なぜ、児童相談所にも格差が生まれてしまうのか――その現状と解決策とは

日々起こる子どもたちを巻き込んだ事件や事故の数々。親の虐待、貧困、子どもの非行、置き去り、疾患などの理由から一時的に家族や社会から保護することが必要であると判断されると通常、子どもたちは児童相談所に併設された一時保護所に行くこととなる。

 なかなか外部に内情が公表されにくい一時保護所の実態を、保護された子ども、保護所の職員、里親という異なる立場の人間から話を聞くことで明らかにした本がある。『ルポ児童相談所-一時保護所から考える子ども支援』(慎泰俊/筑摩書房)だ。告発本やニュースから見える部分的な姿ではなく真実の姿を伝えたいと、100人以上もの関係者からのインタビュー、住み込みと訪問により、偏りのないリアルな実態が明らかにされている。多角的に現状を捉え、一時保護所の暗部だけではなく良い点もしっかりと把握できているため、より具体的に改善策が提案されているのだ。

 問題が起こり解決へと向かうためには、まず事実を正確に知ることをしなければ始まらない。しかし児童相談所の内部の取材はとても難しい。“児相たたき”をするマスコミが多いことでさらに取材が困難となる中、これだけの内情と多くの人の言葉を得ることができた理由には著者の“社会起業家”である立場が大きく活かされていた。

 児童相談所や一時保護所での職員による暴行事件や性犯罪など、ニュースで目にするものは耳を疑うものばかりだ。実際に著者が出会った子どもたちの中には「あそこは地獄だ」と口にするものもいる。起床と消灯、入浴や遊びの時間が決まっている監視と管理をされた集団生活。テレビを付けたりトイレに行く際には職員の承諾が必要だ。自由時間に使用する紙には通し番号が入れられ、遊びが終わったら回収される。脱走防止に過剰なランニングを強いられることもあるという。虐待などで愛着障害が懸念される子どもでも人に抱き着くことは禁止だ。性問題を防ぐためである。すべてはトラブル防止のためだが、それはまるで囚人のような生活だ。保護は自らの非行が原因の場合もある。しかし多くの場合、被害者なのだ。

 しかし、一方で「安心できた」と一時保護所を評価する子どもの声もあるという事実をニュースで知る機会は少ない。外出も運動も自由。職員に多少の生意気な口を利けるほどの自然な関係。監獄のような施設とはまったく異なった家庭的な雰囲気を持つ施設もある。

 地獄に行くか安らぎの場へ行けるのか、子どもたちには選べない。意思とは関係のないところで行き先が決まり、直前まで自分の明日を知ることもできず、友達との別れの機会も持てないままに知らない土地へと連れていかれる。そして、これから生活する境遇はすべて運命にゆだねられるのだ。

 日夜激務に明け暮れる児相の悪者論を唱えるだけでは子どもたちを助けることはできない。著者は児相格差問題の原因として管理・監督機能が利きにくい構造であること、企業のように監査や株価が存在せずに外部の目が入らないこと、情報確認が進まなくなりガラパゴス化してしまうことを挙げている。そして解決策として児相一極集中の現状を問題とし、体制の整備や里親への支援強化、地域ぐるみの子ども支援など具体的な対策案を挙げているのだ。

 学生時代にたった1~2学年下の後輩という理由だけで殴られたときの理不尽さ、経済的に裕福ではなく親が集めたお金と奨学金でどうにか高校を受けたという経験から身をもって知ったお金の大切さ。そんなかつての経験から著者は「人は生まれながらに平等であり、みなが自分の境遇を否定することなく、自由に自分の人生を決められる機会が提供されるべきである」という想いを引き起こした。そして、その想いは信念となり本書とともに世界の弱者を支援するさまざまな活動へもつながっている。

「生まれ落ちた境遇に関係なく、誰もが自分の運命を勝ち取ることができる世の中を」と望む著者が願うのは課題解決の第一歩として世の中の人が現状を知ることだ。平等を願う著者の偏りのない取材から見る子どもたちの実態を知ることで、あなたも社会養護を考える第一歩を踏み出してみてはいかがだろうか。

大手企業で相次ぐ「労災」問題。私たちの労働環境を守る「労働基準監督官」の実態とは

 電通、三菱電機、パナソニック……大手企業で相次ぐ「労災問題」。政府が基準に考えている「残業100時間未満」も「過労死ライン」と言われ、賛否両論があるようだ。

 そんな時代だからこそ、行政や会社まかせではなく、「これからの働き方」は、もっと自主的に考えた方がいいのではないだろうか? そこで私は、労働基準監督官として労働基準局に勤務していた著者の『労基署は見ている。』(原論/日本経済新聞出版社)をおススメする。

「労働基準監督官の目線で見る職場環境を理解していただくことで、現在お勤めの会社や経営されている会社が、より良い方向性に向かっていく一助になれば」と、著者が情熱をかけて全うしていた「監督官」という仕事、考え方などを豊富なエピソードと共に紹介している本書。実際に勤務した人だからこそ分かる「実態」は、ドキュメンタリー番組のような読み応えがあった。

 労働基準監督官(略して「監督官」)とは、厚生労働省所属の国家公務員のことだ。監督官として採用された後は、全国の労働基準監督署に配属される。(一般的に「労基署」と呼ばれているが、内部の人間は「監督署」と略す)。

 仕事内容をざっくり説明してしまうと「企業の労働環境・条件に違法はないか、良好に保たれているか」を「指導・是正」すること。そのため、監督官は「働くこと」に関する様々な法律や、安全衛生に関する幅広い知識が必要とされ、死亡事故の災害調査なども行う。実際に企業(「事業場」と呼ぶ)を訪問することが基本的な仕事なので外出が多い一方、司法事件を処理するための書類を作成したりと、デスクワークもしている。

 また、チーム制ではなく原則一人で仕事を処理し、監督する事業場の数にノルマも存在する。さらに、労働現場で問題が見つかった際には、その責任者に指導を行う。中には従業員の賃金を未払いのまま逃亡したり、労災を隠蔽したりと、一筋縄ではいかない経営者もいるのだが、どんな時でも毅然とした態度で応じなければならない。高いコミュニケーション能力や臨機応変さが必要な職務である。労災が起こった現場で、ダンプカーに轢かれた被災者の遺体を見ることもあったそうだ(第2章「職場の安全と健康を守る」に詳細が書かれているが、結構ショッキングな内容だった……)。

 読んでいて、率直に「大変だな」と感じた。誰でもできる仕事ではないと思う。
 だが、著者の原論さんはそういった「困難な状況」や「労災による人の死」に直面した時、一層「仕事へのやりがい」を感じるようだ。「働く人が安心して安全に働く職場環境をつくることを目指す」という信条を持ち、現在も同じ想いで、社会保険労務士として活躍している。

 現在、「働き方」は大きく変わろうとしている。行政も動き出した今、「過重労働対策」は企業にとって避けては通れないだろうし、いわゆる「ブラック企業」の情報は「申告常習事業場」としてマークされている。

 変化していく「働き方」を見つめ直すためにも、労基署の実情を知っておくことは、ムダではないのではないだろうか? 日経プレミアの『◯◯は見ている。』シリーズは私の大好きな企画なのだが、本書もやはり、読んで損のない一冊だった。

就業時間中に抜け出して通院したい…法的な問題はある?

花粉症が蔓延する3月末。目のかゆみやクシャミなど、悩んでいる人にとっては地獄の日々かもしれません。もう少々の辛抱ですから、病院から処方された薬で乗り切りたいところです。しかし、土日休みの社会人にとっては、通院も一苦労。多忙のため、病院の診療時間に仕事が終わらないという人も多いはず。そんなときは、就業時間にちょっと抜け出して病院に行ってしまいたいもの。

花粉症にかぎらず、風邪や身体の痛みなど体調不良ならば、就業時間中に通院することはやむを得ないことでしょう。しかし、なかには、会社が認めないところもあるようで、責任者が叱責してくることもあるとか。

一体、「就業時間中の通院」は違法なのでしょうか?

Q.就業時間中に通院することは違法ですか?

A.責任者が許可をすれば許される会社もあります。

就業規則がどのようになっているのかによりますが、定めがない場合、就業時間中は職務に専念する義務があるわけですから、私的な用事で勝手に職場を離れることは許されないという考えが一般的です。ただし、「通院」が私的な用事であるか否かは意見の分かれるところで、「絶対に不可」というところもあれば、責任者の許可をとることで、通院が許されている会社もあります。

また、緊急性の高い症状のみと就業規則に定められている場合もあるようです。

このように会社の業務内容やカルチャーによって対応が異なる事案で、法律というよりは、企業が社員をどのように考えているのかが問われる問題といえます。従業員としては体調不良の場合には病院に行かせて欲しいところですが、それをサボりの口実に使われることもあります。仮に許可を出す場合は、責任者が病院に行くことを提案してきた人間の状態を見抜く力が必要になりそうですね。

*記事監修弁護士:冨本和男(法律事務所あすか。企業法務、債務整理、刑事弁護を主に扱っている。親身かつ熱意にあふれた刑事弁護活動がモットー。)

*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)

花見シーズン到来…わがままな場所取りは罪になる?

