセクハラ ”で、絶対的に優位な立場を利用して卑劣な行為を行う人を見ていると同じ男性としてとても情けない気持ちになってしまいます。

都内でメンタルクリニックを開院する精神科・心療内科医のT先生は、『パワハラ一体型のセクハラが原因で適応障害などの大事(おおごと)に至ってしまう前に一度、心療内科の医師のところへ相談にきてほしい』と言います。

子育ても一段落してパートやアルバイト、派遣といった形でまた働いてみようと考えておられる女性のみなさんにも参考にしていただければ幸いです。

●セクハラ被害の相談件数は、派遣労働者のほうが正社員の3倍以上も多い

T先生が言う“パワハラ一体型のセクハラ”とは、これまでも「対価型セクハラ」などと呼ばれてきた“職場における階級の優位性を利用して下位にある者に対して行う性的なハラスメント行為 ”に近い概念です。

製造業などの作業現場で監督・指導をする立場にある上司が、作業スペースの狭さを利用して作業員の女性に体を密着させてきたりすることもこれに当たるでしょう。

セクハラ自体が本来パワハラの一種であるとする考え方もありますが、筆者が近年この“限りなくパワハラに近いセクハラ行為”が目立つのではないかと感じていることには統計的な裏づけもあります。

厚生労働省が公表している『個別労働紛争の相談状況』や『派遣労働者実態調査』の直近の数字と、総務省が実施している『労働力調査』の雇用形態別雇用者数の数字などから算出すると、2014年以降のセクハラ被害の相談件数は派遣労働者で正社員の実に3倍以上も多い ことがわかっています。

そのため、近年のセクハラは“単に性衝動に基づいたもの”と考えるより、“パワハラと一体化したもの”の方が多いと考えた方が自然だからです。

よほどのことがない限り無期限の雇用を保障されている恵まれた人たちによって、景況や業績といった理由で企業側の都合でいつ雇用契約を打ち切られてもおかしくない非正規雇用という弱い立場で働いている人たちが、理不尽で不快なセクハラ行為の被害に遭っている。

そうだとすれば、これは看過できないことなのではないでしょうか。

●左手薬指のダミー指輪の効果も今は昔、既婚女性こそセクハラ被害に遭いやすい傾向が

しかもこうした“パワハラ一体型セクハラ”の加害者となっているような相対的に上位の職責にある人たちが、ここ数年来の傾向としてセクハラ行為の対象を“未婚女性”から“既婚の女性”へも広げてきている ことが、このタイプのセクハラ問題をより深刻化させていると、前出のT先生は指摘しています。

『たとえば以前であればセクハラ行為の主たる被害者であった未婚の女性が、わざとダミーの指輪を左手の薬指にすることでセクハラ被害に遭う危険性を減らすことに効果がありました。「既婚者の女性と、面倒なことにはなりたくない」といった思いが加害者側にあったからです。

ところが最近は、「既婚の女性の方がセクハラ行為に対して我慢強い 」みたいに相当身勝手な思い込みを抱いているセクハラ加害者が増え、ダミーの指輪のようなセクハラ撃退法が功を奏さなくなりつつあります』

このようなお話を日頃からセクハラ被害の相談に携わっている医師の口から聞くと、パワハラと一体化したセクハラというものは被害者の“生活”という人の暮らしの根源的な部分の弱みに乗じているため、かなり質(たち)の悪い ものであるような気がしてきます。しかしそれでも、『対処法はある』と、T先生は言います。

●パワハラ一体型セクハラの加害者は自分の立場が揺らぐことが何よりもこわい

『パワハラと一体化したセクハラ行為をする人は、被害者である非正社員の女性が抗議をすることはあっても“雇い止め”につながりかねない法的な手段にまで出ることはまずないだろう と高をくくっています。

非正規雇用の人にとっては数か月とか半年の単位でやってくる雇用契約の期限のときに会社側が「この人は面倒だ」と感じるような状態にあれば、雇用契約を打ち切ることに会社側には現行法上何の非もないため、適当な理由でもって雇い止めにしてくれるだろうと思っているからです。

したがって法的に闘う場合にはセクハラ上司が明らかに法に触れる行為をしているという証拠の収集 が必要で、これは次の職場を探しておく必要がある非正社員のセクハラ被害者にとってはかなりの負担になります。

一方、パワハラ一体型セクハラへの対処法として、法的な手段ではなくわれわれ医師に相談していただくという方法が存在します。この場合法的に“闘う”のとはちょっと違って、被害者の心身の健康を“守る” という感じの対処の仕方になります。

パワハラ一体型セクハラの被害者にはストレスからくる集中力の低下、不安感、恐怖感、抑うつ感、イライラ感、わけもなく涙が出る、喉の異物感、頭痛、胃痛などの心療内科的な症状が伴うため、医師の立場で患者を守るというスタンスの対処法です』(50代女性/前出・心療内科医師)

T先生はこう言い、具体的には次のような段取りの対処法をおしえてくださいました。

パワハラ一体型セクハラの被害に遭ってしまったときには、

(1)事態をできるだけ落ち着いて省み、自分には非はなく悪いのはセクハラをする上司の方である ことをまず自覚する

(2)その上で、セクハラ上司の上司にあたる立場の人の中で、できるだけ信頼がおけ自分の話をきちんと聴いてくれそうな人は誰かを選定する

(3)(2)ができたらわれわれ医師の方で事態の改善に有効と考えられる診断書を書きますので、(2)で選定した“セクハラ上司の上司”に診断書を携えて 相談してください

パワハラ一体型のセクハラをする加害者は自分の立場が揺らぐことが何よりもこわいため、このような対処法が有効であるというのがT先生の見解です。

その点が“単に性衝動に基づいたセクハラ”と質的に区別されるということでした。

なお先生によれば心療内科や精神科のほか、レディースクリニックやウイメンズクリニックのような看板を掲げている医療機関であればほとんどのところでセクハラの相談にのってくれるとのこと。

法務関連の専門機関と連携しているクリニックもある とのことです。

自分の立場の優位性や自分が手にしている権力をいいことにパワハラ一体型のセクハラをしてくるような上司に、泣き寝入りをつづけることはありません。

「いいね!」の連発”はハラスメント? 

嫌いな上司からSNSで友達申請、あなたならどうする?

■“「いいね!」の連発”はハラスメント?

 前回は、休日や勤務時間外に仕事上のやり取りをしないで済む「つながらない権利」について取り上げた。特にスマートフォンが普及してからは、オフィス外でのメールの送受信が気軽になったため、公私の境目がつかなくなってしまうケースが多く報告されるようになった。

 前回は電話やメールでの連絡に絞って話をしたが、「つながらない権利」を考えるうえで忘れてはならないのが、ソーシャルメディアの存在である。最近では、TwitterやFacebookなどのSNSで職場や取引先の人とつながるか否かが、多くのビジネスパーソンにとって悩みの種になっている。フォローや友達申請を求められることが不快に思う人も一定数いて、「ソーシャルネットワーク・ハラスメント」(ソーハラ)という言葉まで登場している。

 愛知工業大学が作成した冊子「教職員向けガイドブック-STOP!ハラスメント-」によると、“「いいね!」の連発”もソーハラの一種になるらしい。あるユーザーのツイートやニュース記事でこのことが話題になると、ネット上で議論が巻き起こった。「考えすぎ」と思う人がいるかもしれないが、常に同じ人から「いいね!」を押されると、日常生活を監視されている気持ちになる場合もある。それが上司や取引先の人だったらなおさらだ。「いいね!」を押している本人は良かれと思ってやっていたとしても、やられた当人からするとストレスやプレッシャーになっているという構図は、多くのハラスメントに共通するものである。

実際に部署に新人が入ってきたら、まずはSNSのアカウントを探してみるなんて話はよく聞くし、投稿やコメントを巡って職場や取引先の人とトラブルになったという事例もたくさんある。プライベートの投稿を見られることを防ぐため、複数のアカウントを使いこなしている人も珍しくない。今回は、SNS上の「つながらない権利」について考えてみる。