0月21日東京都心でソメイヨシノが開花したとの発表が気象庁よりありました。春のお楽しみである、花見。気の置けない仲間や、職場の人々と綺麗な桜を見ながら酒を飲む。日本独特の文化です。そんな花見の計画を立てている人も多いのではないでしょうか。

■楽しい花見が…場所取りをめぐってトラブルも

楽しいイベントである一方、毎年トラブルが発生しています。昨年、横浜市の企業が公園の8割をブルーシートで覆ったうえ、「この時間以外はご自由にお使いください」などと書いた張り紙を掲示し、5日間に渡り場所取りをしたことで、猛批判を浴びました。

このほかにも企業や個人による過剰な「花見の場所取り」がたびたび問題になっています。本来なら人間の「良心の範囲内」で行われるべきことなのですが、残念ながら度を越した場所取りが横行しているようです。あまりにもおかしな場所取りを見かけた場合、法的に訴えたくなります。違法性を問えるような場所取り行為とはどのようなものなのでしょうか?

■違法になる場所取りは?

まず違法性を判断するうえで肝となってくるのが、私有地か公有地かということ。

当然ながら、私有地の場合は所有者の許可を得ない形で勝手に「花見をするから」といって場所をとるのは、所有者の権利を違法に侵害するもので、不法行為に基づく損害賠償(民法709条)の対象となるばかりでなく、建造物侵入罪(刑法130条)となる可能性もあります。

次に公有地についてですが、こちらは管理者の意向がどのようなものかが鍵になってきます。管理者が一切の場所取り行為や花見を禁止している場合、それを破る形になる場所取りは違法となる可能性が高く、不法行為責任が生じ得ます。

また、条例等で地域ごとに規制をしている場合には、刑事上の責任が生じる可能性もあります。一方、管理者が許可している場合は場所取り可能ということになりますが、社会常識を大きく逸脱していると思われる場合、違法性を問われることがあります。また、公園の場合は都市公園法で、

「都市公園に公園施設以外の工作物その他の物件又は施設を設けて都市公園を占用しようとするときは、公園管理者の許可を受けなければならない」(都市公園法6条)と定められており、違反した場合は六月以下の懲役又は三十万円以下の罰金が課される可能性があります。

いずれにしても社会的に見て常識外と感じられる行為は、法に触れる可能性があるということ。常識を持った場所取りをするよう心がけましょう。*記事監修弁護士: 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)
*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)

弁護士も使う、交渉の行き詰まりを解決してくれる「便利な言葉」

ビジネスで欠かせない交渉の場での悩みのひとつに、お互いが譲らず話が前に進まない「膠着状態」があります。これがために決裂してしまったという苦い経験をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回の無料メルマガ『弁護士谷原誠の【仕事の流儀】』では、著者で現役弁護士の谷原誠さんが、弁護士ならではの「膠着状態を脱するテクニック」を記しています。

膠着状態ではこの質問

こんにちは。

弁護士の谷原誠です。

交渉では、ある論点で双方とも譲らず、話が前に進まなくなる膠着状態に入ることがあります。膠着状態のまま、進展しない状態が長く続けば、その交渉は決裂ということになるでしょう。この膠着状態は、言い方を変えると、どちらかが妥協、譲歩しないと動かない状態です。

たとえば、商品の価格についての話し合いが、こちらが90万円、相手は100万円と主張して膠着しているとします。この場合、どちらが折れて、相手が主張する価格にするか、双方が譲歩して、たとえば95万円とするか、といったことが考えられますが、互いに譲れない条件であるとき、こういったことは容易ではないでしょう。

このような膠着状態を脱する方法の一つに、視点を変えるという方法があります。交渉の論点は、一つであるということはほとんどありません。

商品・サービスの売買の場合、料金だけではなく、納期や保証期間、品質等々、様々な要素があります。視点を変え、これらの条件について聞き、相手が本当に料金のニーズしか持っていないのか、試してみるのです。

そのケースで、便利な言葉として「仮に~」があります。いったん料金に関する話を横に置き、「ところで、仮に、〇月まで納期を伸ばすとすると、どうでしょう」「仮に支払いサイトを短くすればどうですか」と、ほかの条件について、仮の話として軽く話題を振ってみます。

「仮に」のよいところは、こちらにとってあくまで仮の話であり、そこでいくら突っ込んだ発言をしても、言質を取られるわけではないということです。自分の立場を表明せずに、相手のニーズを探ることができます。

ここで「まあ、納期が長ければ別にできないことはないんだけど」などと、ぽろりと隠れたニーズが表れることがあります。もし、こちらに、そのニーズを満たす用意がある場合、改めてその条件を含め打診してみると、話は再び動き出します。

相手が考える要望、ニーズの情報は、交渉において最も武器になるもの。相手のニーズがわかればこちらのカードも増えます。人は前に言ったことと矛盾する行動をとりにくいという「一貫性の法則」がありますので、「仮に」の話での発言は、心理的に人を拘束します。

交渉が膠着状態に入り、「これはなかなか動かなそうだな」と感じたら、自分の要求をひたすら通そうとするのではなく、相手に膠着している論点以外のことで本音を語ってもらう工夫をすることが大切です。

「仮に話法」は、その際のきっかけになってくれるかもしれません。

今回は、ここまでです。
image by: Shutterstock.com

『弁護士谷原誠の【仕事の流儀】』
著者/谷原誠(弁護士) 記事一覧/メルマガ
人生で成功するには、論理的思考を身につけること、他人を説得できるようになることが必要です。テレビ朝日「報道ステーション」などでもお馴染みの現役弁護士・谷原誠が、論理的な思考、説得法、仕事術などをお届け致します。

「諭吉は商標登録OK、龍馬は商標登録NG」これってなんで? 知れば知るほど面白い知的財産権のコト

 TPP(環太平洋パートナーシップ協定)でも議題にのぼる「知的財産権」。一昨年の「東京五輪エンブレム問題」も記憶に新しいなか、昨今も、ピコ太郎の『PPAP』を発端とした商標出願問題や、任天堂とマリカー社による“マリオカート”を巡る争いなど、関連した様々な話題が取り上げられている。

 かつては企業や団体など、組織間における問題としてのイメージもあった知的財産権。しかし、ネットで自由に情報を発信できる現代においては、私たちの身近にも寄り添う問題だ。そんな知的財産権の問題を、様々な具体的事例を織り交ぜて伝えてくれる一冊が『楽しく学べる「知財」入門』(稲穂健市/講談社現代新書)である。

◆よく目にする「著作権」「商標権」などは知的財産権の一部

 導入として、ここで少し知的財産権を学んでみたい。その定義は「人間のち的な創造活動によって生み出された経済的な価値のある情報を、財産として保護するための権利」だというが、さらにそこから「著作権」「産業財産権」とその他の権利へと枝分かれしている。

 比較的、頻繁に目にする「著作権」とは、文章や音楽などの「著作物」を創作した場合に発生する権利を差す。特徴としては手続きをふむことなく「国に登録しなくとも自動的に権利が発生する」ものであるが、根本的なねらい「著作物を創作した者の努力に報いること」による文化の発展だ。

 その保護期間は、現在の日本の法律では著作者の死後50年間。創作物自体を財産として守る著作権のほかに、意図しない形での流用などで著作者が精神的に傷付けられないようにする「著作者人格権」や、アーティストなど、著作者に代わり創作物を広める役割を持つ人に認められる「著作隣接権」もある。

 一方、産業財産権とは、著作権とは異なり「国に登録することで権利が発生する」知的財産権の一種だ。

 例えば、昨今のピコ太郎にまつわる『PPAP』の商標出願問題などで話題になった「商標権」はそのひとつだ。現行の「商標法」によれば、権利が存続されるのは特許庁に登録された日から10年だというが、更新が可能なことから実質的には「半永久的な権利」となっているのが特徴。商品やサービスに付けられる名称やシンボルマークなど、いわゆる「営業標識」の使用上で認められる権利である。

 この他、技術的なアイデアを守る「特許権」や、物品の形や構造についての工夫を保護する「実用新案権」。物品の形や模様、色彩などのいわゆるデザインを保護する「意匠権」も産業財産権にあてはまる。

◆商標登録のミステリー「諭吉はセーフで、龍馬はアウト?」

 知的財産権とひとくちにいっても、その範囲が多岐にわたることはお分かりいただけただろう。その前提からここでひとつ、昨今取り上げられる機会の多い商標権にまつわる事例を本書から紹介していく。