■コメント強要、画像保存、グループ外し……

 オウチーノ総研が2016年5月に発表した「SNSと職場コミュニケーション」実態調査によると、職場の人とつながっているソーシャルメディアで一番多いのは、LINEで61.3%。次いでFacebookが37.6%、Twitterが20.5%、Instagramが17.7%の順となっている。

パワハラの6つの定義をきちんと知って、トラブルから身を守る方法

パワハラという言葉が社会的に認知されるにつれて、被害の報告も多くなっています。厚生労働省のパワハラ対策総合サイト「あかるい職場の応援団」が調査した過去3年間のパワハラに関する経験の有無(平成24年実施)では、パワハラを受けた経験があると回答した人は、25.3%と報告されており、約4人に1人が被害者となっている実情が明らかになりました。

パワハラは、行っている本人は自覚しづらいからこそ注意しなければいけない事柄です。そこで、和田金法律事務所の渡邊寛弁護士に、パワハラの定義とブラック企業問題について伺いました。

■パワハラの定義とは?

まず、パワハラの定義とは何かを再度確認しておきましょう。

「パワーハラスメントについては、平成24年に厚生労働省のワーキンググループが報告、提言を取りまとめています。ここでパワハラは、“同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為”と定義づけられています。

また、“職場内の優位性”が上司と部下という関係に限らず、人間関係や専門知識などの優位性まで含むことが明らかにされています。」(渡邊弁護士)

■典型的なパワハラの種類は6つ

業務でミスをした部下を叱りたいのだけど、どこまでが業務上の教育で、どこからがパワハラになるのかわからないといったことも多いと思います。

何が業務上適正な注意や指導を超えたパワハラであるかは、業務上の必要性、動機・目的、労働者の受ける不利益などからケースバイケースで判断することになります。下記の「典型的なパワハラ6類型」が、前述の提言で挙げられており、ここからある程度具体的なイメージができるかと思います。

①身体的な攻撃(暴行・傷害)
②精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)
③人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
④過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
⑤過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
⑥個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

「パワハラの加害者は、被害者の損害を賠償すべき不法行為責任を負いますが、会社も加害者の使用者として不法行為責任を負います。また、雇用契約上、会社(使用者)は従業員に対して安全配慮義務を負いますから、パワハラを防止したり止めさせる対策を取らなかったりした場合には、安全配慮義務違反として契約上の責任も負います。」(渡邊弁護士)

■「中小企業はどこも同じことをやっているから大丈夫」という考えは通用しない

経営の苦しい零細企業の経営者が、人材不足や資金不足を理由にブラック企業まがいのパワハラを強いるといった事例も数多く報告されていますが、こうしたケースでは「どこも同じことをやっているのだから大丈夫」という意識が根底に垣間見れます。本当に大丈夫なのでしょうか。

「労働者から裁判を起こされたときは、法律によって判断されます。ですから、“ほかも同じ”“法律どおりでは経営が立ちいかない”“俺の若いときは”という言い分は通用しません。労働関係の訴訟は増えていますし、ずさんな労務管理、ブラック体質が結果として大きな損失に膨らむケースも多いです。売上だけでなく、労務管理も経営能力の重要な要素と考えることが必要です。」(渡邊弁護士)

自分の勤める会社がブラック企業ではないのか、といったことで誰も悩みたくはないと思います。しかし、組織で働いていれば、その場の雰囲気に飲まれて人間関係のトラブルに巻き込まれることも想定しておかなければいけません。自分自身がパワハラの被害に合わないようにすることはもちろん、自分が上司になった時に、パワハラにならない部下の叱り方、仲間との接し方を知っておくことも大切なのです。

*取材協力弁護士: 渡邊寛(和田金法律事務所代表。2004年弁護士登録。東京築地を拠点に、M&A等の企業法務のほか、個人一般民事事件、刑事事件も扱う。)
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