 先ほどもふれたが、商標とは商品やサービスに付けられる名称やシンボルマークなどを表す。特許庁に出願して、審査を受けて「商標権者」として認められるまでが初めのひと区切りとなるが、じつは、様々なルールもあらかじめ設けられている。

 例えば、本書にあるのは「『他人の肖像』や『他人の氏名』などを含む商標は、原則、登録NG」であるというルールだ。加えて、「著名な芸名・筆名・雅号・略称」も禁止であるが、個々の事例によるものの、「『生きている人』に対してのみ適用されるものであり、『死んでしまった人』については適用されない」というのがおおむねの見解だという。

 これについて、歴史上の人物が議論されたケースもある。その一人が、福沢諭吉だ。現在は、その意思を継ぐ慶応義塾大学が「福沢諭吉」として登録商標を持っているが、当初はいったん歴史上の人物の氏名を独占するのは「社会公共の利益に反する」といった理由から拒絶された。しかし、福沢の子孫から承諾書を入手、意見書と共にようやく受理されたという。

 一方で、故人が認められなかった事例もある。高知県は過去に、坂本龍馬のゆかりの地として独自のイラストとその名前を商標として出願した。しかし、龍馬について「観光スポットが高知県以外に多数あること」「グッズ等が全国的に販売されていること」を理由に特許庁は拒絶理由通知を提出。その後、高知県は意見書を提出したものの、結果的に「坂本龍馬」の登録商標は“幻”となってしまったという。

 これらの事例について「『龍馬は全国的に大人気だから高知県が独占するのはダメ』ということらしい」と締める本書は、「福沢諭吉は龍馬ほど人気がないから登録商標OKだったということだろうか?」と疑問を投げかけている。

 ただ、個々の事例についての是非はさておき、数十もの事例から知的財産権を解説する本書は、さながら“ミステリー”のようにも楽しめる。人のアイデアが源になっている以上、明らかな正解がないのも事実。法律的な教養はもちろん、読み終えたときにきっと“事実は小説よりも奇なり”を体感しているはずえである。

妊婦のお腹にパンチ!「子どもの過失で流産」したら責任は誰が?

source:http://www.shutterstock.com/

先日、発言小町で、“子どもが妊婦のお腹をパンチした”件での書き込みが、2012年公開にも関わらず4年以上たったこのタイミングで再度ランキング入りするなど、にわかに注目を集めました。これに限らず、子どもに悪気はないものの、不注意で大事故につながってしまうことも考えられます。悪気のない“子どもの過失”は法的にどこまで問われるのでしょうか? 弁護士の筆者がお答えします。「悪気のない子どもの過失」は親が責任を負わなければならないのが原則

法律上、未成年者のうち、自分の行為がいいことか悪いことか判別する能力に乏しい子どもについては法的責任を負わない(責任能力がない)こととされています(民法712条)。そして、責任能力のない子どもの過失(不注意)によって他人に損害を与えてしまったときは、両親などの監督義務者が損害を賠償しなければなりません(民法714条)。なぜこのようなルールになっているかというと、“責任能力がなければ自分の行為が違法かどうかがわからないため本人には法的責任を負わせないこととしますが、他方、それでは被害者保護に欠けてしまうので、代わりに監督する義務を負っている人に損害を賠償させるべき”だと考えられているからです。

まさに、子どもには悪気がないがゆえに、監督する両親が代わりに損害を補てんしなさいという発想です。裁判例では、12歳くらいの子どもであれば責任能力があるとされていますが、発達の程度などによって判断が分かれています。「親が責任を負わなくてもよい場合」はかなり例外的民法714条では、監督義務者が子どもを適切に監督していたことを立証できれば損害賠償責任を負わないとされています。しかしながら、いままで両親が損害賠償責任を負わないとされた裁判例はきわめて少なく、「きちんとしつけをしていました」程度の立証では責任を免れることができません。

たとえば、両親と一緒にいないときにキャッチボールをしていた子どもが他人にボールをぶつけてけがを負わせたケースで、両親に損害賠償責任を認めた裁判例があります。冒頭のケースで流産した場合「両親が損害賠償責任」を負うことに一方で、両親の日頃の監督はある程度一般的にならざるを得ないため、通常は人に危険が及ぶものとは考えられない行為によってたまたま損害が生じたときは、特別の事情がない限り監督責任を負わないとした最高裁判例が最近出ましたが、冒頭のように、子ども(責任能力のない子)が妊婦のお腹をパンチしたようなケースにおいて、妊婦が流産してしまったなどの損害が発生したときには、両親が損害賠償責任を負うことになるでしょう。

ほかにも、子どもの不注意により他人に損害を与えるケースとしては、遊んでいて友達にけがをさせたり、自転車に乗っていて人にぶつかったりということが考えられます。日頃から子どもをしつけていても、子どもは夢中になると注意を忘れてしまうことがありますから、もしものときのために個人賠償責任保険に入っておくこともいいかもしれません。

【著者略歴】
※ 木川 雅博・・・星野法律事務所(港区西新橋)パートナー弁護士。損害賠償・慰謝料請求、不動産の法律問題、子どもの事故、離婚・男女間のトラブル、墓地・お寺のトラブルその他、法人・個人を問わず様々な事件を扱っています。

知っておいて損はない「浮気と職業」の深い関係

浮気と職業は関係がある?
私は長年、“恋人・夫婦仲相談所”を主宰しておりますので、「浮気と職業には関係がありますか?」というご質問を、これから結婚をしようという未婚女性からよくいただきます。あるいは「若い女性の多い職場だから、夫が浮気をしないか、ちょっと心配」という妻の皆様、「最近、妻の仕事は帰りが遅いけどもしかして浮気?」と疑心暗鬼のだんな様方など、既婚者の方からも、仕事と浮気の関連性については、ご相談をいただきます。

もちろん、浮気をする・しないは最終的にはその人自身の気持ち次第です。しかし「浮気ができそうなシチュエーションになる」、「周囲に浮気をしている人が多い」など、「仕事の環境」も重要な要素といえます。そこで、その「仕事の環境」に大きな影響のある、「職業」と浮気について考えてみましょう。

浮気発生の4大要素
人が浮気に走る理由は様々ですが、大きく分けると以下の4つの要素が大きくかかわっていると考えられます。

・時間
・お金
・出会いの機会
・ストレス

これらの「浮気発生の4大要素」がそろっている職に就いている場合、パートナーが浮気に走ってしまう可能性が高いところといえます。では、この4要素に沿って浮気が多いといわれる職業を見てみましょう。

【時間】の自由度が高い職業
時間が自由、というのは浮気相手と一緒に過ごす機会が取りやすい、ということにつながります。平日の日中に空いている時間があったり休みが取りやすい場合は、「出張」と称して、不倫旅行などにも出かけやすい環境だといえます。該当する職業としてはいわゆる「士業」とよばれる、弁護士、税理士、会計士、社労士、建築士などが代表的です。個人事務所を持っている方などは、特に時間の自由度が高いでしょう。ミュージシャン、アーティスト、作家といったクリエーター系もこれに該当します。また、看護師さんでも、非常勤の方は比較的時間の自由度が高いといわれています。

【お金】の自由度が高い職業
自由になるお金がふんだんにある、というのは、遊びに使える資金がたくさんあるということ。「金の切れ目が縁の切れ目」ということばもありますように、お金持ちは放っておいても異性からちやほやされるものです。年収の高い職業といえば医師やベンチャー企業の社長、トレーダー、外資系金融マン、そして売れている芸能人。これらは「浮気の多い職業」ともいわれています(あくまでも噂の域ということで)。前述の弁護士なども、時間もお金も自由度が高い職業に分類することができます。

【出会いの機会】が多い職業
いくら年収が高くて時間に自由があっても、そもそも異性と出会うチャンスがなければ浮気はできません。多くの人と接する仕事は、魅力的な異性との出会いの可能性が高いとも言えます。営業職・販売職、あるいはホテルマン、美容師などのサービス業・接客業は、さまざまな異性との出会いが仕事の中であります。また、販売職の中でもアルバイトを多く使っている飲食店などの「店長」は、学生やフリーターなど時間の制約の少ない若い異性と出会うチャンスが多いポジションです。

そのほかには水商売も夜、お酒、パーソナルな接客というシチュエーションに、下心を持つお客様が多く、その手の誘惑は多いでしょう。また、意外に塾の講師・水泳など習い事のインストラクターというのも、多くの子供たちの母親と接する機会が多く、出会いの多い職業です。

【ストレス】が多い職業
浮気という非日常を求める行為に至る原因は、日常での不満や過剰なストレスからの逃避である場合が多いです。家庭の環境や日々の仕事に満足をしている人は敢えてリスクの高い浮気には手を出しません。ストレスの多い職場といえば介護系の仕事が、その代表格です。また、教師、公務員など「堅い仕事」も、閉鎖的・硬直的な環境で、働く人のストレスが高いですから、浮気への願望も多いかもしれません。教師は若い異性との出会いが多い職業でもありますね。優良会社だけれどたまたま上司が嫌な奴という場合もあります。それも充分ストレスになります。

浮気を生む種は身近なところに
もちろん、職業によって浮気をするかしないかが決まるのではなく、最後はその人自身の判断です。浮気によって現在の自分の持っている家庭や社会的地位などを失うリスクがあると理解しているのか、「ちょっとぐらい大丈夫、ばれやしない」とリスクを理解していないのか。あるいは理解していても、それらを失っても構わないと思っているかどうかが実際に浮気に踏み出すかどうかのポイントになることは言うまでもありません。

浮気しやすい職種と言われている男性の意見を聞くに「絶対にばれない」と根拠が無い自信がある人が多数というイメージを持ちました。また「バレた時のゴタゴタより、その時の魅惑的な雰囲気に飲まれた」という弱い気持ちも見えました。パートナーがそのような感情を抱くのかどうかは、日々の夫婦関係の積みかさねの結果を、正直に反映しているのです。浮気を生む小さな種は、実は日々の生活の中に存在しています。

パートナーが浮気をしているのでは? と心配な方は、まず、パートナーが「今の家庭を失いたくない」と思っているかどうか、そんな家庭が築けているかどうかを振り返ってみることです。パートナーが「家庭を失ってもいい、現在の生活を捨ててでも浮気相手に向く」と思っている場合、それはパートナー一人の問題ではありません。浮気の原因は両者にあると考えてください。浮気にも段階があります。火遊びか、離婚を前提の本気愛か、その段階の見極めを冷静に行いましょう。「浮気しやすい仕事だから転職して」など決して言ってはいけません。まずは足元を固めるように。

どもに会えない父親たち 認められない面会交流の裏側

 調停で離婚した夫婦の子どもの約9割は、母親が親権者になる。子どもと断絶させられた父親からの面会交流調停への申請数が増えている。

 4年前、シンジさん(48)が仕事から家に帰ると、真っ暗な部屋に一枚の置き手紙があった。

「あなたは私のことを対等に見てくれませんでしたね。子どもは連れていきます」

 生後7カ月の娘の姿はなく、その日から娘と会えない“断絶”の日々が始まった。

 14歳年下の妻とは、小笠原諸島の民宿で出会った。2人とも海が好きで、2009年に結婚。シンジさんは大手メーカーのエンジニア、妻はパティシエとして働き、夜は2人で外食するような仲のいい夫婦だった。12年6月に長女が生まれた。

「妻は人付き合いが苦手で、子ども好きというタイプではありませんでした。妊娠してからは情緒が不安定気味で里帰り出産をしましたが、それはよくあることです。東京に戻ってからは私も4カ月の育児休暇を取り、一緒に育児をしていました」

●完全なでっち上げ

 だが、しばらくたつと“事件”が勃発する。孫の様子を見に自宅に来た義母が「孫は連れて帰る!」と言ってシンジさんにつかみかかってきたという。妻も娘を強引に連れ出そうとしたので、義母を振り払って、娘を取り返した。結局、児童相談所が仲介に入ったが、児相に義母は「(シンジさんに)暴力を振るわれた」と主張していたという。

「断じて暴力など振るっていません。目の前で娘を連れ去られそうになったので、それを振りほどいただけです」

 その後、一度は妻と娘も自宅に戻り、家族再生の道を探った。だが、妻が生命保険の外交員に勧誘され、その場で契約したことを発端に、また夫婦に摩擦が生じる。シンジさんが「なぜすぐ決めるのか」と問うと、妻は「あなたは私のやりたいことを一切認めない」と口論になった。

「その時も、怒鳴ったりはしていません。実は、妻は過去にも帰省中に同級生からマルチ商法に誘われ、物品を購入したことがある。周囲に影響されやすいところは諭しました」

 こうしたことに不満を募らせたのか。約2カ月後、妻は娘を連れて家を出ていった。

 翌日、妻の弁護士から内容証明郵便が届いた。離婚事由は「精神的DV」と「経済的DV」。妻は事前に自治体の窓口でDV相談をし、弁護士も手配していた。出ていく日を決めて、一時的にシェルターに避難することで、DVを主張する「計画」が出来上がっていた、とシンジさんは主張する。

「完全なでっち上げです。住居費、生活費もほぼ私の負担で経済的DVもありえません」

 意に反して離婚調停が進むなか、シンジさんは面会交流を申し立てていたが、面会できたのは2年間で2回だけ。それも妻の地元で第三者機関の担当者を交えて60分だけという条件だった。最初は娘が1歳半のとき。殺風景な広い部屋でおもちゃで遊ぶ娘を遠くから見守るだけ。その「非日常」の雰囲気に娘は泣きだしてしまい、結局、30分で切り上げられた。9カ月後の面会も同様に泣いてしまい、30分で終了。父親だとわかってもらうこともできなかった。

「もしかしたら、妻は私が親のように諭すのが気に入らなかったのかもしれない。でも、それだけで7カ月の娘と引き離されて、2年間で会えたのはたった1時間というのはひどい」

●面会交流申請が急増

 厚生労働省の「全国母子世帯等調査」(11年度)によると、別居親と子どもの面会割合は母子世帯で27.7%、父子世帯で37.4%。別居親の6~7割は子どもと会えていない。一方で、面会交流調停への申請数は増え続けており、15年は1万2264件(司法統計)。00年と比べて5倍以上にもなっている。

 民法には面会交流の明確な規定はなかったが、12年施行の改正法で「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」と明記された。こうした流れを受け、16年末、超党派の国会議員が所属する「親子断絶防止議員連盟」は、別居親との面会を促す法案をまとめた。

 ノンフィクション作家の西牟田靖さんは、今年1月、離婚前後に子どもと引き離された父親の葛藤をつづった『わが子に会えない』を出版した。

「子どもに会えない父親=妻や子に暴力を振るう男性というレッテルを貼られがちです。しかし、私が話を聞いた父親たちは、子ども思いで暴力を振るうようにも見えず、経済的に安定している方が大半でした。離婚事由として、妻から身に覚えのないDVを訴えられるケースが多く、いきなり子どもと断絶させられたうえに、どうやって“無実”を証明すればいいかもわからない。混乱の中で司法の判断だけが進み、面会交流も認められにくくなる。そうなれば円満解決はもはや困難です」

 ナオトさん(37)は、1年半前に妻に子を連れて出ていかれた。当時、長男が2歳、長女は3カ月だった。子育ては自分でやりたいという妻の意思を尊重し、代わりに掃除、洗濯、皿洗い、ごみ捨てなど家事全般を請け負う、協力し合う夫婦だった。それなのに、手紙一枚を残し、妻と子どもは突然姿を消した。

●離婚の事由がない

「『もう夫婦関係は続けていけない』とだけ書かれていました。すぐに妻に理由を聞きましたが、とにかく『離婚したい』の一点張り。今でも明確な離婚の事由は示されていません」

 思い当たる節があるとすれば、義母との関係。過干渉なくらいに家に来る義母とは折り合いが悪く、ある日、ナオトさんの実親をあしざまに言ったことに怒り、怒鳴ったことがあった。

 だが、妻にそれが理由かと問うと「違う」という返答。理由もわからないまま、調停が申し立てられた。家庭裁判所からは円満調停が言い渡され、「面会は月に1回2時間」「監護権は妻とすること」などが決まった。

「離婚の事由もないのに、子を連れて出ていかれて月に1回しか会えなくなるなんて、司法の判断は明らかにおかしい」

 ナオトさんは、親子断絶防止法案の成立を願っているという。

 ただ、同法案には不備が多いとの指摘もある。弁護士の打越さく良さんが言う。

「第8条のように『別居前に子どもの監護権や面会交流の取り決めをせよ』というのは危険な場合もあり一律には言えません。子どもの心身の安全確保のために別居しなければならないときに、事前の話し合いなど無理です。行政の窓口に行って
『事前の取り決めがないなら援助できません』となったら結局避難ができず、子どもにも酷です」

 子連れ別居や離婚の背景には、深刻なDVや虐待がある場合も多く、「子の利益」に照らし当面は別居親との面会交流を認めるべきでないケースもある。

「どのような場合が違法な連れ去りで、監護の継続性や虐待の存否など個別の事情を含めて子の利益を判断できるのは、やはり家庭裁判所。実績のある家庭裁判所の環境改善を図ることが先決です。そもそも、『児童の権利条約』では、子どもの権利の実現のため、国に適切な措置をとる義務を課している。この法案は当事者間に力の非対称性がありうることを無視して、父母に責任を負わせていることが問題です」(打越さん)

 夫婦の別離は、夫、妻の立場それぞれに“真理”がある。ただ、同意なしに子どもを連れていかれた親の苦悩も深い。「救済策」が検討される時期に来ている。(文中カタカナ名は仮名)

不倫カップルをSNSで暴露したら罪になるってホント?

3月9日、プロ野球阪神タイガースの福留孝介選手が、春季キャンプ中に若い女性と不倫行為に及んでいたことが判明。チームを引っ張る主将の不貞に、批判が噴出しています。

このほかにも昨年からベッキー、乙武洋匡氏、六代目三遊亭円楽など、不倫スキャンダルが頻発。芸能人やスポーツ選手は高所得であるだけに、異性関係も派手になるようです。倫理的に許される行為ではないのですが。

一般社会でも職場で「明らかに不倫してるな」と感じることは多々あります。

当人同士は楽しいでしょうが、見せつけられているほうは腹立たしく、「ブログやSNSで大ぴっらにばらしてやりたい」と思ってしまいます。不貞行為をしているのですから、それくらいやられて当然ですよね。しかし、そのような行為は後で訴えられる可能性があるというのです。本当なのでしょうか?

Q.不倫をSNSで暴露したら後で訴えられる?

A.暴露したことによって家庭が壊れた場合、損害賠償を請求される恐れがあります

当然ながら暴露するまで不倫していることを配偶者は知らない状況ですから、それが公になれば離婚に至ることでしょう。

その場合、離婚原因は不倫をSNSで暴露したことにあるわけですから、離婚する夫婦それぞれから損害賠償を請求される可能性があります。

不倫を知ったほうがいいのか、知らぬが仏のほうが幸せであるのかは意見が分かれるところですが、結果として離婚となった場合、暴露した側、つまり原因を作った人間が責任を問われてしまいます。少々納得がいかない気もしますが、これが現実のようです。

倫理に反した行為を正す意味での行動なら、仮に損害賠償覚悟で暴露することもあるかと思います。しかし、その行為にリスクもあることは理解しておかなければなりませんね。

*記事監修弁護士:理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)

*取材・文:櫻井哲夫(フリーライター。期待に応えられるライターを目指し日々奮闘中)

【法律相談】粘着夫と離婚の財産分与、私の親が払った頭金800万円を返して!!

堅実女子のお悩みに、弁護士・柳原桑子先生が答える本連載。今回の相談者は、松田涼子さん(仮名・34歳・メーカー勤務)です。離婚にあたり財産分与で揉めている、その相談とは……?

「3年前に結婚した夫と離婚します。夫とは婚活パーティーで知り合って、お互い利害が一致して結婚しました。夫は収入が私より少なく、年収250万円の派遣社員。でも、私は31歳当時、どうしても結婚がしたかったんです。

夫は結婚してから、私に対してべったり甘えるように。友達と会う時までこっそり尾行してついて来るようになり、私の行動を完全に把握しようとするのがウザくて離婚することで合意しました。

そういう細かい夫だから、離婚にあたっての財産分与が揉めています。ふたりで買った家具や家電はリサイクルショップに売って完全に二等分。夫婦で毎月2万円ずつしていた貯金も、きっちり分けました。

でも今ちょっと揉めているのが、私たちが住んでいる千葉県内に結婚を機に購入した、3000万円の中古マンション。これを買うのに、私の父親が800万円の頭金を出してくれました。この家の価値は、購入時より下がって、マイナスになってしまっています。ローンはまだ1200万円残っていて、債務者は夫です。家を査定に出したら、2000万円という査定でした。800万円が残るのですが、夫はこれを分けたいと言っています。共働きで、私の方が生活費を多く出していたこともあり、私は全く納得がいきません。

頭金分をすべてもらい、父親にお金を返したいのですが、どうすればいいのでしょうか」

弁護士・柳原桑子先生のアンサーは次のページへ

あなたのお父様が頭金800万円を出してくれたとのことですが、返還約束などなくて贈与であった場合、あなたのお父様に対して、法的には返還する必要はないものということになります。

贈与であることを前提にして、離婚する夫との財産分与においては、父親の出してくれた800万円に相当するマンションの価値は、もっぱら妻の側からの支出によるものですから妻の特有財産ということができ、価値相当は妻が取得できるものです。

そして物件の価値が購入時と同程度であれば,そのまま800万円相当が特有財産だといえるところ、物件は3000万円から2000万円に下がったということなので、特有財産の価値も当初拠出額よりは下がっていることになるため、離婚時にはいくら相当になっているのかを算出する必要があります。まず、購入時のマンションの価値に対し、800万円が占める割合を算出します。その上で、算出された特有財産割合を、現在価値に対して計算することによって、現在のマンションに占める特有財産の価値がでてきます。

具体的にざっくり計算しますと、3000万円に対して800万円の割合は、30分の8です。現在価値の2000万円に対して30分の8をかけると、約530万円となりますね。

つまり2000万円の価値になった物件に対し、特有財産が占めるのは約530万円となるから、ローン残高を控除した現実的なプラス価格の800万円のうち、約530万円は妻の特有財産であることを主張し、残りの270万円を財産分与の対象とすることになります。

財産分与割合は、原則として2分の1です。妻が生活費を多く出したということですが、ローンの支払は夫がやっていたとか、また収入割合等、総合考慮して考えたとき、大きく負担の差がなければ2分の1が妥当でしょう。大きな差があるという場合、協議で分与割合を2分の1ではなくするよう要求することも考えられます。(裁判でどう判断されるかはまた別ですが、協議において納得を目指すという意味において……)

これらの清算が済んだ上で、妻から父に返還されたいのであれば、身内の問題として処理できると考えられます。

賢人のまとめ
不動産が値下がりしていたら、頭金の全額を現金で受け取ることが難しい場合も。

プロフィール
法律の賢人 柳原桑子 第二東京弁護士会所属 柳原法律事務所代表。弁護士。
東京都生まれ、明治大学法学部卒業。「思い切って相談してよかった」とトラブルに悩む人の多くから信頼を得ている。離婚問題、相続問題などを手がける。『スッキリ解決 後悔しない 離婚手続がよくわかる本』(池田書店)など著書多数。

柳原法律事務所http://www.yanagihara-law.com/

「メールの通信記録」は何位?不倫の証拠・立証能力ランキング!

配偶者が不倫していた場合、配偶者自身や不倫相手に精神的苦痛に対する慰謝料を請求することができます。ただし、もしこれを裁判で争う場合は、不貞行為を立証する必要があります。そんな時に物を言うのは、そう、証拠です。裁判においてどんな証拠が有効となるのか、エジソン法律事務所の大達一賢弁護士に伺いました。

■直接的あるいは客観的な証拠が強い!

「不貞行為を理由として離婚ないし慰謝料請求を行う場合、裁判では不貞行為の立証責任を請求する側が負います。立証するための証拠には色々なものがありますが、一般的に立証能力が高いとされるのは以下の順番ではないでしょうか」(大達弁護士)

1位・・・不貞を確認できるビデオ、写真、録音
2位・・・不貞行為を自白するような手紙やメモ、日記など
3位・・・調査会社の報告書
4位・・・不貞を推認できるビデオ、写真、録音
5位・・・ラブホテルの領収書

6位以下は、「ラブホテルへの滞在を示すGPS情報」、「不倫相手とのメールやSNSでの通信記録」、「夫婦間の会話においてなされた不倫を認める自白発言の録音」、「肉体関係を認める不倫相手の証言(録音や謝罪文)」、「友人や関係者の証言」、「不倫相手からもらった物」と続きます。

「証拠はいくつかに分類することができますが、証明しようとする事実を直接立証する証拠(直接証拠)は一般的に価値が高いものと言え、次に、間接的に立証する証拠(間接証拠)が続きます。上記のリストは基本的には直接証拠→間接証拠の順に並べています。

もっとも1位の“不貞を確認できるビデオ、写真、録音”とは、いわゆる性行為中の記録をなどを想定しているので、このようなものが出てくることはあまり通常考えにくいです。しかも、不貞相手のみが写っていたとしても、請求をしたい相手である配偶者が写っていなければ意味がありませんよね。

“不貞行為を自白するような手紙やメモ、日記など”を2位としましたが、“夫婦間の会話においてなされた不倫を認める自白発言の録音”や“肉体関係を不倫相手の認める証言(録音や謝罪文)”は下にしました。

これらは一見すると同じように見えますが、前者が不貞行為をした者が無意識的に作成されたものであるのに対し、後者は夫婦間の喧嘩など何らかの圧力が働いた上で作成されたものであるという点で、信用性が落ちるということができます。

そもそも、人の証言や供述というものは記憶が曖昧だったり変遷したりするものです。したがって、裁判上では、それらは一般的に信用力がそこまで高いとは考えられておらず、客観的な証拠の方が、信用力が高いとされています。

そのような観点から、間接証拠であっても“ラブホテルの領収書”や“ラブホテルへの滞在を示すGPS情報”を上位にランクさせました。

“不倫相手からもらったもの”は最下位にランクさせましたが、仮にこれが大人の玩具のようなものであれば、両者に不貞関係があったことを濃厚に疑わせる可能性はあります。

以上、一般論にしたがってあえてランク付けしましたが、最終的には証拠の中身次第、ということがいえると思います」(大達弁護士)

■強い証拠の集め方

裁判に備え立証能力が高い証拠を集めるためには、どのような手段をとればよいでしょうか?

「残念ながら証拠というものはそう都合よく落ちていません。そのため、不貞の疑いが濃厚で、行動パターンが見えているような場合には、調査会社や興信所を利用するのが、一番効率がいいと思われます。

ただ、興信所は料金が高いことが多く、多用は難しいかもしれません。そのため、夫婦間の話し合いを録音しておくというのも有効な手段にはなりえます。

話し合いの会話の中に、不貞行為の証拠となる発言が混ざっている可能性があるため、それをきっかけに色々な調査をしていくということも考えられるからです」(大達弁護士)

■弱い証拠で戦う方法

立証能力が低い証拠だけしか集められなかった場合でも、なんとか裁判を有利に進めるためにできることはありますか?

「塵も積もれば……ではありませんが、証明力が低くても証拠をたくさん積み重ねることによって、裁判官の心証を動かすことは不可能であはありません。そのため、できる限りたくさんの証拠を揃えることが必要になります。

また、不倫の前科がある場合には、前回の不倫の行動パターンを踏まえ、不倫が濃厚となった上で調査会社などに依頼するのがよいかもしれません。損害賠償における立証には、損害の立証のみならず、その金額の立証まで必要になります。

そのため、“不貞行為の立証はできそうだが、損害額の立証が難しい”といった場合に備え、先の不貞行為の際に『また不倫をした場合には〇〇円を支払う』といった念書をあらかじめ書かせておくことによって、損害額の立証を容易にすると言った方法も考えられます(民法420条1項参照)」(大達弁護士)

裁判はゲームではありませんが、裁判官を納得させ自分の望む結果を得るには、ある程度強いカードや戦術が必要になります。冷静に、なるべく多くの証拠を抑えることが大切だと言えます。

*取材協力弁護士: 大達 一賢(エジソン法律事務所。第一東京弁護士会所属。「強い、やさしさ。」、「守る≒攻める」、「戦略&リーガル」の3つの思いを胸に、依頼者のために全力を尽くします)

*取材・文:フリーライター 岡本まーこ(大学卒業後、様々なアルバイトを経てフリーライターに。裁判傍聴にハマり裁判所に通っていた経験がある。「法廷ライターまーこと裁判所へ行こう!」(エンターブレイン)、「法廷ライターまーこは見た!漫画裁判傍聴記」(かもがわ出版)。)

花見中にお酒を飲んでうとうと…道端で就寝したら違法ってホント?

昼はだいぶ暖かくなってきたものの、夜はまだまだ寒い3月末。こんな季節は、熱燗を飲んで温まり寝たいところですね。

3月は別れの季節だけに、学生から社会人になる、転勤で環境が変わる人が多くなる時期。また、これから花見も開催されるだけに、飲み会の機会も増えてくることでしょう。

なかには楽しさのあまり我を忘れ、気がづいたら道路で寝ていたなどという人もいると聞きます。そのようなことを「武勇伝」として得意気に語る人も居るのですが、実はこれ、道路交通法違反らしいのです。本当でしょうか?

Q.道路で寝てしまったら道路交通法違反になりますか?
*画像はイメージです:https://pixta.jp/
A.なります
道路交通法第七十六条に

何人も、次の各号に掲げる行為は、してはならない。

一 道路において、酒に酔つて交通の妨害となるような程度にふらつくこと。二 道路において、交通の妨害となるような方法で寝そべり、すわり、しやがみ、又は立ちどまつていること。三 交通のひんぱんな道路において、球戯をし、ローラー・スケートをし、又はこれらに類する行為をすること。四 石、ガラスびん、金属片その他道路上の人若しくは車両等を損傷するおそれのある物件を投げ、又は発射すること。五 前号に掲げるもののほか、道路において進行中の車両等から物件を投げること。六 道路において進行中の自動車、トロリーバス又は路面電車に飛び乗り、若しくはこれらから飛び降り、又はこれらに外からつかまること。七 前各号に掲げるもののほか、道路又は交通の状況により、公安委員会が、道路における交通の危険を生じさせ、又は著しく交通の妨害となるおそれがあると認めて定めた行為

と規定されています。道路で寝そべることは、二に該当するため道路交通法違反になります。罰則は5万円以下の罰金が定められています。

酒を飲んで道路で寝るのは武勇伝ではなく、犯罪であることを忘れないでください。*記事監修弁護士:河野晃 (水田法律事務所。兵庫県姫路市にて活動をしており、弁護士生活7年目を迎える。敷居が低く気軽に相談できる弁護士を目指している。)

認知症の母親が「お前に遺産はやらん」…こんなとき相続は出来ない?

相続はお金や土地といった大きな資産が動くので、トラブルになりやすいと言われています。元々は仲の良かった兄弟や親族も、相続のトラブルが原因で不仲になるケースは数えきれないほど存在しています。

さて、今回は、母親が遺産の全てを長男に相続させるという内容の遺言を作成して死亡したが、遺言作成時、母親が認知症にかかっていた場合について解説してみたいと思います。遺産を相続できなかった二男としては、当該遺言は無効だと主張して、法定相続分どおりに遺産を相続することはできるのでしょうか。

■遺言書作成の際には「遺言能力」が必要

法律上有効に遺言を書くためには、遺言者に「遺言能力」が備わっている必要があります(民法961条~963条)。遺言能力とは、自分の書いた遺言によってどのような効果が発生するのかを理解し、判断することができる能力のことです。

■認知症の程度や遺言の内容によって有効性は異なる

軽い認知症に過ぎない場合には、遺言の内容を理解し、自分が書いた遺言によってどのような効果が発生するのかを理解したり、判断したりすることが可能な場合もあるでしょう。そのため、認知症だからといってストレートに遺言能力が否定されるわけではなく、遺言能力が認められるか否かは、認知症の程度によってケースバイケースということになります。

さらに、一言に遺言といっても、今回のように「遺産を全て相続させる」という簡単なものから、相続人が複数いて財産も多数ある複雑なものまで千差万別です。簡単な内容であれば、認知症の程度が多少重くても、遺言の内容について理解することが可能な場合があるので、遺言能力が認められる場合があります。逆に、複雑な内容であれば、認知症の程度が軽くても、遺言の内容を全て理解することが困難な場合があるので、遺言能力が認められない場合もあります。

以上のとおり、認知症の方が書いた遺言の有効性は、認知症の程度と遺言内容(内容の複雑さ)によってケースバイケースで決まるということになります。

*著者:弁護士 理崎智英(高島総合法律事務所。離婚、男女問題、遺産相続、借金問題(破産、民事再生等)を多数取り扱っている。)

弁護士の年収はどれくらい? 仕事内容と気になる平均給与を解説

難関といわれる司法試験に合格し、司法修習を修了した限られた人しか弁護士にはなれません。弁護士は報酬を得て法律業務を行える国家資格で、職業としての重みは他に類のないものではないでしょうか。今回は、そんな弁護士の仕事内容や平均年収についてご紹介します。

■弁護士の仕事内容は?

弁護士は法律業務を独占できる強力な資格です。弁護士であれば、弁理士や税理士のみならず、司法書士・行政書士・社会保険労務士・海事代理士・海事補佐人といった他の資格をもって行う仕事を全て行うことができます(ただし、司法試験に合格し司法修習を修了した者のみ)。

弁護士は、クライアントからの相談を受け、法律の専門家の立場からアドバイス・コンサルティングを行い、クライアントの代理人として相談内容の解決に当たるのが仕事です。弁護士に持ち込まれる相談は、「離婚」「相続」「借金」などの民事事件から、検察に告訴されたので弁護を頼みたいという刑事事件まで多岐にわたります。

弁護士の仕事は「民事事件」「刑事事件」の二つに大きく分けられます。

●民事事件は、私人(法人を含む)が私人を訴えて裁判所でその紛争を解決しようとする事件です。
●刑事事件は、警察や検察といった国の機関が被疑者を捜査、その結果被疑者を裁判所で罪に問うかどうかを争う事件です。

いわば民事事件は「民間人同士の戦い」、刑事事件は「民間人と国の戦い」なわけです。

たいていの弁護士にはそれぞれ得意分野があり、刑事事件に強い弁護士、また借金問題に強い弁護士などがいらっしゃいます。筆者の知り合いの弁護士は離婚問題ばかりを手掛けています。このような得意分野があると「それならあの人だ!」とお声が掛かりやすいのだそうです。また司法試験に合格し、司法修習で同期となった人同士は結束が強く、自分の苦手な分野の相談があると、それが得意な同期の弁護士に相談したりするそうです。

■弁護士の年収はやっぱり高い?

「弁護士はお給料もいい」というイメージがありますが、実際はどうなのでしょうか? 厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」に、企業規模別に弁護士の給与を調べたデータがあります。これを見てみると下のようになっています。

●企業規模(10人以上)の会社に勤める弁護士

平均年齢:35.6歳
平均勤続年数:6.6年
平均年収:1,095万3,500円

●企業規模(10-99人)の会社に勤める弁護士

平均年齢:35.5歳
平均勤続年数:6.7年
平均年収:1,107万1,800円

●企業規模(1,000人以上)の会社に勤める弁護士

平均年齢:37.9歳
平均勤続年数:3.8年
平均年収:674万1,400円

⇒データ出典:厚生労働省「平成27年賃金構造基本統計調査」の「職種別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額」
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001058843&cycode=0
※上記の平均年収は、上の厚生労働省のデータを基に「きまって支給する現金給与額」を12倍し、「年間賞与その他特別給与額」を足して計算しています。

興味深いのは、「10人以上」「10-99人」という比較的小規模の企業では、どちらも平均年収が1,000万円を超えているのに対して、「1,000人以上」という大企業になると平均年収が400万円以上も減っていることです。規模があまりに大きくなると、組織の維持にお金が掛かってしまいそのぶん分配すべき利益が減ってしまうのかもしれませんね。

しかし、どの規模の企業であっても弁護士の平均年収が「日本のサラリーマンの平均年収である400万円」を大きく上回っていることは確かです。「弁護士は高給取り」というイメ-ジに間違いはないようですね。

会社にバレず「ネイリストの副業をしたい」、税金から発覚するのはどんな場合か?

働き方改革の一つとして、副業解禁が議論されている。ただ、副業が禁止されている企業も多いのではないだろうか。税理士ドットコムの税務相談コーナーには、正社員として働いている女性から、「ネイリストのバイト」として、副業を考えているが、「本業の会社にバレるとまずいです」と、バレずに副業する方法についての質問が寄せられた。

お金、キャリアップ、自己実現のためーー。本格的に「稼ぎたい」だけでなく、「趣味でお小遣いくらいを稼げたら」程度の動機で副業をする人もいるだろう。副業の目的は様々あるはずだが、会社にバレずにできないのだろうか。佐藤全弘税理士に聞いた。

●会社にバレるのは「住民税」から

副業を考える人にとって、最大の心配は「会社バレ」だろう。 「会社に副業がバレる場合のほとんどが、給与から差し引かれる住民税(特別徴収といいます)の金額がきっかけとなるのではないでしょうか。会社員の場合には、会社が本人に代わって住民税を市区町村に納めています。その金額は所得をもとに計算されるため、市区町村から届く『特別徴収税額通知書』によって、他の収入があれば、副業の可能性が考えられるからです」

会社に知られないようにすることは不可能なのか。

「一概には言えませんが、給与所得ではなく、雑所得、事業所得として課税される方法を選択することができれば、バレづらくなるかもしれません。給与所得として課税されるのは、アルバイトやパートなどです。反対に、業務委託や個人事業主は、雑所得、事業所得として課税されます。

雑所得、事業所得の場合には、確定申告書にある『住民税』の欄にある『住民税について給与・公的年金等に係る所得以外の所得に係る住民税の徴収方法の選択』を、『給与から差引き』ではなく、『自分で納付』(普通徴収といいます)を選択してください。これを選択することによって、副業の住民税について会社に知られずにすみます。しかし、副業が給与の場合は、この選択は意味がありません。また、事業所得が赤字の場合には、『損益通算』により所得が減少し、住民税額が減ります。そのため、会社にバレるリスクが高くなり、注意が必要です」

●「20万円以下でも住民税の申告は必要」

なお、一般に「副業しても、年に20万円以内の稼ぎなら確定申告をしなくても大丈夫だし、バレない」などとも聞く。これは間違った認識なのだろうか。 「間違っているとは言えませんが、誤解もあります。確かに、所得税については一定の要件を満たすと、所得が20万円以下であれば確定申告の必要はありません。しかし、住民税については申告が必要です。

また、会社は市区町村に、給与を誰にどれだけ支払いをしたかという『給与支払報告書』を提出するため、市区町村の担当者は、本人からの申告がなくても収入を把握することができます。つまり、副業先から市区町村に『給与支払報告書』が提出されると、確定申告をしなかったとしても副業が発覚するリスクがあるのです。

さらに現在は、住民税の『特別徴収』(自分自身で納付する『普通徴収』と違って、会社が各従業員の居住地に納付する方法)が推進されていることから、特段の理由がない限り、特別徴収が徹底されます。今後は副業が給与所得に該当する場合には、会社にバレるリスクが高くなるのではないでしょうか 『バレずにやる』方法を考えるよりも、副業を認めてもらえるように掛け合う方が、現実的なのではないでしょうか」

【取材協力税理士】佐藤 全弘(さとう・まさひろ)
税理士お客様の立場にたって、わかりやすい税金を目指すとともに付加価値の高いサービスを提供することをモットーとしてお客様のニーズに応えられるパートナーを目指します!

事務所名 : 佐藤全弘税理士事務所
事務所URL:http://satouzeirishi.com/

他人のクレジットカード情報でホテルに宿泊…どんな罰則が?

他人名義のクレジットカード情報を用いて高級ホテルの宿泊代や海外への航空券代を不正に決済していたとして、自称プロゴルファーの男性を含む3人が、電子計算機使用詐欺の疑いで逮捕されたという報道があったようです。他人のクレジットカードで決済し、宿泊代金などを免れることは直感的に犯罪だと思うでしょうが、今回は、この行為がなぜ電子計算機使用詐欺となるのかについて簡単に解説したいと思います。

■会員名義を偽ったという点が詐欺となる

電子計算機使用詐欺罪が成立するには、「虚偽の情報」を入力する必要があります。もっとも、他人のクレジットカードをweb決済の方法で不正利用する場合、入力された会員番号や名義人の情報自体は正確ですので、そのことのみを捉えると「虚偽の情報」に当たらないことになってしまいます。この点については、「虚偽の情報」とは、当該システムにおいて予定されている事務処理の目的に照らし、その内容が真実に反することと解釈されています。

今回の場合は、カード記載の名義人(A)が申し込んだのではないにもかかわらず、名義人以外の者(B)が名義人を偽って、名義人が申し込んで購入したという真実に反する情報を入力したことをもって、「虚偽の情報」を入力したという構成になります。冒頭で述べたケースは、報道によると被害金額が4,000万円程度に上りますので、3人が起訴された場合、ほぼ確実に実刑となるでしょう。

なお、他人名義のクレジットカード使用につき、判例は、名義人の使用許諾の有無にかかわらず、名義の偽り自体を詐欺としていますので、名義人の家族や親せきであっても、カード名義人に成りすまして従業員にカードを呈示してホテルに宿泊すると、詐欺罪が成立することになってしまいます。この結論に対しては、学説は概ね批判的です。

■宿泊時に偽名を使ったらどうなるか

関連して、クレジットカードの不正使用ではなく、宿泊時に偽名を使ったり、うその住所を記載したりしたときはどうなるのか疑問に思う方もいるかもしれません。これについては、偽名や虚偽の住所を用いて宿泊しただけでは詐欺罪の要件を欠きます(反社条項違反等の場合を除く)ので、詐欺罪は成立しません。

しかし、旅館業法上、宿泊者は氏名、住所、職業その他の事項を記載しなければならないとされておりますので、偽名やうその住所を記載したときは、拘留または科料の制裁を受ける可能性があります(旅館業法6条)。 他人のクレジットカードを不正利用するのは論外ですが、偽名の宿泊だけでも処罰対象となり得ます。実際には旅館業法違反によって処罰される可能性は低いといえますが、違法ですので、偽名での宿泊は行わないようにしてくださいね。

*著者:弁護士 木川雅博 (星野法律事務所。通信会社法務・安全衛生部門勤務を経て、星野法律事務所に所属。破産・再生・債務整理を得意とする。趣味は料理、ランニング)

1円玉を1,000枚は…? 何枚までなら同じ硬貨を使っても大丈夫?

皆さんは一度の支払いで同じ硬貨を何枚まで使用できるかをご存知でしょうか?例えば、1,000円の会計時に、100円玉10枚なら特に問題はなさそうですが、1円玉1,000枚での支払いは問題がありそうに感じるのが通常かと思います。明確な線引きが分からないという方もいらっしゃるかと思いますが、実は具体的に法律で定められているので、解説してみたいと思います。

■一度に同じ硬貨は20枚まで
硬貨の場合は「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律第7条」によって、同じ硬貨は20枚まで強制通用力を有していると定められています。つまり、同じ硬貨を20枚以上(正確には21枚以上)使って支払うことは出来ません(強制通用力がないということになります)が、20枚までなら強制通用力があるので、代金の支払いとして有効になります。20枚を超えても、受け取る側が納得していれば、問題はありません。

■紙幣の場合は制限はなし
一方、紙幣(正確には日本銀行券)だと上記のような制限はありません。「日本銀行法第46条第2項」によって、枚数の制限がなく、強制通用力をもっています。100万円の支払いの際に1,000円札1,000枚で支払っても強制通用力がありますので、受取を拒否できません。紙幣と硬貨にこのような差を設けているのは、紙幣が主たる貨幣であり、硬貨はそれを補助する貨幣だからだと言われています。強制通用力とは、このように債務の支払いとして有効になるということです。

債務の支払いとして有効だということは、どういうことでしょうか。代表的な債務は代金ですので、代金で説明します。3,000円の代金を100円硬貨30枚で支払っても、受取を拒否されたら、強制通用力がないので債務の支払いが有効になりません。債務の支払いが有効にならないと、遅延損害金が発生したりして債務者が不利益を被ります。

1,000円札3枚で支払えば、強制通用力があり債務の支払いが有効になりますから、受取を拒否されても、債務者はなんら不利益を被りません。難しい言葉ですが、本旨弁済となる、などと表現されます。今は、キャッシュレスの時代ですので、あまり問題になることはないですが、豆知識として覚えておくと良いでしょう。

*著者:弁護士 星正秀(星法律事務所。離婚、相続などの家事事件や不動産、貸金などの一般的な民事事件を中心に、刑事事件や会社の顧問などもこなす。)

健康診断を受けない社員に罰金…これって違法じゃないの?

企業では社員の健康を守るため、1年に1度健康診断を受けるよう指導します。

これは労働安全衛生法66条の1に

事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断(第六十六条の十第一項に規定する検査を除く。以下この条及び次条において同じ。)を行わなければならない。という規定があるためで、経営者が労働者に健康診断を受けさせることは「義務」となっています。

しかし、受ける側としてはバリウムを飲むことや採血など苦痛なことも多く、敬遠したくなるもの。何年も受けていないという人も、いるかもしれません。そんな「健康診断を受けない社員」について、ある企業が「罰則規定」を設けたそうです。健康管理を促すためとされていますが、少々納得がいかないのも事実。このような健康診断の強制に違法性はないのでしょうか?

ピープルズ法律事務所の森川文人弁護士に見解をお伺いしました。

Q.健康診断を受けない社員に罰則……これは違法ではありませんか?

A.合法です

「労働安全衛生法66条5項には
*
労働者は、前各項の規定により事業者が行なう健康診断を受けなければならない。ただし、事業者の指定した医師又は歯科医師が行なう健康診断を受けることを希望しない場合において、他の医師又は歯科医師の行なうこれらの規定による健康診断に相当する健康診断を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない。

と規定されており、労働者の義務と規定されています。判例でも、懲戒処分(減給等)が認められていますね。(名古屋高判平9.7.25等)」(森川弁護士)バリウムや胃カメラ、採血など嫌なことばかりの健康診断ですが、そこから重大な病気を早期に発見できることもあります。罰則規定を設けて受診を促すやり方については賛否両論ありますが、「受けることは社員の義務」であることは認識しておかねばなりませんね。

*取材協力弁護士:森川文人(ピープルズ法律事務所。弁護士歴25年。いわゆる街弁として幅広く業務を経験。離婚、遺産相続をはじめ、不動産、 慰謝料・損害賠償請求、近隣トラブル、借地借家、賃金、インターネット問題、知的財産権などを扱う。)

本当?マンションの個人賠償責任保険は外での事故にも適用される

マンション居住者の多くが加入している「個人賠償責任保険」。専有部分での漏水事故などに使われるこの保険ですが、実は組合員が起こしたマンション外の事故にも適用されるという事実、ご存知でしょうか。無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』の著者・廣田信子さんが、保険の専門家に直接聞いたという詳しい情報を紹介しています。

マンションの個人賠償責任保険が正しく広報されないのは…

こんにちは! 廣田信子です。先日の記事「マンションの個人賠償責任保険はどこまで使えるの…」に関しては、たくさんのコメントや情報を頂きました。一般のマンション居住者の方からは、マンション外の事故にも使えるなんて、「知らなかった」「一度も聞いたことがない」「今度総会で聞いてみたい」という反応ばかりです。やはり、ほとんどが知らないのです。保険の専門家の方からは、くわしい情報を頂きました。約款には、下記のように書かれています(東京海上日動社の新マンション総合保険の約款より)。

第2条(この特約の補償内容)

(1)当会社は、日本国内において下表のいずれかの事故に起因して、他人の生命または身体を害することにより、第3条(被保険者)に規定する被保険者が法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害に対して、普通保険約款およびこの特約にしたがい、保険金を支払います。居住用戸室の所有、使用または管理に起因する偶然な事故第3条(被保険者)に規定する被保険者のうち、同条(1)の表の①から④までの被保険者の日常生活(*1)に起因する偶然な事故

(2)この特約において居住用戸室とは、建物に所在する居住用の戸室をいい、住宅の一部または全部を事務所に使用している場合を含みます。また、敷地内の動産および不動産を含みます。(3)当会社は、(1)の表のいずれかの事故に起因して、他人の財物を損壊することにより第3条(被保険者)に規定する被保険者が法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害に対して、普通保険約款およびこの特約にしたがい、保険金を支払います。

(*1)居住用戸室以外の不動産の所有、使用または管理を除きます。

(以下略)

個人賠償責任補償特約2条(1)において、1号のマンションの居住用戸室の所有、使用、管理に起因する賠責に加えて、2号で日常生活の賠責も対象になっています。すなわち、居住マンション以外に居住者が所有する建物の所有・使用・管理にかかわるものを除けば、対象になるということです…と。

同時に、居住者の子供が道路を自転車で走行中に人にぶつかって怪我をさせたというような事故に管理組合が保険請求をするのが馴染まないのでは…という私の疑問には、その通り…管理組合の業務ではないのかも…と(だったらどうするの~?と思ってしまいますが…)。

ちなみに、対象は区分所有者ではなく居住者です。ですから、区分所有者が払っている管理費から保険料を支出していても、賃借人の子供の事故には適用になっても、区分所有者の子供の事故には適用されないのです。

何だか、マンションの個人賠償責任保険は、何重にも不思議な保険です。

管理組合が管理すべき共用部分じゃなく、個人が責任を持つべき専有部分が対象になるマンション内に限らず、マンション外で起こった事故も対象となるあくまで居住者が対象で、外部組合員やその家族のマンション外での事故は対象外

そして、何より不思議なのは、そのことが居住者に周知されていないということです。

お金を払っている以上、対象となる事故にはもれなく請求するというのが、保険を掛けているものの当然の権利ですが、保険を請求する者、お金を負担する者、利益を受ける者が微妙にずれているので、あまり積極的に説明されてこなかったのでしょうか。

ここで、当然、もっと保険をシンプルにできないかと考えたくなります。保障は、マンション内の事故だけでいいから、保険料を下げて…と。これに対して、保険の専門家は、「特約第2条(2)は、不要な補償なので、この補償を外してその分、保険料を安くして欲しい」と申し出られても、マンション総合保険自体が収益が出ない商品ですので、保険会社は保険料値引きには応じないのではないかと思います…と。

個人賠償責任保険については、管理組合で掛けなくてもいい、個人の自己責任で掛けてもらうべきという意見もありますが、管理組合運営に関わっていると、漏水事故のときに対応の大変さを思い、やはり個人の裁量に任せるのは危険だと、大多数の人がいいます。

私の知人は、マンションの形状からして、火災保険は必要ないという信念を持って加入せず、その代わりに、万が一の事故に備えて修繕積立金を積んでいたのですが、経年とともに、個人賠償責任保険だけはどうしても必要だが、これは、火災保険の特約でなければ入れないというので、最低限の火災保険にも加入したよ…と。

そのくらい円滑な管理組合運営には欠かせない保険なのですが…保障をマンション内に限定して、その分保険料を減額することができないのであれば、せっかくの保険をきちんと広報してフルで活用しないのは、もったいないとも言えます。

著者/廣田信子
マンションのことなら誰よりもよく知る廣田信子がマンション住まいの方、これからマンションに住みたいと思っている方、マンションに関わるお仕事をされている方など、マンションに関わるすべての人へ、マンションを取り巻く様々なストーリーをお届けします。

最新記事